才賀紀左衛門が描く総合での野望「RIZINを世界一のビッグイベントに」

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山本アーセン戦への意気込みを才賀紀左衛門に聞いた 【スポーツナビ】

「RIZIN FIGHTING WORLD GP 2016 無差別級トーナメント開幕戦」(埼玉・さいたまスーパーアリーナ)が9月25日(日)に開催される。

 昨年12月29日の「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2015」では所英男と対戦した才賀紀左衛門。結果こそ所のアームバーに敗れたが、立ち技から総合格闘技に転向して数戦ながら、その適応力の高さを見せつけた。

 その才賀のRIZIN2戦目は、“格闘一族山本家”の遺伝子を受け継ぐ山本アーセン。レスリングでも活躍する次世代選手に対して、空手やK−1といった立ち技で育った才賀という他流試合となるが、どんな試合展開になるか注目が集まる。

 今回は11日に行われた公開練習後の才賀紀左衛門にインタビュー。試合に向けての意気込みなどを聞いた。

減量なしでも「普通に勝てる相手」

今回はナチュラルな体重での戦いとなるが「勝てる自信がある」と断言する 【スポーツナビ】

――公開練習でも非常にリラックスしていて、余裕さえ漂わせる印象でしたが?

 ないですよ、余裕は。いっぱいいっぱいですよ。

――試合が近づき、やっと契約体重も決まりました。

 そうなんですよ。体重が62キロになりました。俺はフライ級やから、本来は57キロとかでやりたいのが正直なところです。今回は対戦相手がフェザー級で僕の2階級上なので、間を取ってバンタムかなという話もしてたんですけど、それもきついみたいで62キロになりました。
 やっぱりファンは試合を観たいじゃないですか? まあ、それでも俺は勝てる自信があるんですけど。

――今回は減量なしで試合に臨むことになる?

 減量はないですね。今日の朝の段階で63とか64なので、食事を少しやれば大丈夫です。

――今まで体重を落とさずに戦うことはあった?

 あります。俺は結構、上の階級でやらされることもあって(笑)。前回の大会も62キロでやりましたし。本来は57キロまで落とすのが理想なので、62キロだとナチュラルな体重です。普段と何も変わらず、日常生活と変わることなく、ですね。

――減量して戦うのと、減量なしで戦うのでは感覚の違いはある?

 どうなんですかね? 俺は結構落とさんと、ナチュラルにやってることが今まで多かったので。でももちろん落として試合をした方が、コンディションもいいというか。やっぱり試合としては同じ階級の選手とやった方がパワーの差も感じないし。でもだからといって今回の相手は体重をそれほど落とさずにやっても、普通に勝てる相手だと思います。そんなに苦ではないです。

米国でUFCのトップファイターと練習

UFCのトップ選手と練習しても打撃は負けなかったと話す才賀 【中原義史】

――今回、米国で練習してきたということですが、環境はいかがでしたか?

 最高ですね、米国は。練習だけに集中できるし、日本とは練習の内容もレベルも違うし、すごくクオリティが高い練習ができました。

――どんな選手と練習してきたのですか?

 ユライア・フェイバーだったり、コーディ(・ガーブラント)だったり、あとはチャド・メンデスだったり。UFCのトップファイターたちとやってきたのですが、実は打撃だけなら「あれっ、こんなもんなの?」という感じでした。打撃は俺の得意分野だから当たり前なんですけどね。
 でも当然向こうはグラップリングも寝技も何でもできるんですよ。だから俺もユライアに「しっかり寝技もできるようにならないとだめだよ」と言われて、寝技に関してはみっちりやってきました。

――そういう選手たちと練習をしていて、何か日本との違いはありましたか?

 フィジカルで言うと、同じ階級であれば体重は一緒だから、それほど差は感じないですね。むしろ俺の方が強かったし、練習相手に「お前すごいパワーだな」って言われました。

――相手の選手たちも才賀選手を認めてくれていたと?

 最初は「なんだこいつ?」って感じで見られてたんですけど、スパーリングをやってて、俺の打撃が強いからみんなも「すげぇ」と言ってくれて。逆に寝技とかになると、向こうが教えてくれたので「寝技を教えてやるから打撃を教えてくれ」って感じでしたね。

――そういう部分でかなり集中して練習ができた?

 朝昼晩と練習してきました。結構俺、フワフワしているというか、楽しくやっているように見えるんですけど、格闘技でも何の世界でも考えてやらないと上には行けないと思っています。ただその努力している姿を人に見せるもんじゃないと。頑張っているというのは、人が評価するんでなく、自分で評価することなんで、だから俺はそういうのを見せないようにしているんです。
 格闘技は勝たないと意味がない。俺は総合格闘技を始めて1年です。半年以上過ぎてやっと自分の中では手ごたえを感じているし、あと半年、1年したら、日本人には負けないようになっていないとダメかなと思ってます。

つまらない試合にならないよう、俺が勝つ!

アーセンの才能を認めつつも、RIZINを盛り上げるためには自分が勝しかないと話す 【スポーツナビ】

――今回は対戦相手が山本アーセン選手になりますが、印象は?

 やっぱり彼は身体能力、ポテンシャルも高く、レスリングでもすごい成績を残していて油断はできません。でもだからといって、資料がなさすぎるというか未知数ですよね。俺の方も所さんとの試合映像しかないから、彼は彼で俺の資料をあまり持っていない。
 それでもほかの選手と違って才能のある選手の一人なので、油断せずにきっちり勝とうと、というか絶対に俺が勝ちます! むしろ俺が勝たないと盛り上がらないし、(ファンに)魅せられる試合ができたり華があったりというのは、ファイターの才能やと思います。いろいろな団体がスターを作ろうとしていますけど、華があるのは俺の試合で、俺がチャンピオンになって、魔裟斗さん、KID(山本徳郁)さん、秋山(成勲)さんといったカリスマたちとは違う形でスター選手にならないと、格闘界が盛り上がらない。そういう意味でも俺がしっかり勝とうと思ってます。

――アーセン選手との試合の中で気にしないといけない部分は?

 ひとつ気にするとしたら、所さんのように寝技で仕掛けてくる相手なら攻防があるけど、それがないとつまらない試合になってしまうのが嫌だなと。アーセン君が俺に勝つには、押さえ込んでのパウンドしかないと思うんだけど、パウンドをされても切れる自信があるので、そうやってベッタリ押さえ込まれてつまらない試合にならないように、俺が切ったり技を仕掛けたりしていきたいですね。逆に俺が技を仕掛けて一本を狙おうとも思っているので、そうそう(アーセンの)絞め技でもやられることはないと思います。

――そのあたりの自信は米国での練習の成果でもあると?

 そこを意識して米国でやってきましたからね。総合格闘技なので、打撃が強いからって「立ってやってくれたら」とかじゃなくて、“タラレバ”にならないように、何でもできるようなトータルファイターになりたい。「こいつ寝かしてもいけるやん!」と思われるようなファイターになりたいですね。

――総合格闘技の選手で、自分のイメージに近いファイターはいますか?

 ユライアはめっちゃ好きなんですよね。あいつ、すげえ華があるじゃないですか? 俺が総合格闘技を始めようと思ったのが、ユライアの試合を見てからなんですよ。華があるし格好いいし、「こいつカリスマやな」って。
 あとはコナー・マクレガーもすげえ考えてやっているのが分かるから、すごいなと思います。あいつにも負けたくないですね。戦い方としては、ネイト・ディアスも好きで、寝て良し、立って良しで、ああいう風になりたいですね。

重量級の試合を食ってやる

――話を聞いていると、海外の格闘技も結構チェックしているようですね?

 K−1がテレビで放送されなくなった時に、「これじゃ飯を食っていけないな」と思って、俺は格闘技を止めようかなと思ったこともあったんですよ。そんな時に、UFCを見てみたら、試合をしていたのがユライアだったんです。
 すげえ華があるし、入場から目立っているし、何だこれって感じで。それでお金もいいってことだから格闘技を続けるならここしかないなと。
 それでちょっとやってみたんですけど、最初は気持ちが入らなくて。やっぱり自分でジムでもやろうかなって思っていたところにRIZINの話があって、またテレビで放送されるってことだったので、これはやった方がいいなと。

 あと今回米国に行ってきて、やっぱりUFCも自分の想像と違いました。日本から見たらUFCってすごいのかなと思ったんですけど、米国内ではUFCもそんなにメジャースポーツとは言えないんです。米国は人口が多いから、たくさんの人が観てるように見えても、全体の比率から考えるとそうでもない。米国だとアメフトと野球とバスケ、最近ではサッカーも盛り上がっているけど、そこに格闘技の名前がなくて、まだまだ完成されたものじゃないって思いました。それからユライアやコーディと練習している時に、全然いけるんじゃん俺、と。まだまだチャンスがある競技だなって思ったし、だから俺はRIZINという舞台を世界一のビッグイベントにしたい。そのためには俺が強くなって、格闘界を盛り上げて、同じ階級では誰にも負けないようになりたいんです。それでUFCやベラトールといった海外のプロモーションでもRIZIN代表として飛び込んで戦いたい。それこそ、向こうでも昔のPRIDEの印象が強かったみたいで、RIZINはPRIDEをやっていた人たちがやっていると聞いた人は、RIZINにも興味を持っていたようですね。

――そういう意味でもRIZINとともに有名になって、世界に響くような戦いを見せていきたいと?

 俺はRIZINと一緒に成長していって、看板の選手になっていきたい。RIZIN自体が成長していけば、ファイトマネーも上がるし、そうなればUFCの選手もRIZINを選んでくれるかもしれないので、俺がそういう役割を担いたいと。俺がしっかり強くなってRIZINを盛り上げていきたいです。

――どうしても重量級に目がいきがちですが、軽量級としてもRIZINを盛り上げたい?

 そうですね。どうしても大きい選手の方が迫力もあって、重量級の面白さはあると思います。でも軽量級はスピード感もあるし、俺がもっとKOの試合を増やせば、絶対、軽量級も盛り上がると思います。K−1で魔裟斗さんが盛り上げてくれたように。あと重量級の選手でルックスがいいのもいないからね(笑)。そういった意味でも軽量級の方が人気がでやすいかなって思います。

――今回の大会では無差別級トーナメントより盛り上がる試合を見せたいと?

 そういった意味では自分のテーマはアーセン君に勝つというのはもちろんですけど、試合は一人でできないので、アーセン君としっかりいい試合をして、ヘビー級の試合も食ってやりたいですね。ヘビー級の試合より、俺の試合を見たいって人を一人でも多くしたいです。


――それでは最後に試合への意気込みをお願いします。

 当日はしっかりコンディションを整えて、いい試合をして勝ちたいと思います。ファンの方には是非、応援していただければと思います。よろしくお願いします。

(取材・文:尾柴広紀/スポーツナビ)
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