冷笑を喝采に代えたヤングジャパン ラグビーアジア選手権で優勝

斉藤健仁
「これが本当の日本代表なのか」とも冷やかされた“ヤングジャパン”が28日、ホームの東京・秩父宮ラグビー場で、香港代表に59対17で逆転勝ちし4連勝を達成、見事、アジア王者に輝いた。

昨年のW杯出場選手はゼロ

アジア選手権で優勝した日本代表。FL金正奎は鋭い動きで攻守に活躍した 【斉藤健仁】

 2019年ワールドカップ(W杯)に向けたスタートとしては、正直、不安は隠せなかった。

 2016年春のラグビー日本代表のカレンダーは例年とは違っていた。昨年のW杯で3勝を挙げたエディー・ジャパンのメンバーを軸としたサンウルブズが2月からスーパーラグビーに参入。日本代表メンバーの中には海外のスーパーラグビーチームやイングランドでプレーした選手もおり、すでに代表辞退を表明している選手もいた。

 そのため、例年通り、4月から始まったアジアのトップ3カ国対抗である「アジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)」に日本代表は、サンウルブズで出場機会の少ない選手、トップリーグの若手を中心に大学やU20年代の有望な選手で臨んだ。「結果を出すことを重視して強化していきたい。(6月の)スコットランド戦に向けたセレクションとして将来性だけでなく、現時点で力のある選手をピックアップした」(中竹竜二HC代行)

短い準備期間で韓国、香港を圧倒

東海大2年のアタアタ・モエアキオラは香港戦で2トライを奪った 【斉藤健仁】

 だが、その不安はすぐに払拭される。4日しか準備がなかったにも関わらず、4月30日のホームで行われた韓国代表戦は85対0で圧勝し勢いに乗る。続く5月7日のアウェーの香港代表戦は38対3で勝利、さらに5月21日のアウェーの韓国代表戦は60対3、そして今回のホームの香港代表戦も一時は0対10とリードされたものの、終わってみれば8トライを挙げて59対17で勝利し、見事に4連勝でアジア5カ国対抗時代から通算9連覇を達成した。

 アジアレベルの試合ではあるが、エディー・ジャパン時代とさほど遜色ない結果を残した。

 どうして短期間でまとまり、力を発揮できたのか――。

SO中村「上しか見ていないのが、このチームの良さ」

SO中村亮土「失うものがなかったので思いっきりやるだけでした」 【斉藤健仁】

 まず、指揮官の中竹HC代行は言う。「みんなハングリーだったんじゃないですかね? 『準備期間が少ない』、『本当のジャパンなのか』と言われて、その悔しさを晴らそうと必死になるというメンタル面が大きかった。また若手は高いレベルの選手に引き上げられると同時に、追いつき追い越したいという気持ちが、チームを一つにした」

 SH内田啓介主将は「みんなが、(エディー・ジャパン時代とは違って)エリート集団ではなく、2番手の選手が多く、『(日本代表が)こんなやつらでいいのか』と言われていた中で団結は早かった」と境遇面を理由に挙げれば、SO中村亮土も「やっている方は日本代表でしたが、個々を見たら、失うものがなかったので思いっきりやるだけでした。上しか見ていないのが、このチームの良さだと思った」と言うように、2019年のW杯に向けてより成長したい、強くなりたいという強い思いがチームを団結させた。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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