捕手は固定すべき? 併用すべき? 併用にメリットも名捕手は生まれず

ベースボール・タイムズ

メリットは「頭の休養」

日本ハムの場合、大谷(左)の登板時には大野(右)がマスクをかぶり、有原の時には市川がかぶる、といった併用が定着している 【写真は共同】

 正捕手固定か、それとも併用か。広島、巨人などで捕手として活躍した西山秀二氏は、捕手併用について「頭を休ませることができるのが大きい」と指摘する。

「まず、疲労が軽減されるのは間違いない。捕手は他のポジションに比べて責任も負担も大きい。その中でうまく休みながら試合に出ることができれば、いいコンディションを維持できる。肉体的なことよりも、特に頭を休ませることができるのが大きい。気持ちもリフレッシュして切り替えられる」

 併用のメリットを認める西山氏だが、理想は「不動の正捕手がいること」と言う。そして、捕手併用のチームが増えている現状について、「全試合を任せられる捕手がいないから」と嘆く。

「少し前の阿部(慎之助)や谷繁(元信)のような、全試合を任せられるような捕手が、今の日本にいない、もしくは少ないということやと思う。そのレベルに成長しそうな若手もなかなか見当たらん。だから結果的に打てる捕手が使われている。勝っているチームの捕手は守備がしっかりしていれば使ってもらえるけど、下位のチームはどうしても打てないと使われない傾向にあるからね。打って守れて、という捕手がいればずっと使われるはずです」

超一流は5人だけ

 捕手唯一の三冠王に輝いた野村克也、巨人のV9を支えた森昌彦、西武黄金期の伊東勤、ID野球の頭脳として働いた古田敦也、NPB最多の3021試合に出場した谷繁元信。この5人を「超一流の捕手」と西山氏は敬礼する。その一方で、「5人しかいない。一流の捕手は多くいたけど、長い歴史の中で“超一流”と言える捕手は少ない」と語る。

「それだけ育てるのが難しいポジションだということ。捕手は2軍の試合にどれだけ出てもダメ。1軍の試合に出ないと成長しない。使いながら育てるという難しさを各球団は感じていると思います」

 西山氏が挙げた5人を筆頭に、かつて、強いチームには必ずと言っていいほど強烈なリーダーシップを持つ正捕手が存在した。野村氏の「優勝チームに名捕手あり」の言葉にあるように、それが優勝するための条件に挙げられることも多かった。だが、その“名捕手”は簡単に育てられるわけではないことは確かだ。

 では、今季はどうか――。現在、ソフトバンクと広島が、それぞれ首位を快走中だが、ともに捕手併用のチーム。これが新たなトレンドの一つになるのか。それとも、正捕手に固定された男たちが率いるチームが巻き返すのか。今季の“正捕手ランク2位”だった巨人・小林誠司が骨折で離脱したのは残念だが、まだまだシーズンは長い。「扇の要」たちの今後の働きに注目しながら、ペナントレースを楽しみたい。

(文・三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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