竜再建へ森繁和新監督に託された使命 名参謀になすすべはあるか!?

ベースボール・タイムズ

悲壮感すら漂った就任会見

就任記者会見で佐々木崇夫球団社長(右)と握手する森繁和新監督 【写真は共同】

 9月29日、2016年シーズンを最下位で終えた中日が、来季の新監督として森繁和ヘッドコーチの昇格を発表した。大方の予想ではウエスタン・リーグで優勝争いを演じたことで高い評価を受けていた小笠原道大2軍監督の抜てきが確実視されていたが、いざふたを開けてみればシーズン途中に休養した谷繁元信監督の後を受けてチームを率いていた監督代行の就任。“新生ドラゴンズ”の誕生を期待していたファンとしては、肩すかしを食らった形となった。

 事実として、森監督代行が指揮を振るった今季途中からの成績を見ると、15勝24敗の勝率3割8分5厘。これは谷繁監督の休養前までの勝率4割2分6厘(43勝58敗3分け)にも劣る数字で、就任会見前日の今季最終戦でも巨人を相手に延長12回サヨナラ負け。森新監督から出た言葉からは「そんなに晴れやかなものはないですね」、「まぁこれから厳しいこと、苦痛の方が多いのかなという感じがします」。本来であれば希望に満ちあふれるはずの新監督就任会見には、悲壮感すら漂った。この会見を受けて、来季への巻き返しに期待を膨らませたファンはどれくらいいただろうか。

チームの課題を誰よりも把握

 期待外れの面があった一方で、森氏は低迷の当事者ゆえにチームが抱える数々の課題について、誰よりも把握できていることは間違いない。その意味では、外部から招く人材よりも課題の解決へ向けた道筋を正確かつ最短で見つけられるであろうし、無責任にきれいごとばかりを並べるよりは、覚悟が見えた。

「次の若い人たちが4年、5年、6年とかけてひとつのチームを作り上げていくには、今すぐの1年では難しい。もうそういうところまで来てしまったという思いがある。どうせ苦しむなら俺がもう一回苦しみましょう。その代わり、良い形ができたと思ったら、そのときは退きます」

 4年連続Bクラス、そして19年ぶり最下位からのチーム再建へ向けて何をするべきか。その難問を前に、森監督は就任会見で、次期体制へ向けた“土台作り”を約束。現実問題として、それが今できる精いっぱいである。その事実が痛いほど伝わってきた。自身が監督として適任ではないことを自覚している。それを承知の上でも引き受けた理由を一言で説明するならば、「男気」という言葉がしっくり当てはまる。

 常勝軍団の再構築へ向けた礎を築く。そのためには選手の強化だけではなく、若手コーチ陣の育成も使命と捉えている。自らの保身のため目先の勝利にはとらわれない。自らが泥をかぶってでも、チーム再建へ向けて身を粉にする。どこまでも名参謀に徹する構えだ。

投手心理をくんだ攻撃野球を明言

 では来季、森監督はどのような野球を目指すのか。ヘッド格のコーチとして自らが支えてきた落合博満、谷繁元信の両監督が掲げてきた野球は、いずれも「守り勝つ」ということを提唱していた。同じ流れを継承するのかと思いきや、森監督はこれを否定する。

「守り勝つ野球は理想だと思います。理想は追いかけます。でも、守り勝つというのは、点が取れてこそできるもの。攻撃時に1点を取りに行って1点も取れなかったときと、2点、3点を取りにいって1点も取れなかったときでは、前者の方がピッチャーは苦しむ。だったら1点ではなくて、2点、3点を取りに行くという野球も必要なのかなと思います」

 この考えが初めて実践されたのは、今年4月22日の東京ヤクルト戦、谷繁監督がインフルエンザで休養となった試合だった。初回、無死一塁の場面にエンドランでチャンスを広げて一挙4点を奪った。「あの場面でひとつのアウトをやるのは嫌。送りバントで1点を取りにいくのもいいが、ヤクルトを相手に1点勝負はそうそうできない。1点を取りにいって失敗するぐらいなら、2点、3点を取りにいった方がいいからな」とは森監督代行の試合後の言葉だ。

 その後、8月上旬に再び監督代行として残りのシーズンを戦う中でも、この“攻撃采配”は度々披露された。その意図が投手心理をくんでいるところに森監督のカラーを感じられる。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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