ハーフナーを成長させたさまざまな出会い 鳥栖とフィテッセ、思い出深い2人の恩師

中田徹

チームトップの16ゴールを記録

今季ハーフナー(右)は16ゴールを記録。チームのエースストライカーとして活躍を見せた 【Getty Images】

 今季のハーフナー・マイクはADOデンハーグのエースストライカーとして活躍し、チームトップの16ゴールを記録した。彼は決して「良かった」とは言い切らず、「良かった方ですね」と言葉を選んで今シーズンを振り返った。

「もうちょっといけても良かった。20点ぐらいは取りたかったし……。そういう意味じゃ、ちょっと物足りない(シーズンだった)かなという感じがありますね。肋骨を骨折するまで、良いペースでゴールを取っていたのですが、それから勢いがなくなりました」

 1年前、ハーフナーはまだヘルシンキにいた。スペインの労働ビザを取得できず、コルドバとの契約を解除した彼は、しばらく“所属クラブなし”という状況が続いていた。そこで、コンディショニングに重点を置き、フィンランドリーグに向かった。再びひのき舞台に戻れるという保証はなかった。

「ある意味、自分はヘルシンキで詰まっていました。ADOデンハーグは、そこから抜け出す道を与えてくれたチームなので、感謝しかない。だから、お返しをしたいという気持ちがありました」。今季のADOデンハーグは残留争いに巻き込まれることなく、11位でシーズンを終えた。クラブの規模を考えればまずまずの結果だ。貴重なゴールを決め続けたハーフナーは、しっかりADOデンハーグにお返しをしたのだ。

サッカーが結んだ多くの縁

現在フィテッセでプレーする太田(写真)とは年代別日本代表時代からの顔なじみだ 【Getty Images】

 相手チームには、かつてハーフナーとフィテッセで共にプレーした仲間もいた。幼い顔立ちをしていたマルコ・ファン・ヒンケルはチェルシー、ミラン、ストーク・シティを経て、逞しい男となってPSVへ。デービー・プロッパーもPSVの中心選手として、オランダリーグ優勝と、UEFAチャンピオンズリーグでのベスト16進出の立役者となった。

「マルコもデービーも、体がだいぶ太くなりましたよね。デービーはうまいし、ボールを取られないし、今ではオランダ代表にも選ばれ続けている。やっぱり、一緒にプレーした選手たちが育っていくのは、見ていても楽しいですね」

 そこから、サッカーが結ぶ縁の話になった。太田宏介(フィテッセ)は年代別日本代表チーム時代からの仲良しだ。ワールドユース(現FIFAU−20ワールドカップ)で一緒だった内田篤人、香川真司、田中亜土夢や横浜F・マリノスの後輩、小野裕二に加えて、Jリーグに復帰した安田理大との思い出も尽きない。

「狭い世界と言っては何ですが、いろいろつながっています。すごく昔ですが、高校1年の時に(当時所属していた)マリノスユースが兵庫の『滝二杯』という大会に参加しました。その時に滝川第二高の選手が各チームを回って交流したのですが、マリノスユースに来てくれたのが岡くん(岡崎慎司、当時高校2年)でした。岡くんと会ったのは、その時が初めて。(岡崎が成し遂げた)レスターのプレミアリーグ優勝はすごいですよね。あれは本当に、自分のことのようにうれしかったです」

 ハーフナーは現在29歳。太田は「まだまだ俺のキャリアはこれからです」と意気込んでヨーロッパへ渡った。しかし、ハーフナーは「まだ一応29歳か。もうちょっとできるかな」とベテランのようにつぶやく。彼の同期には華やかに活躍する選手も多いが、コンサドーレ札幌U−15、マリノスユース、ワールドユースで一緒に戦った仲間の中には、けがもあり、すでにスパイクを脱いだ者もいる。

「そう考えると、いろいろ良い出会いがありました。そういう出会いをチャンスにしてモノにする選手もいれば、そういった出会いがなく消えていく選手もいる。そういう意味では、俺は出会いに恵まれているかなと思います」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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