菅野に並んだドラ1候補・佐々木千隼 直球だけの投げ込みで闘争心も復活

高木遊

マウンド上で時にはほえる場面も見せるほど、強い闘争心が持ち味 【撮影:高木遊】

 10月20日に行われるプロ野球ドラフト会議を前に、桜美林大の右腕・佐々木千隼は複数球団からドラフト1位候補としてリストアップされている。スリークオーターから最速153キロのストレートを投じ、同じ腕の振りからスライダーやシンカー、フォークなどを自在に操る姿に、「即戦力」との呼び声が高い。ドラフト前、そして学生生活最後となる今秋のシーズン。佐々木はさらに進化した姿を見せ、その評価は右肩上がりを続けている。

佐々木の投球フォーム

監督の親心に応えた復活劇

「ここ2週間、千隼が苦しんでいるところを見てきたので・・・」

 そう切り出すと桜美林大・津野裕幸監督は声を詰まらせ、目には光るものがあった。10月8日に行われた首都大学秋季リーグで、佐々木は東海大打線を3安打無失点に抑え、1対0で完封勝利。2009年のリーグ加盟以来、9敗1分だった東海大戦の初勝利をチームにもたらすとともに、自身の年間完封数を「7」とし、東海大・菅野智之(現巨人)が11年に樹立した記録に並んだ。

 だが、津野監督の言葉からも分かるように、この2週間は苦しい投球を強いられてきた。9月25日の日本体育大戦では延長12回で自責点2、10月1日の帝京大戦では9回3分の2を投げ自責点2の内容でともに敗れ、優勝争いから一歩後退する結果となった。そして、その結果以上に津野監督が気になったのが投球スタイルだ。

 佐々木をスカウトした實川淳之介助監督が「(第一印象で)投げっぷりの良さに、すごく引かれました」と語るように、闘争心あふれる投球がその成長を支えてきたが、鳴りを潜める部分があった。

 佐々木は「変化球でかわせば大丈夫という気持ちがありました。逃げに回る姿勢をチームメートに見せてしまいました」と振り返る。

 そこで津野監督は、帝京大戦からの1週間はストレートのみを投げ込ませた。また、2人きりでの対話も重ね「闘争心がなければ、おまえじゃない」と語りかけるなど、本来の佐々木の姿が戻るよう心を砕いてきた。

 その親心に応える好投劇に、思わず目頭が熱くなってしまったのだ。

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著者プロフィール

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

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