メルセデス勢のV争いを左右するのは!? 今宮純によるF1後半戦のホットポイント

F1速報

「賞味期限ぎりぎり」のハミルトン

リードしているのは現王者のハミルトン。しかし、ロズベルグの勝ち目は少なくない 【XPB Images】

 2016年のF1シリーズ後半戦は、タイトルを争うふたりにとって「苦しむ場」になっていくだろう。第12戦ドイツGPまで4連勝した現在首位のルイス・ハミルトンが217点、2位ニコ・ロズベルグは198点と、19点差に広がった。このリードは小さくないが、大きくもない。

 ハミルトン本人は自覚している。すでにパワーユニットのターボチャージャーとMGU−H(熱エネルギー回生システム)は年間使用リミットの5基目、エナジーストア(バッテリー)とコントロールユニットも4基目。いずれもロズベルグは、まだ3基目だ。もし新たに6基目のコンポーネントを投入すると10グリッド降格のペナルティが下る。いまのハミルトンは時限爆弾を抱えているようなものだ。

 ハミルトンは2014年のハンガリーGPではピットスタートから3位に食い込む、離れ技レースをやってみせた。それくらいライバルに対してメルセデス・パワーにアドバンテージがあったから可能だった。現在はどうか。マシン総合戦力でレッドブルとフェラーリは競合、彼らのパワーユニットは2年前ほどメルセデスに大きく劣ってはいない。10グリッド降格あるいは、それ以上のペナルティをハミルトンが受けた場合に、彼ら2チーム4台すべてをかわし、表彰台まではい上がるのは決して容易ではないだろう。6位は8点、7位では6点にとどまり、そこでロズベルグが勝てば25点、ハミルトンが7位だと点差はゼロとなり、リードは消滅する。

 後半戦はパワーユニット全開率約70%の高速コース、スパ・フランコルシャン(ベルギーGP)とモンツァ(イタリアGP)から始まる。“賞味期限ぎりぎり”のリーダーは前半戦、最後のドイツGPではフリー走行の周回数を抑え、予選ポールポジションを逃し、決勝での最速ラップもない。4連勝で2位とのタイム差は5秒台、8秒台、1秒台、6秒台……独走せずにセーブを心がけていたことが伝わる。

未勝利サーキットが続くロズベルク

 苦しいのはロズベルグも同じだ。ベルギーGP、イタリアGP、シンガポールGP、マレーシアGP、日本GPでは、これまで勝ったことがない。昨年は予選でも鈴鹿以外すべてハミルトンの後塵を拝している。

 後半戦、再開後のロズベルグは未勝利グランプリがカギとなる。メルセデスに優位性がある高速スパとモンツァでは初勝利が欲しい。手段として、ここでフレッシュなエンジンを入れて、ハミルトンを揺さぶる戦術もありえよう。シンガポールとマレーシアは昨年フェラーリが制している。ハミルトンだけでなく他チームも要注意で、混戦パターンを警戒する必要もある。

 接近集団バトルになったとき、戦況を冷静に読み、ハミルトンの位置を意識した戦いに徹すること。オーストリアやドイツのように目前の敵に熱くなりすぎると、失うものは大きい。全体像を見きわめ、先を見通した「レース・メイキング」を実行するために、ピット無線規制緩和をうまく利用した緻密なコミュニケーションも重要だ。

 前半戦のロズベルグには時として、熱しやすく冷めやすい気性が見られた。それを後半戦は是正し、苦しいときこそ「集中力=メンタル・パワーアップ」だ。今年からマネジメントを担当しているゲルハルト・ベルガ―の「コーチング」も役立てたい。

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