「やられたらやり返す」内山高志の本質 リベンジとベルトを懸けたコラレス戦へ

船橋真二郎

「初めての世界戦が決まったときのような気持ち」

ジェスレル・コラレスとの再戦が決まった内山高志。「借りを返す」とリベンジに闘志を燃やす 【スポーツナビ】

 やられたら、やり返す――。強い気持ちがほとばしった。

「自分で負けておいて贅沢なんですけども、やっぱり負けた相手とやりたい、というのが一番です」

 胸の内を吐露した現役続行会見から1週間余りが過ぎた21日。大みそかに再戦内定の既報どおり、ボクシングの前WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志(ワタナベ)の対戦相手が正式に現王者のジェスレル・コラレス(パナマ)に決まった。

「もう6年前になるんですけど、初めて世界戦が決まったときのように気持ちが上がっています」と希望が叶えられた心境を表現した内山。3度のダウンを奪われ、2ラウンドKO負けを喫したコラレスに対し「あれだけ一方的にやられた相手なので、次はどうやって借りを返してやろうか、という楽しみのほうが強い。とにかくリベンジしたい気持ちだけです」と笑顔を浮かべた。

敗戦後は体力を確認しながら体を動かした

 まさかの王座陥落劇から8カ月。舞台も同じ東京・大田区総合体育館。再起のリングには国内最長在位期間となる6年3カ月にわたり、11度守り続けたベルトの奪還も懸かるが、何よりリベンジの思いを繰り返し口にした。

 敗れた直後は「落ち込んで、自分はもうダメかなとか、いろいろ考えた」と振り返る。だが、1週間も経つと「身近な人間には『コラレスともう1回やれねえかな』みたいな話はしていた」と明かした。

「何もしないで終わって、悔いが残ったのが大きかった。ああやって一方的に負けたまま辞めるのは悔しかった」

 抑えようもなく湧き上がってくる思いは、内山のボクサーとしての根っこであり、プライドであっただろう。

 それでも、しばらくは自分自身と向き合い続けた。コラレス戦から3日後には軽めのランニングを再開していたが、11月10日で37歳。最低限、体を動かしながら、という判断だった。
「(世界王者として)気持ちが張っていたことで、これまで頑張ってこれたのもあった。負けたことで気持ちが落ちて、気持ちが落ちることで体力も落ちるんじゃないか、という心配があったので、それを確かめながら」

周囲からの期待も考慮し、最後は自身で決断

 1カ月が過ぎた6月初旬には、後輩でWBA世界ライトフライ級王者の田口良一とともに後援者に招待されて、沖縄の宮古島に出かけた。進退については話さなかったというが、その慰労が目的だった旅行の最中も「内山さんは朝、走っていた」と田口に聞いたことがある。帰京後、軽めのジムワークを再開。「6月下旬くらいには通常の練習に戻っていた」という内山は、7月から8月にかけてトレーニングの強度を上げていくうちに「まだいけるな、という感覚が強くなった」と決断に至った。

「周囲の方は気を遣ってくれて、現役を続けても、辞めても、どっちになっても応援するからと言ってくれていた」という一方で、続けてほしいという言外の思いをひしひし感じていた。「まだまだ自分の試合を見たい人がいるということで、それはうれしかった」と述懐するが、現役続行については誰に相談することもなく、あくまで自分で決めたと強調した。

 自身の気持ちと体のバランスを確認し、自ら意志を固めるまでの過程を聞きながら、内山が以前、語っていた、アマチュア最後の大会となった2004年10月の埼玉国体のことを思い出した。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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