竜再建へ森繁和新監督に託された使命 名参謀になすすべはあるか!?
悲壮感すら漂った就任会見
就任記者会見で佐々木崇夫球団社長(右)と握手する森繁和新監督 【写真は共同】
事実として、森監督代行が指揮を振るった今季途中からの成績を見ると、15勝24敗の勝率3割8分5厘。これは谷繁監督の休養前までの勝率4割2分6厘(43勝58敗3分け)にも劣る数字で、就任会見前日の今季最終戦でも巨人を相手に延長12回サヨナラ負け。森新監督から出た言葉からは「そんなに晴れやかなものはないですね」、「まぁこれから厳しいこと、苦痛の方が多いのかなという感じがします」。本来であれば希望に満ちあふれるはずの新監督就任会見には、悲壮感すら漂った。この会見を受けて、来季への巻き返しに期待を膨らませたファンはどれくらいいただろうか。
チームの課題を誰よりも把握
「次の若い人たちが4年、5年、6年とかけてひとつのチームを作り上げていくには、今すぐの1年では難しい。もうそういうところまで来てしまったという思いがある。どうせ苦しむなら俺がもう一回苦しみましょう。その代わり、良い形ができたと思ったら、そのときは退きます」
4年連続Bクラス、そして19年ぶり最下位からのチーム再建へ向けて何をするべきか。その難問を前に、森監督は就任会見で、次期体制へ向けた“土台作り”を約束。現実問題として、それが今できる精いっぱいである。その事実が痛いほど伝わってきた。自身が監督として適任ではないことを自覚している。それを承知の上でも引き受けた理由を一言で説明するならば、「男気」という言葉がしっくり当てはまる。
常勝軍団の再構築へ向けた礎を築く。そのためには選手の強化だけではなく、若手コーチ陣の育成も使命と捉えている。自らの保身のため目先の勝利にはとらわれない。自らが泥をかぶってでも、チーム再建へ向けて身を粉にする。どこまでも名参謀に徹する構えだ。
投手心理をくんだ攻撃野球を明言
「守り勝つ野球は理想だと思います。理想は追いかけます。でも、守り勝つというのは、点が取れてこそできるもの。攻撃時に1点を取りに行って1点も取れなかったときと、2点、3点を取りにいって1点も取れなかったときでは、前者の方がピッチャーは苦しむ。だったら1点ではなくて、2点、3点を取りに行くという野球も必要なのかなと思います」
この考えが初めて実践されたのは、今年4月22日の東京ヤクルト戦、谷繁監督がインフルエンザで休養となった試合だった。初回、無死一塁の場面にエンドランでチャンスを広げて一挙4点を奪った。「あの場面でひとつのアウトをやるのは嫌。送りバントで1点を取りにいくのもいいが、ヤクルトを相手に1点勝負はそうそうできない。1点を取りにいって失敗するぐらいなら、2点、3点を取りにいった方がいいからな」とは森監督代行の試合後の言葉だ。
その後、8月上旬に再び監督代行として残りのシーズンを戦う中でも、この“攻撃采配”は度々披露された。その意図が投手心理をくんでいるところに森監督のカラーを感じられる。