コンペの裏側、バルセロナのこだわり 知られざるカンプ・ノウの改築計画(2)

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地元の人にも好評の新カンプ・ノウ

バルセロナが推し進めているカンプ・ノウの全面改築。コンペティションの末、日建設計の案が採用された 【(C)FC Barcelona】

 バルセロナが推し進めているカンプ・ノウの全面改築は、スタジアム周辺を含めた大規模な改築プロジェクト「エスパイ・バルサ」の中核を占める。2015年6月、デザインコンペティションの募集要項が発表され、世界中から26チームの設計事務所が応募。その中から、9月に行われた書類による1次審査で日建設計を含む8チームがファイナリストに選出された。今年1月の最終審査を経て、最終的に3月8日、3チームの中から日建設計の案が採用された。

 世界中から募集を受けるにあたり、バルセロナは地元カタルーニャの建築事務所とチームを組むことを条件とした。アジアからただ1社の参加となった日建設計はジョアン・パスクアル=ラモン・アウシオと協力。そのほか、ファイナリストにはアラップ(英)&リカルド・ボフィル+ドゥ・アルキテクトゥラ、ゲンスラー(米)&OABといった欧米有数の国際企業のチームもあった。

新カンプ・ノウについて報じたバルセロナの地元紙。人々の関心の高さがうかがえる 【スポーツナビ】

 世界的なビッグクラブであるバルセロナの新スタジアムの改築ということで、コンペを勝ち抜いたデザイン案を目にしたカタルーニャの人々の反響は、かなり大きなものだったという。

「地元の新聞にもたくさん出ていましたし、普通の人に話を聞いても、みんなこのプロジェクトのことをよく知っているんです。日本の企業が勝ったということだけではなくて、デザインコンセプトなども、みんな新聞でよく読んでいらっしゃるんですよ。バルセロナの人がサッカーチームだけではなく、スタジアムも含めて非常に関心が高いというのが、勝った後によく分かりました」

 ザハ・ハディド・アーキテクツの一員として新国立競技場の旧整備計画に携わり、昨年10月に日建設計のチームに加わった、デザインパートナー・バルセロナ支店長の内山美之氏はこう振り返る。実際、現地新聞の論調も総じて好意的で、ウェブサイトでのアンケートでも8割ほどの人が「気に入っている」と答えているそうだ。「幸い、悪いうわさは全然聞かないですね。心配なくらい(笑)」と内山氏。プロジェクトリーダーで設計部門代表・ヨーロッパ代表の村尾忠彦氏も語る。

「実際に向こうのソシオ(クラブ会員)に会ったり、建築家でソシオでもある方などと話すと、とても気に入っているという方が何人もいました。こういうスタジアムが欲しかったんだと言ってくれる人もいましたね」

カタルーニャの事務所との協働作業

新スタジアムの模型の前で。(左から2番目から)勝矢武之氏、亀井忠夫社長(日建設計)、バルトメウ会長(バルセロナ)、ジョアン・パスクアル氏、ラモン・アウシオ氏 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

「多くの人が使用するスポーツ施設は社内でも大きな位置づけを占めている」と村尾氏が語るように、日建設計は数々のスポーツ・エンターテインメント施設の設計に携わっている。今回のカンプ・ノウ改築プロジェクトについては、コンペの情報が営業チームから入り、村尾氏と当時の設計部長の小松康之氏、中島究氏、そして現在の設計部長である勝矢武之氏とともに参加を決めたという。

「大きなスタジアムの情報は、私たちのグループのところに来ることが多いです。ロシアやカタールのサッカーワールドカップのスタジアムコンペへの参加の誘いも受けました。新国立競技場などもそうですね。参加を決めたら、最適なメンバーを選びます。今回は、会社の方からやるよね? という感じでしたね。私たちに聞く前から(笑)」(村尾氏)

 コンペへの参加を決めた日建設計は地元カタルーニャのジョアン・パスクアル=ラモン・アウシオと組んで、デザイン案の検討に取り掛かった。

「われわれは意匠設計のデザイナーですけれど、それ以外にも構造のエンジニアや設備環境のエンジニア、コストの管理担当など、いろいろな分野の人間がいます。一方、彼らは小さな事務所ですので、どちらかというと意匠のデザインがメインでした。技術的な部分はわれわれがすべてを見て、そこに意匠のデザイナーとしてわれわれと向こうの事務所がチームを作ってやっていたと。そこにいくつか現地のコンサルタントなども加えた、ジョイントのチームになっていました」(勝矢氏)

 地元の事務所と組むことで、コンペ案にもカタルーニャの人々の視点が大きく反映されたという。「建築をやっているとはいえ、文化も違うので、最初のすり合わせはけっこう苦労しました」と勝矢氏は回想する。

「バルセロナは世界的なクラブですけれど、まず何よりスペインのカタルーニャという地方のクラブです。『カタルーニャの人々にとって、大切なことは何なのか』というのをつかまないと、勝てる案にはならなかったと思います。現地で働いて、現地で生きてきた人たちとチームを組んで、いろいろな話をして、ご飯を食べたり試合を一緒に見ながら、いろいろと考えていくというプロセスは、カタルーニャのスタジアムを作るという点では非常に重要だったと思います」

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