“大物食い”ワウリンカは謙虚な男 ジョコ賞賛も「足元にも及ばない」

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グランドスラム通算3度目の栄冠

ジョコビッチを退けて全米オープン優勝を果たしたワウリンカ 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 全米オープン男子シングルス決勝は、第3シードのスタン・ワウリンカ(スイス)が、昨年の覇者で第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)を下し、同大会では初めて、グランドスラムでは2014年の全豪オープン、15年の全仏オープンに次いで通算3度目の栄冠と、優勝賞金約3億6000万円を手にした。

 ジョコビッチは試合前、「ワウリンカは大物食い」と警戒していた。14年以来、ツアーで決勝に進めば負けなしの10連勝中。対戦成績ではジョコビッチが19勝4敗と大きくリードしてはいるが、15年の全仏オープンでは決勝の大舞台で敗れている。第1セットをジョコビッチが奪ってからの逆転負け……この日も同じような流れだ。

 立ち上がりのジョコビッチは動きが良く、第1セット、サーブにエンジンのかからないワウリンカをすかさず攻めた。第2ゲームの最初のポイントで、ワウリンカが右に左に大きく振り回したが、ジョコビッチはよく追いつき、2度、3度とベースライン深くに返球。このポイントを奪って自信を得たのだろう。セカンドサーブを深く返してミスを誘い、早々にブレークした。

 しかし、ワウリンカは余裕を感じさせる試合運びで勝ち上がってきた。ダニエル・エバンズ(イギリス)との3回戦ではマッチポイントを握られ、錦織圭(日清食品)との準決勝でも第1セットを落としてから、冷静に立て直してひっくり返した。これまで2セットダウンからの逆転勝ちが6度もあり、その背景にはスタミナへの自信がある。第9ゲームをブレークバックし、タイブレークこそ落としたが、第2セットから追い上げが始まった。

「勇気があった」とたたえるジョコ

ジョコビッチ(左)はワウリンカをたたえ「トップ5」と話したが、これを否定。生涯グランドスラムまであと1つとした中、この謙虚さが強さの一端かもしれない 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 チャンスは第4ゲームだ。この日のジョコビッチはダブルフォールトが7本。夏の故障の影響か、モーションに納得がいかないと言う。2回戦が不戦勝で、3回戦、準々決勝で棄権勝ちと、コートに立ったのはワウリンカの約半分の8時間58分。その影響もあったのだろう。2本のダブルフォールトをもらったワウリンカが伝家の宝刀のバックハンドをダウンザラインに叩き込んでブレーク。第7ゲームで一旦は追いつかれるが、縦横のライン際にボールを集め、走るジョコビッチをさらに走らせ、第10ゲームをブレークしてセットで並んだ。

「きょうのスタンには勇気があった。大事なポイントで一歩前に踏み出して、勝負を懸けてきた。その点で、僕は守りに入っていた。大事ポイントを取れなかった」

 ジョコビッチが悔やむのは第3セットの立ち上がりだ。第1ゲームに15−40から3本のブレークポイントを奪いながら、ここを生かせず、続く第2ゲームで逆にブレークを許した。ジョコビッチは第3セットだけで6本のブレークポイントをつかみ、ブレークは1度だけ。第5ゲームにブレークバックして一時は窮地を脱したのはさすが王者だが、ワウリンカの自信のこもったショットが威力を増し、そこから先に進めなかった。

 第4セット、ジョコビッチは足の爪がはがれてメディカルタイムアウトを取った。リオ五輪の前後に手首を痛め、この大会への出場を決めたのは8日前だったと言うから、心身のアンバランスが最後の最後に出たのだろう。ワウリンカも第3セットにはけいれんが始まったが、挑戦者としての気持ちの充実度、決勝までの勝ち上がり方の違いが明暗を分けた。

「相手は世界一のノバクだ。プレーヤーとしても人間としても尊敬している。とにかく集中しよう、自分に厳しく、痛みを表に出さないようにしようと思った」

 この勝利で、決勝に進めば負けなしの11連勝。ジョコビッチは「トップ4」ではなく「トップ5」とたたえたが、スタンは恥ずかしそうにこう否定した。

「彼らは10年近くも、優勝だけでなくベスト4、準優勝をキープしてきたし、グランドスラムだけではなくマスターズでも立派な成績を残している。僕は、彼らの足元にも及ばない」

 31歳のこの謙虚さが怖いのだ。

(文:武田薫)

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