手倉森ジャパンが五輪で狙うスタイルは? リオ代表vs.ロンドン代表 データ徹底比較

手倉森ジャパンのコンセプトは“柔軟性”

【データおよび画像提供:データスタジアム】

 来たるリオデジャネイロ五輪本大会において、手倉森誠監督はどんなサッカーで勝ちを狙おうとしているのか。実のところ、すでにその回答は出ているのかもしれない。リオ五輪とロンドン五輪における予選のデータを対比しながら、日本の指揮官が目指すスタイルとその可能性を探ってみたい。

 手倉森監督がチーム結成当初から掲げてきたコンセプトに“柔軟性”がある。「ポゼッションスタイル(ボール支配を重んじるサッカー)で育ってきた選手たちに、サッカーはそれだけでないことを伝えたい」と語ってきた指揮官は、「(点を)取れないなら取らせるな」と言って、まずリスクをマネジメントする考え方を植え付けた。カウンターを受けるリスクのあるパスをつなぎ続けるくらいなら、時にはロングボールを蹴り込むことを選択させた。同時にボールは前へ動かして、縦に加速することを意識させた。

 ここでは比較対象として、関塚隆監督が率いたロンドン五輪代表のアジア最終予選時のデータを参照してみたい。ロンドン五輪予選はホーム&アウェー方式、リオ五輪予選はセントラル方式という大会形式の違いがあるため、厳密な比較には向いていないが、試合数は同じで、傾向を読み取ることはできるだろう。それはデータ的にかなり明確な差違があるからでもある。

「ボール支配にこだわらない」リオのスタイル

 最も象徴的な数字は「ボール支配率」だろう。ロンドンが6試合平均59.8%とボールを支配して勝ち切った印象を残したのに対して(5勝1敗)、リオは49.7%と6戦全勝したにもかかわらず半分を下回った。地力の差から4−0と圧勝したタイ戦を含めての数字なので、余計に「ボール支配にこだわらない」リオのスタイルが浮かび上がる。

「パス数」もロンドンの588に対して、リオが406と大幅に少ないが、それ以上に特徴的なのは「パス前方比率」だろう。これは横パスやバックパスではなく、敵陣に向かう方向(つまり前方)に出たパスの割合。この比率が低ければ低いほどボールを大事にするサッカーであり、高ければ高いほど縦に速く攻めていくサッカーという見方もできる。リオは44.6%と半分弱のパスが前に進むパスとなった。

 また単に前に進むだけではなく、「攻め切る」スタイルも特徴だった。「ボールを奪ってからシュートまでの平均経由時間」はロンドンが20.0秒だったのに対し、リオは11.7秒と大差がある。「奪ってからシュートまでの経由パス数」も6.1本だったロンドンに対して、リオは2.9本と半分未満。奪ったボールをシンプルに前へ運んでフィニッシュに持ち込んでいくのがチームとしての狙いであり、それを実践していたことが分かる。

 一般的に“弱者の戦術”とされることの多いカウンタースタイルだが、手倉森監督の姿勢は「目指すのは(ポゼッションと縦に速いカウンターサッカーの)両方を使い分ける柔軟性を獲得すること」と一貫していた。その意味で、最終予選の内容はカウンターに寄り過ぎた面もあったように思えるが、本大会から逆算したチーム作りの中にあったと思うと見え方も変わってくる。

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