打撃音はカキーンが定番?野球漫画を調査 カネシゲタカシの『ぷぷぷぷプロ野球』

カネシゲタカシ

【カネシゲタカシ】

 野球漫画には定番の擬音が存在します。スタンドの歓声は「ワー」。投手がボールを投げると「ビシュッ」。そしてバッターが打つと「カキーン」。

 でも、ちょっと待ってください。この「カキーン」って音、金属バットの高校野球にはぴったりなものの、木製バットのプロ野球には似合わない気がしませんか? 木製バットには別の擬音があってしかるべき。ていうか、野球漫画の打撃音は本当に「カキーン」が定番なんでしょうか。

 気になったので調べてみました。まずは中学・高校野球をテーマにした漫画から。

中学野球の「キャプテン」は控えめ

【カネシゲタカシ】

 中学野球を描いた名作漫画『キャプテン』で、最も多く出てきた打撃音は「カキーン」ではなく「カキ」でした。後ろに小さな「ッ」を入れたくなるところですが、中学野球なのでこれぐらい控えめでも良いのでしょう。ところで『キャプテン』に出てくるバットは金属バットと考えて正解でしょうか? 1970年代後半の作品です。

【カネシゲタカシ】

 ここからは高校野球漫画です。そのバイブル的存在『ドカベン』には、定番の「カキーン」「カッキーン」をはじめ、実にバラエティ豊かな打撃音が登場します。「ぐわらぐわがき〜ん」は名物キャラ・岩鬼正美の打撃音ですが、自ら声で発していたりします。

泥臭さとは程遠い「タッチ」

【カネシゲタカシ】

 80年代を代表するラブコメディー漫画でもある『タッチ』の擬音は「キィン」「キン」などと、さわやかな金属音が中心です。泥臭さと縁遠いどこか品のある「キン」の擬音は、ワイングラスで乾杯する際でも使えそうです。

【カネシゲタカシ】

 女性漫画家・ひぐちアサ先生が描く高校野球の世界でも、その打撃音は「キンッ」「ギンッ」などの軽やかな金属音で表現されています。

 ちなみにこの『おおきく振りかぶって』で特徴的なのは試合中の観客の声が「ワー」などでなく、「パララパー」「どんどん」「そーれそれ」などとより具体的に描かれているところ。ありそうでなかった表現方法です。

【カネシゲタカシ】

 野球名門校で奮闘する主人公を描いた『ダイヤのA』。音そのものは「カキィン」などとオーソドックスですが、迫力のある描き文字で臨場感を演出します。トーンをずらして重ねたり、ホワイトを散らしたり。漫画表現の進化を感じます。

「巨人の星」に圧倒的に多いのは!?

 さて、ここまでは中学・高校野球を扱った作品の打撃音を見てきました。次からはプロ野球をテーマにした作品です。

【カネシゲタカシ】

 国民的野球漫画『巨人の星』の打撃音は「カキーン」がメインでした。「バキッ」「ガッ」「カーン」なども登場するのですが、圧倒的に多いのは「カキーン」。木製バットというよりも金属バットの音ですよね……。

【カネシゲタカシ】

 全78巻の大作『MAJOR』、その打撃音は「アアン」「シュド」など、どこか独特。単純に「カキーン」などと描写しないこだわりを感じます。

 ちなみに『MAJOR』の舞台は幼稚園から中学、高校、マイナーリーグ、メジャーリーグ、日本プロ野球と目まぐるしく変遷するため、手にした巻により擬音の傾向が違うかもしれません。

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著者プロフィール

1975年生まれの漫画家・コラムニスト。大阪府出身。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にてデビュー。現在は『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)等に連載を持つほか、テレビ・ラジオ・トークイベントに出演するなど活動範囲を拡大中。元よしもと芸人。著書・共著は『みんなの あるあるプロ野球』(講談社)、『野球大喜利 ザ・グレート』(徳間書店)、『ベイスたん』(KADOKAWA)など。

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