室伏広治が未来へ残したマイルストーン 後継者不在のまま一線を退く“鉄人”
「高みを目指すには体力の限界」
日本の投てき競技を長らく引っ張ってきた室伏広治が、ついに第一線を退く 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
1投目が64メートル74、2投目も64メートル02。室伏のベストは、日本記録の84メートル86だ。2年前のこの大会で73メートル93の記録を残したのを最後に競技会から離れていたので無理もないが、比較にならないほど記録は伸びなかった。予選突破を懸けた3投目は、無情のファウル。結果次第では5大会連続の五輪出場という偉業を成し遂げる可能性もあったが、リオ行きは絶望的となった。
決勝進出者が競技を続ける中、室伏は会場のフラッシュインタビューをはじめとする取材に応え、「結果としては64メートルということだけど、精一杯やった結果かなと思う。短い準備期間だったということはあるけど、五輪や世界選手権でメダルを狙うような高みを目指すということは、体力の限界で難しいと感じている。トレーニングは日常的にするけど、それと高みを目指すことは1つレベルが違うこと。今後については、体を動かせる範囲であったり、後輩に刺激を与えるためにやったりとかいう気持ちは多少ありますけど、今回が一つの区切りだと思っている」と、競技者として第一線を退く意向を明かした。
レジェンドに用意された第100回記念大会
24日の日本選手権で投てきした直後の室伏。全盛期の記録には遠く及ばなかった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
それでも2年ぶりに出場したのは、5大会連続の五輪出場を目指すというだけでなく、今大会こそが最後の挑戦にふさわしいと考えたからだろう。室伏は静岡県沼津市の出身だが、小中学生の時期を豊田市で過ごし、千葉県の成田高校卒業後に中京大へ拠点を移すなど、今大会の開催地・愛知県は、長い時間を過ごした場所だ。そして、日本陸上界のレジェンドに似合う、第100回記念大会。格好の舞台だった。