竜再建へ森繁和新監督に託された使命 名参謀になすすべはあるか!?

ベースボール・タイムズ

過去の栄光を捨て去ることから

落合監督時代は岩瀬(写真)を中心に1点を守りきる野球で黄金期を築いたが、森新監督はその野球からの脱却を目指す 【写真は共同】

 落合監督時代は1点を奪い、その1点を守りきる野球で黄金期を築き上げたが、森新監督は、かつての野球の再現は現状不可能だと説明する。

「少ない得点を守り勝つ野球ができるときは、7、8、9回に必ず勝ちパターンと呼べるピッチャーがいた。今年でいえば又吉(克樹)や福谷(浩司)、田島(慎二)や岡田(俊哉)がいるが、良いときもあれば悪いときもある。誰一人10勝できなかった原因はそこにあるし、リリーフ陣から言わせてもらえば先発投手がもう1イニング投げてくれれば、というのもある。先発が球数を増やす努力が必要になるし、リリーフ陣であれば1イニングをきっちり抑えること。何年か前には簡単にできたことができなくなっている」

 12球団ナンバーワンの投手陣とうたわれた名声は過去のもの。チーム再建に不可欠な投手陣の整備において現実的な案を明かす。

「セットアッパー、クローザーは、日本人投手でぐるぐる回してというのも考えたけど、もうそろそろ次のことを考えたら外国人に頼ってもいいのかなと。そういう意見はピッチングコーチからも出たし、私も同様に思っています」

 かつては守護神・岩瀬仁紀を中心に浅尾拓也や高橋聡文、小林正人、鈴木義広といった優秀な日本人リリーバーが存在していたのだが、現状のメンバーを見れば絶対的な安定感を誇る投手が見当たらない。今季、大きく飛躍を遂げた田島も9月22日と27日の巨人戦で2試合連続のサヨナラ負け。そのため、強力な助っ人の必要性を唱える。その上で自然と核心へと近づく。つまりは“お金”の話だ。

軍資金は? 球団の本気度が試される

 外国人の獲得となれば、相応の金額が必要となる。球団への要請を問われた森監督は頭をかく。

「そこが困っちゃうんだよなぁ。お金の話が出ちゃうとさぁ……。今回のビシエドのようにメジャーと3Aを行き来している選手は当然お金がかかる。過去には1億、2億出すよりも2000万、3000万の選手を4、5人連れてきて、その中から何人か出てきてくれればということができた時代はありました。ただそれはある程度の(日本人)選手が、ある程度の人数いたからできたこと」

 昨季、主力が一斉にチームを離れたことで絶対的に戦力が不足していることは今季の成績によって証明されてしまった。念願の長距離砲として加わったビシエドが序盤に大爆発し、「ビシエドと同じくらいの長打を打てる選手がいたら、ほかの連中が楽になると感じた」と森監督は言う。そして、チーム再建には現場とフロント、球団が一致団結して臨むべきであると強く主張する。

「みんなで同じ方向を見てやらないと難しい。どっかで誰かひとり欠けてもダメでしょう。オーナーも代表もGMもみんなで向かってやっていかないと。今度はオレがこういう立場に立った以上、言いたいことは言わせていただきます」

 経営には当然予算という枠組みはあるのだろうが、プロ野球チームを保持する球団として優勝を目指す体制作りを放棄するのであれば、それはもう使命を全うしているとは言えない。現場の戦力補強の要請に結果で応えられるのか。森監督が単なる場つなぎで終わってしまってはいけない。これ以上、ファンを失望させることのないよう、今こそ球団の本気度が試されるときであることは間違いない。

(高橋健二/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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