国民のシンパシーを失っているオランダ “ボーナス”ロッベンは前半活躍も……

中田徹

ロッベンは人気刑事ドラマ『タートオルト』と同じ!?

“ボーナス”と言われるロッベン(11)。ルクセンブルク戦でも前半は3つのビッグチャンスに全て絡んだが…… 【写真:ロイター/アフロ】

 ドイツの人気刑事ドラマ『タートオルト』が11月13日、1000回目の放送を迎え、ドイツ国内はちょっとした盛り上がりを見せたという。その模様を報道したオランダのNOS局は、ドイツ人男性の「このドラマは、まるでサッカーのアリエン・ロッベンのよう。動きはいつも同じなんだ。誰もがそれを分かっているんだけど、最後はゴールを決めてしまう。日によっては、本当に素晴らしいゴールなんだ」というコメントを引き出している。『タートオルト』もロッベンも、彼らには決まったパターンがあるけれど、人々を飽きさせることなく素晴らしい結末を見せてくれるのだ。

 一方でロッベンは、オランダで“ガラスの男”と呼ばれている。爆発的なプレーを繰り返し見せるロッベンの足は脆く、負傷しやすい。その儚(はかな)さも含めてロッベンなのだろう。ここ1カ月、オランダでは「ロッベンが代表に加わることができれば、それはオランイェ(オランダ代表の愛称)にとって“ボーナス”だ」という表現が幾度も使われている。

 コンディションが不安定で、試合直前まで起用できるか分からないから、ダニー・ブリント監督としてはロッベンがいることを前提にチームを作ることができない。それでも、ロッベンが万全のコンディションを保ちさえすれば、間違いなくワールドクラスの価値がある。だから、オランダ代表にとってロッベンが加わることは“ボーナス”と言われているのだ。

ロッベンとスナイデルのベテラン2人は前半で退く

デ・ローン(左)はルクセンブルク戦が代表デビューマッチとなった 【Getty Images】

 11月9日(現地時間)の親善試合、対ベルギー(アムステルダム、1−1)の参加を回避したロッベンは13日、キャプテンマークを巻いてワールドカップ欧州予選、ルクセンブルクとのアウェーゲームで先発した。

 ロッベンはオランダが前半迎えた3つのビッグチャンスに全て絡んでいた。やはりオランダからすればロッベンは“ボーナス”だったし、ルクセンブルクからするとロッベンは“分かっていても止められない”存在だった。

 10分、MFバート・ラムセラールとのワンツーからロッベンがペナルティーエリア内に侵入し、鋭い左足シュートを放つが、これは相手GKの守備範囲内に飛んだ。31分にはロッベンの絶妙のスルーパスで、MFデイビー・クラーセンがGKと1対1になるも決め切れず。そして36分、クラーセンのラストパスを受けて相手守備ラインの裏を抜け出したロッベンが冷静にシュートをゴール左隅に流し込んだ。オランダ、ロッベンのゴールで先制!

 しかし、前半終了直前、ルクセンブルクのカウンターを防ぐため、自陣に向かってスプリントし、相手と接触したロッベンは太ももを痛めたようだった。“ガラスの男”は、そのまま更衣室に残って、後半のピッチに戻ることはなかった(ロッベンの負傷は幸い大したことがなく、週末のドルトムント戦に出場可能となった)。この時点で試合は1−1だった。

 もう1人のベテラン、ウェスレイ・スナイデルはこの日、4−3−3の左ウイングに入ったが頻繁にポジションから離れ、まるでMFのように動き回っていた。そのためブリント監督はスナイデルに「もっとサイドに張れ!」と指示を送っていた。プレーそのものも、重馬場のピッチに苦労しているように見えた。スナイデルもまた、前半いっぱいで交代させられてしまった。相手との激しいデュエル(球際の競り合い)に足を痛めた可能性もあったが、試合後のブリント監督は戦術的な交代であったことを明らかにしている。

 ロッベン(キャップ数89回)、スナイデル(126回)というワールドクラスの選手が抜けた後半、オランダはGKマールテン・ステーケレンブルフ(58回) DFジョシュア・ブルネット(2回)、ジェフリー・ブルマ(25回)、フィルジル・ファン・ダイク(12回)、デイリー・ブリント(42回) MFジョルジニオ・ワイナルドゥム(36回)、クラーセン(11回)、ラムセラール(2回) FWスティーブン・ベルフハウス(6回)、ドスト(12回)、メンフィス・デパイ(27回)というメンバー構成になった。

 試合終了直前、ラムセラールに代わって登場したマルテン・デ・ローンはルクセンブルク戦が代表デビューマッチとなった。後半、フィールドプレーヤーは誰1人としてキャップ数50回を超えなかったのだ。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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