巨人、後半戦の巻き返しへ4つのポイント

鷲田康

エース菅野の力投が、低迷する巨人の後半戦の巻き返し、広島追撃への大きなカギを握る 【写真は共同】

 広島の独走気配となってきたセ・リーグのペナントレースだが、オールスター休みを挟んで各チームは後半戦へのチーム建て直しに余念がない。2年連続で借金ターンした巨人の前半戦は、チーム得点がリーグ最下位、チーム打率は同5位と相変わらずの貧打にあえいだ。同時に投手陣にも故障者が続出。先発の顔ぶれもそろわず苦戦を強いられることになった。

 ここ数年の課題となっている打線に関しては、いきなり貧打解消というのは難しそう。ならば後半戦に向けては投手陣の整備が広島追撃、そしてクライマックスシリーズをにらんだ大きなテーマとなりそうである。

35日間、勝ち星から見放された菅野

“巨投逆襲”に、4つのポイントを整理してみた。1つ目はエース・菅野智之の復活劇だ。

 7月9日の横浜DeNA戦で、菅野は自己最多の13三振を奪って5安打2失点の完投勝利を飾った。

「エースとして常に勝ちを期待してマウンドに送ってきた」

 こう語る高橋由伸監督だが、エースがこの6勝目を上げるまでにたどった厳しい道が、巨人の苦しさの象徴でもあった。

 菅野が5勝目を挙げたのは6月3日の北海道日本ハムとの交流戦で、そこから35日間、4度の先発機会があったがいずれも白星から見放されていたのである。今季は開幕から3度の中5日登板を含めて先発の柱、ローテーションの軸となってきたが、その疲労が6月に入ってピークとなってしまっていた。

「スポーツの世界ではよく『心・技・体』と言いますけど、すべてを求めてはダメだと思うんです。野球選手として自分が一番、大切にしているのはコンディショニング。僕は『体・心・技』で技術は一番、最後だと思うんです」

 菅野本人が語るようにコンディショニングが崩れたことで、持ち前の制球力やボールのキレを失い6月24日のDeNA戦では3回も持たずに11安打を浴び9失点してKOされた。

復活のエース「とにかく勝ち続ける」

6月は1カ月以上勝ち星から見放された菅野だが、9日のDeNA戦で自己最多の13奪三振、完投勝利でエースの完全復活を印象付けた 【写真は共同】

 そのため直後の6月26、27日には異例の2日連続の休みをとり、1日はリセットのために完全休養にあてるなど積極的に体を休めることに努めた。そうしてコンディションを立て直した上で「前回はボールを引きつけて、逆方向へ狙ってきていた」というDeNA打線対策を立てて臨んだのが、9日の試合だったのだ。

 この試合では3点リードの9回にハマの主砲・筒香嘉智に対して最速153キロを含む全球ストレート勝負を挑み空振り三振を奪うなど最後まで衰えることのないスタミナを披露。

「誰一人として諦めている選手はいないし、とにかく勝ち続けるだけですから。そういう気持ちで投げている姿というのも影響すると思うし、その輪の中心にいたい」

 試合後にはこう語り、頼もしいエースの完全復活を印象付けた。

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著者プロフィール

1957年埼玉県生まれ。慶應義塾大学卒業後、報知新聞社入社。91年オフから巨人キャップとして93年の長嶋監督復帰、松井秀喜の入団などを取材。2003年に独立。日米を問わず野球の面白さを現場から伝え続け、雑誌、新聞で活躍。著書に『ホームラン術』『松井秀喜の言葉』『10・8 巨人VS.中日 史上最高の決戦』『長嶋茂雄 最後の日。1974.10.14』などがある。

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