世界を旅しタフになった“00ジャパン” 日本サッカーの明日のために、ここは勝つ

川端暁彦

最初の難関、U−17W杯出場決定戦

“00ジャパン”と称されるU−16日本代表が、UAEとのW杯出場決定戦へと挑む 【佐藤博之】

 インド・ゴア州。日本から6000キロ余り離れた南部インドの港町で、“ニューミレニアム世代”の日本代表による旅路が、最初の難所へと差し掛かっている。日本時間9月25日23時30分から始まるAFCU−16選手権準々決勝・UAE戦。それはすなわち、U−17ワールドカップ出場決定戦である。

 2000年1月1日以降に生まれた選手たちで構成されることから、“00ジャパン”と通称されてきたU−16日本代表チームが活動を開始したのは、15年2月のこと。約1年半にわたって世界中を旅しながら、選手個々を練習で鍛え、自覚を促し、チームとしての形を整えてきた。

 最初に行ったのはインドネシアだった。同年4月、雨季の終わり。慣れない環境の変化に戸惑い、突然のスコールに驚き、デコボコのグラウンドに四苦八苦した。7月にはタイへ赴き、9月には1次予選を戦うためにモンゴルへと渡った。眼下に広がる見たこともないような大草原と、急発展のはざまにある不思議な光景が広がる環境で、選手たちは驚異的な得点力というチームのストロングポイントを存分に表現し、圧倒的強さで勝ち抜きを決めた。

 10月にはフランスで行われたバル・ド・マルヌ国際大会に参加。イングランド代表に2点を先行される流れから、最後はFW宮代大聖(川崎フロンターレU−18)による試合終了間際の得点で4−3と奇跡的な大逆転勝ち。続くフランス戦では逆に2点のリードを追い付かれる流れながら、FW中村敬斗(三菱養和SCユース)のアディショナルタイムゴールで3−2の勝利を収めた。オランダとの最終戦は0−3と敗れて鼻っ柱を折られたが、このオランダ戦がチーム結成以来唯一の対外試合無得点という事実が、このチームのポテンシャルを雄弁に物語る。

森山監督が一貫した「タフになれ」

 今年に入ってからは、まず3月に「SPORT FOR TOMORROW 中央アジア・日本U−16サッカー交流」でウズベキスタンへ遠征し、これまた未知の環境でイラン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの代表と肌を合わせた。5月初めには中国、下旬から翌月にかけては決戦の地であるインド・ゴア州でシミュレーション合宿を実施。ほとんどの選手が下痢をする中での戦いを余儀なくされるなど、インドをまさに「体感」。その中でも帰りにベトナムへ立ち寄って“道場破り”も敢行し、さらなるタフさを求めた。6月末には日本の鳥取県で行われたU−16インターナショナルドリームカップに参加し、U−16マリ代表の強さに驚愕。今年唯一の敗戦(1−2)を喫する中で、世界大会出場への思いを新たにすることとなった。

 7月にはオマーンへ遠征。新戦力をいきなり海外遠征にぶち込んでテストするという荒技をしながら、中東アウェーマッチを初体験。その難しさも実感した。そして9月、再び決戦のためにインドへ戻ってきたチームは、AFCU−16選手権のグループステージで快進撃。ベトナムに7−0の大差で勝利すると、続くキルギスには8−0、そしてオーストラリアとの最終戦では控え組主体の構成ながら、それでも6−0。圧倒的な強さで準々決勝まで駒を進めてきた。インドの環境は普通の日本人ならば大きなストレスとなるものだろうが、この若さで世界中を旅してきた選手たちである。その経験値は、確かに財産となっている。

 これらはすべて、未来への投資だ。森山佳郎監督が選手たちに言ってきたことは一貫していて、つまり「タフになれ」ということ。練習からまず激しさを求め、シャイで大人しい部分のあった選手たちをあおり続けた。「お前らのようなエリートは、努力を忘れてみんな消えていくんだ」とまで言った。今では当たり前のようにできるようになったシュートブロックや強いコンタクトプレーも素早い攻守の切り替えも、最初はほとんどの選手がやれなかった。元よりあった攻撃の豊かなタレント性に、培ったタフネスが加わったのが“00ジャパン”である。

 その最初の集大成と言うべき戦いが、いよいよ始まる。それは「ここで負ければ、何の得るものもなく帰らないといけなくなる」(森山監督)戦いでもある。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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