阪神・福原忍に引退を決断させた1球 タテジマ一筋18年間を振り返る

週刊ベースボールONLINE

阪神一筋、18年間の現役生活に別れを告げた福原 【写真=BBM】

 阪神一筋18年間、日本一を目指し右腕を振ってきた。多くの虎ファンの声に後押しをされながら、信条とする真っすぐ勝負を貫いた。その真っすぐが投げられなくなった今、福原忍は、タテジマのユニホームを脱ぐ決意をした。

ファウルや空振りが取れない真っすぐ

 こんなはずではない、何度も自問自答した。広陵高の先輩でもある金本知憲新監督を支え、胴上げする。投手主将にも任命されるなど、強い気持ちで臨んだ2016年シーズンだった。しかし、マウンドに上がると生命線だった真っすぐがことごとく打たれるようになり……。

 引退してから1カ月が経過しました。現在は、これまで家族にしてやれなかったことを優先的にやっている感じです。旅行の計画を立てたり、息子の野球の練習に付き合い、ノックを打ったりしていますね(笑)。でも、毎年オフに入った直後はいつもこのような感じなので、まだ引退したんだな、という感覚は実はあまりないんです。

 今季4月に降格した後、ファームでも結果が残せなくなって、いろいろと考えるようになりました。まずは8月の終わりくらいに「引退」のことを考えるようになり、9月初めに決断しました。でも、この現状を跳ね返してやろうという思いは常にありました。それでも結果が出なくて……1アウトも取れずに降板する試合が何試合も続きました。そこから「引退」の文字が浮かんできたんです。

 さらに、もう一つの理由として、調子のいい時期がすごく短くなった。調子が上がってきたなあ、と思ったら、すぐに打たれ出すという感じ。そこから「何で空振りが取れへんのやろ?」となっていきましたね。空振りを取りにいった真っすぐをホームランされたり、ファウルを狙った真っすぐをヒットにされたり……守備がエラーした走者を踏ん張れずに簡単にホームにかえしてしまったり……。このときは、本当に考え込んでしまいましたね。

 その中で、決定的だったのは8月27日の鳴尾浜での広島戦の投球でした。このとき、エラーやヒットで走者が埋まった後、投げた真っすぐを、ものの見事にホームランされたんです(9回、岩本貴裕に3ランを被弾)。「オレの真っすぐはアカンのかなあ」と思いました。それまでのその真っすぐは空振り、もしくはファウルでカウントを整えられるというボールだったので……。それが、本当に見事に打たれた。そこまでも、ずっと僕の中でモヤモヤしたものがあって、このホームランにつながった。もう戦力になれないんだな、という感覚がもどかしくて……ここが辞め時なんだろうなあって。

ずっと考えてきた野村監督の教え

 入団当時から真っすぐにはこだわってきました。スピードには自信があったというか、速いほうでした。でもコントロールが悪かった。そんなときブルペンで当時の野村克也監督に「原点といわれる外角低めにしっかり投げられるように練習しなさい」と言われました。それを考えながら18年間ずっと練習してきましたね。

 練習方法はいろいろ模索しましたが、まずはしっかりキャッチボールができないとダメですから、そこから始めました。キャッチボールとピッチングは同じなんですよ。キャッチボールのときからキレイな回転のボールを投げられないと、ブルペンではいいボールは投げられない。ブルペンやマウンドではキャッチボールをしていた以上に力みがでて、ブレが生じる。だからこそ、キレイなボールを投げるためにはどういう体の使い方をすればいいのかを練習してきて「つかんだな」と思ったのは4、5年くらい前のことでした。

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