坂本勇人、好調の秘けつは「左足と間」 通算2480安打、立浪和義氏が解説

週刊ベースボールONLINE
 チーム打率2割4分5厘と苦しむ巨人打線で主将の坂本勇人が孤軍奮闘している。ここ数年は打率3割を切るなど、打撃で苦しんでいたが、今季はここまで打率3割2分3厘、14本塁打、41打点で不動の3番打者として活躍を続けている。好調の要因について、歴代8位の通算2480安打を放った立浪和義氏に解説してもらった。

連続写真:坂本の打撃フォーム

【写真:BBM】

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立浪氏が解説するように足の動きが“かく”ような動きになっている 【写真:BBM】

今季は「間」がつくれている

 坂本選手はここ何年かのうっぷんを吹き飛ばすように、素晴らしい成績を残しています。坂本選手は、足を大きく上げ、始動が早いタイプです。足を上げるタイプというのは、着いたときに前に突っかかる可能性もありますが、坂本選手のいいところは、ゆったりとした「間」がつくれ、ボールをしっかりと自分のポイントまで引き寄せることができている点です。 
 
 その秘密が上げた左足で、すぐ前に運んでいくのではなく、足をかくようにする“遊び”があり、回すように前側に持っていくことで、間を作れています。坂本選手は、入団当時からこのバランスが非常によかったのですが、少し体がベース寄りにかぶって窮屈になり、多少インサイドを扱いづらくなっていました。それが今年は本来のフォームに戻り、軸足にしっかり重心を乗せ、ゆったりとした間もできています。おそらく、より高いレベルを求める試行錯誤のなかで迷いが生じていたのでしょうが、いいバッターの技術は共通点が多く、実はシンプルなものです。坂本選手も不振に苦しむ中で立ち止まって考え、本来のスイングを取り戻したのではないでしょうか。

今季は押していくような意識

 現在、内角を苦手とするバッターが増えていますが、坂本選手は非常に内角を打つのがうまいバッターです。インサイドを狙うのは、昔ならグリップを体の近くに通すようなスイングでしたが、どうしても窮屈だし、詰まってしまいます。坂本選手は、厳しい内角球でもしっかり内側からとらえ、しかもバットの芯に当てるのがうまいから長打も出ます。要はどのような形でもバットの芯に当たればファウルにならず、そこそこの打球がいくものなのですが、坂本選手は器用なので、詰まると思ったら、自然にヒジをたたみながらスイングし芯でとらえることができています。持って生まれた才能で片付けたらいけませんが、素晴らしい野球センスです。 
 
 序盤戦のスポーツ紙の記事で、点ではなく、面の意識を持つようになった、という話を読みました。本来、引っ張り系のバッターですし、面で打つタイプではないように思いますが、意識のうえでの引き出しが増えたということかもしれないですね。面で打つというのは、たとえば埼玉西武の秋山翔吾選手のようなタイプで、グリップから出していくところは同じですが、ホームランバッターが小さな支点で一気にバットのヘッドを走らせるのに対し、多少押していくような意識でのスイングなので、どのコースでもとらえやすくなります。長打は減りますが、逆方向にもヒットが打てるということです。いずれにせよ、これからの坂本選手に注目ですね。

立浪和義氏プロフィール

【写真:BBM】

1969年8月19日生まれ。大阪府出身。PL学園高からドラフト1位で88年中日入団。1年目からショートのレギュラーをつかみ新人王、ゴールデングラブに。その後、95年から97年とセカンド、2003年にはサードでゴールデン・グラブに輝き、96年にセカンド、04年にサードでベストナインを手にしている。09年限りで引退。通算2586試合2480安打、135盗塁、打率2割8分5厘。487二塁打は日本球界最多記録でもある。
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