「三極」に振れるJリーグを読み解く 2nd優勝、CS出場を果たすクラブは?

北條聡

セカンド制覇へ、視界良好の横浜FM

大黒柱の中村俊輔がけがから復帰した横浜FM。セカンドステージ制覇に向け、視界は良好だ 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 狙うはステージ優勝か、年間3位以内か、残留か――。

 各クラブの思惑が明確に「三極」へ振れていく。それが、J1のセカンドステージだ。すでに4試合を消化したが、大半のクラブはセカンドの順位と年間順位の「両にらみ」で、残りの13試合へ臨むことになる。

 現時点の年間順位を見ると、1位が川崎フロンターレ、2位が鹿島アントラーズ、3位が浦和レッズ。浦和と4位のサンフレッチェ広島との勝ち点差が9ポイントに広がり、4位以下のクラブにとってはチャンピオンシップ(CS)への扉を開く「年間3位以内」の争いが、どんどんシビアになっている。こうなると、是が非でもセカンドのタイトルが欲しいのは「3強」以外のクラブだろうか。

 セカンドで首位に立つ横浜F・マリノスも、そのひとつだ。ファーストステージは11位と出遅れ、年間の勝ち点も3位の浦和に11ポイント離されているが、セカンド制覇への視界は良好だ。けがの癒えた大黒柱の中村俊輔がカムバックし、課題の攻撃面が改善され、得失の収支が大きく「黒字」に転じた。エースの左足のキックを絡めるセットプレーの得点力はリーグ随一。僅差勝負でモノを言う「飛び道具」が復活し、勝ち点を拾える確率が高まっている。

 また、ファーストでふるわなかったカイケとマルティノスが、セカンドだけで各2点。背後に控える中村が2人の持ち味を巧みに引き出している。伝統の堅固な守備力とのバランスが整いつつあると見ていいだろう。

G大阪と広島は巻き返しへ道半ば?

浅野がアーセナルに移籍した広島。苦しい夏場をどう乗り切るかが鍵になりそうだ 【©SANFRECCE】

 横浜FMと同様、セカンド制覇を企む広島とガンバ大阪は、いずれも巻き返しへ道半ば。この夏に広島は浅野拓磨(→アーセナル/イングランド)、G大阪は宇佐美貴史(→アウクスブルク/ドイツ)という国内屈指のアタッカーを手放している。

 広島の森保一、G大阪の長谷川健太両監督はこうした事態を見越し、春先から補強を含む、代替案を探ってきた。森保監督はアタック陣を再編。新外国人のピーター・ウタカを軸に高い得点力を備えるに至ったが、中盤から後ろにかけてけが人が続出。肝心の守備力が不安要素へ暗転した。加えて、3バックの一角を担う塩谷司がリオデジャネイロ五輪にオーバーエイジとして参加する。離脱中の司令塔・青山敏弘の復帰も含め、頼みの攻撃力を生かし、苦しい夏場をどう乗り切るか。それがセカンド制覇、ひいてはJ1連覇へのカギとなりそうだ。

 G大阪は広島と対照的に攻撃面で波がある。セカンド突入後、2戦連続で3点を稼いだかと思えば、続く2試合は無得点。1トップをめぐり、技巧派のアデミウソンと巨砲パトリックの二択に揺れ動き、柱が定まらない状況だ。いっそ2人を同時に使う3つ目の選択肢(2トップシステム)も視野に入れて、決め手不足を解決することが巻き返しの条件だろうか。

キーパーソンが五輪に参加する1st上位3チーム

若き司令塔大島がリオ五輪に参加する川崎。1st上位3クラブにとっては厳しい夏になる? 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 死角アリという点では、セカンドで7位に甘んじるファースト王者の鹿島も同じ。リーグ最少失点を誇る守備力にバグが生じている。直近3試合の失点は4、3、3。カイオの移籍(→アルアイン/UAE)による攻撃力の低下は誤算と言っていい。植田直通のリオ五輪参加で、センターバックが手薄となるだけに、守備の立て直しは急務だ。強みのハードワークには高温多湿も「強敵」となるだけに、ベンチのマネジメント力が問われそうだ。

 ファーストに続き、穴が少ないように映るのが川崎と浦和だろう。セカンドは互いに3勝1分け。勝ち点で横浜FMに並んでいる。ただ、この夏がひとつのポイントとなる点では他クラブと変わりはない。代替不可のキーパーソンがリオ五輪に参加するからだ。川崎は進境著しい司令塔の大島僚太を、浦和は興梠慎三と遠藤航という攻守の要を欠いて、しばらく戦わなければならない。

 そのうえ、川崎は重鎮の中村憲剛がけがで離脱中。大島に代わってボランチに回すオプションが使えない。中村の不在に伴い、主砲の大久保嘉人がゴールから遠ざかる悪循環も重なり、勝ち点が伸び悩む恐れもある。浦和も遠藤を欠く守備陣以上に、攻撃陣への不安が少なくない。得点とアシストの両面でフル回転してきた興梠の存在が絶大だからだ。代役と目される李忠成、あるいはズラタンがどこまで穴を埋められるか、予測がつきにくい。

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著者プロフィール

週刊サッカーマガジン元編集長。早大卒。J元年の93年に(株)ベースボール・マガジン社に入社。以来、サッカー畑一筋。昨年10月末に退社し、現在はフリーランス。著書に『サカマガイズム』、名波浩氏との共著に『正しいバルサの目指し方』(以上、ベースボール・マガジン社)、二宮寿朗氏との共著に『勝つ準備』(実業之日本社)がある。

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