過酷なトーナメントに臨むFC今治 全社の向こう側に見据える地域CL

宇都宮徹壱

今治が「最低でも3試合」を目指す理由

試合後、GKの岩脇力哉にポジショニングの指導をする吉武監督。今年の今治は全社でも本気モードだ 【宇都宮徹壱】

 ファイナルスコア4−1。シュート数は今治の14に対して、関大FCは前半の2本のみ。圧勝と言っていいだろう。とはいえ今治の選手からは、初戦の勝利にはしゃぐ様子はまったく見られない。それはベンチも同様で、サポーターへのあいさつを終えた選手に対して、吉武博文監督や岡田武史CMO(チーフ・メソッド・オフィサー)が大きな身振りを交えながら指導している様子からも明らかである。大学生相手に圧倒はしたものの、地域CLを突破するには、まだまだ物足りなさは否めない。前年の全社とは明らかに異なる切迫感が、そこには間違いなく横いつしていた。

 試合後、FC今治の矢野将文代表取締役の姿が見えたので、ひととおりのあいさつの後に「今大会はどのあたりを目指していますか?」と尋ねてみた。「とりあえず最低でも3試合を戦おう、という話は聞いております」という予想どおりの答えが返ってくる。3試合を連日戦うことは、地域CLのシミュレーションになるし、全社は四国リーグ以外の強豪と真剣勝負ができる絶好の機会。ここで、JFL昇格のライバルたちと対戦することで、自分たちの現在地も確認することができる。

 今治が2回戦で対戦するのは、ジョイフル本田つくばFC。今季は関東リーグ5位に終わったが、優勝した東京23FCにはホームで3−0で勝利するなど、それなりに地力のあるチームだ。初戦のFC KAWASAKI(岐阜県1部)にも、格下とはいえ6−1と圧倒しており、勢いも感じられる。四国リーグでは無敵の強さを発揮していた今治が、全国レベルでどれだけ戦えるかを試すには理想的な相手であると言えよう。このつくばFC戦と準々決勝に連勝すれば、準決勝の相手は松江シティFCか、あるいは三菱水島FCか(いずれも中国1部)。いずれにせよ、よほどのことがない限り、今治が準決勝に駒を進めることだろう。

 そんなわけで2回戦以降は、いったん今治の取材から離れて、地域CLのライバルになりそうなチームを取材することにしたい。矢野社長には「次は準決勝でお会いしましょう」と申し上げたが、全社で2、3回戦って敗れてしまうようでは、今年の地域CL突破は厳しいと言わざるを得ない。「負けたら終わり」の全社では、多くの強豪が1回戦を突破する中、四国リーグで今治のライバルだった高知が三菱水島に3−4で敗れ、来季も四国リーグを戦うことが決まった。「権利持ち」の今治には、2回戦を勝ち上がった唯一の四国勢として、そして開催県の代表として、さらなる高みを目指してほしいところだ。

※編集部追記:FC今治は23日の2回戦でジョイフル本田つくばFCに0−0(1PK4)で敗れ、大会から姿を消した。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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