じっくり前進、高橋純平がプロ初登板へ 鷹詞2016〜たかことば〜

田尻耕太郎

昨秋ドラフトの目玉としてソフトバンクに入団した高橋純平(左)、プロ入り後はゆっくりと準備を重ねてきた 【写真は共同】

 注目の新人、高橋純平がついにプロ初マウンドに上がる。今週末の27日からのウエスタン・広島3連戦(タマスタ筑後)の中で、2イニング程度を投げるのが有力とのことだ。

 じっくり、ゆっくりと前進してきた。今月4日、初めて捕手を座らせて投げた。その後11日に打撃投手、18日には実戦形式での投球を行って準備を整えた。

 それまでは特段大きな動きは見られなかった。昨年夏に左ふくらはぎの肉離れを起こしたことで左右のバランスにずれが生じたために、プロ入り当初からソフトバンクは体作りを最優先にスロー調整で育成する方針を打ち出していた。それに加えて今年1月の新人合同自主トレ初日から左脛(すね)に違和感を訴えたことで、さらにペースダウンをしていた。2月のキャンプ中もずっと別メニューで下半身や体幹の強化トレーニングばかり。キャッチボールをたまにするだけで、結局キャンプ中にブルペン入りすることは一度もなかった。

 高橋の動向がメディアで報じられることは少なく、ヤキモキしたファンも多かっただろう。昨秋ドラフトの目玉選手で福岡ソフトバンクのほかに中日、北海道日本ハムも1位で競合したほどの実力者にしては、あまりに不思議なほど静かな日々を過ごしてきた。

スター軍団のなかで焦らず着実に

 期待の黄金ルーキーといえば、特に1、2月には連日メディアに追い回されるのがプロ野球界の日常風景である。

 本来、ドラフト1位ルーキーならば、地味なトレーニングであってもネタにはなる。また、高橋はメディア対応もよく、いわゆる「字になる」選手だ。

 だが、報じる側にも「枠」や「人数」など制限がある。ソフトバンクは連続日本一のスター軍団だ。柳田悠岐や内川聖一、松田宣浩らを差し置いて新人ばかりを見ているわけにはいかない。そして松坂大輔という大きな存在もいる。

 周りが騒がしければ、高橋も焦っただろう。ましてや肩や肘は元気なのだから、多少の無理をすればもっと早く投げられたはずだ。しかし、バランスを崩したまま投げ続けることが、決してプラスになるはずがない。

 高橋はツイていた。ソフトバンクは最適の環境だった。戦力豊富のためチームからはスローペースを容認され、人気球団でありながら、しかしそれがゆえに衆目にさらされることもなく、階段を一歩ずつ上がってこられた。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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