マリー、“師弟”復活で打倒ジョコビッチへ 杉山愛コラム「愛’s EYE」

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ジョコビッチとの差はメンタル面

マリー(左)はレンドル氏のコンビで過去にメジャー2勝、そしてロンドン五輪の金メダルを獲得している 【写真:ロイター/アフロ】

 27日に本戦が開幕するウィンブルドン。今大会は、男子のトップ選手と新コーチの契約が目立っています。アンディ・マリー(イギリス)は元コーチのイワン・レンドルさんと再契約し、ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)はジョン・マッケンローさんをコーチに招きました。さらにスタン・ワウリンカ(スイス)はウィンブルドンの優勝経験者リカルト・クライチェクさんを陣営に加えました。

 マリーはレンドルさんについたからこそグランドスラムのタイトルが取れたと言っても過言ではないと思います。もちろん、あれだけの実力者ですから、レンドルさんがついてプレーがガラッと変わったわけではありませんが、もともと持っているものにレンドルさんが磨きをかけたと見るべきだと思います。特に精神的な部分、大切な場面やプレッシャーがかかるところでの気持ちの持ち方を習得し、それがグランドスラムのタイトルに結びついたと言っていいと思います。

 前コーチのアメリ・モレスモさんとの活動も成功していましたが、コーチ側の事情で継続は困難になり、新たにコーチを探す中で、特にメンタル的なところでレンドルさんの力が必要であると再認識したのだと思います。

 レンドルさんも、最初の契約が終わってからのマリーの姿を見ていて、ヘルプできることがありそうだという手応えがあったからこそ、今回のオファーを受けたのだと思います。プロフェッショナルな考えの方だと思うので、それが無ければ、受けていなかったでしょう。

 最近のマリーは、いい試合をしても最後にはノバク・ジョコビッチ(セルビア)に取られてしまう、という悔しい敗戦が増えています。ですから、レンドルさんを招いたのは主にジョコビッチ対策と言っていいでしょう。

 ジョコビッチがすごすぎて、マリーといえどもギャップが埋められないかのように見えますが、ディフェンス力では負けていませんし、そこまで大きな開きは無いと私は思います。ただ、大事な場面で、気持ちの部分で押されてしまうようなところが見てとれます。そこが変われば、結果も変わってくるのではないかと思います。

ラオニッチ×マッケンローの化学変化に期待

シングルスだけでもグランドスラム7勝の実績を持つマッケンロー氏は、ラオニッチになにを伝えるのか 【写真:ロイター/アフロ】

 ラオニッチの陣営には、マッケンローさんという、まったくタイプの違うコーチが加わりました。どんな化学反応が起こるか、興味深いところですね。

 似たような性格あるいはプレースタイルのコーチに相談に乗ってもらうことがプラスに作用することもあれば、まったく逆のタイプで、自分に持っていないものを持っている人にコーチを頼んでうまくいくこともあります。両極端のケースがありますが、これは明らかに後者です。絶妙なタッチや戦術的なところなど、ラオニッチが自分に無いものをプラスアルファしたいという狙いがまずはあったと思います。

 マッケンローさんは、選手時代は感覚的なプレーも見せる選手でしたが、今、解説を聞いていると理論的な考えの持ち主であることがよく分かります。解説者になりたての頃は辛口なコメントも目立ちましたが、時間の経過とともに、選手に対する彼なりのやさしさも加わってきました。最初は現役生活を終えてすぐの頃で、強気に言いたくなるところもあったと思うのですが、今は、言うことは言うにしても、選手個々の立場をふまえてコメントするようになり、表現がソフトになったように思います。

 私自身、現役時代に試合を見ていたのとはまったく違う感覚でテニスを見られるようになりました。それによって、これまで見えなかったところも見えるようになったと思います。自分自身のプレーとはかけ離れたところから、真っ白な気持ちで見れば、テニスの見方にもいろいろ切り口が増えてくるのだと思います。マッケンローさんにはコーチングの経験はなく、実際、トップ選手をコーチする難しさはあると思うのですが、そこは私は心配していません。技術面、精神面、戦術面と、いろいろな要素があるのがテニスですから、そこを見る視点の幅、テニスを理解する幅は、解説者として過ごした年月で積み重ねたものがあると思います。

 そもそも、あれだけの一流選手ですから、コーチング哲学としてもしっかりしたものをお持ちだと思います。それがラオニッチを通してどんな形で見られるか、ラオニッチにどんな変化をもたらすか、すごく楽しみです。
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