曖昧な評価に終わった川島永嗣の挑戦 降格の危機から救えず、退団は決定的か
クラブは20シーズンぶりの降格が決定
1月にダンディー・Uに加入した川島。チームを降格の危機から救うことはできなかった 【写真:ロイター/アフロ】
まずは、破産宣告を受けて2012—13シーズンに4部降格を余儀なくされた名門レンジャーズ。2部優勝を果たして5シーズンぶりの1部昇格を決めた。続いて、そのトップリーグで5連覇を達成したセルティックが、ブレンダン・ロジャーズの新監督就任を発表。リバプールでの冒険は昨年10月の解任で志半ばに終わったが、その後も引く手あまただった実力派青年監督がやってくる期待感に、ファンは大いに沸いている。
両ビッグクラブが歓喜に酔いしれ、伝統の「オールドファーム」ダービーの復活を誰もが喜ぶ一方で、5月2日のダンディー・ダービーに1−2で敗れ、実に20シーズンにわたって守ってきた“プレミア”の地位を失ったのが川島永嗣の所属するダンディー・ユナイテッドだった。
なにしろ、昨年の10月からずっと最下位にいたチームである。もし大逆転で残留できていれば、イングランド・プレミアリーグで14−15シーズンにレスターが見せた「大脱走(リーグ終盤を7勝1分け1敗で乗り切り残留を決めた)」と並ぶ奇跡と賞賛されたことだろう。
実際、どん底だった年末までの20試合(2勝4分け14敗、17得点39失点)と比べ、年明け以降の18試合(6勝3分け9敗、28得点31失点)は明らかに結果が向上していた。11位キルマーノックに追いついて順位をひとつでも上げられれば昇降格プレーオフに望みをつなぐことができたのだが、現地紙『クーリエ』の記者に「これまで見てきた中で最低のユナイテッド」と書かれてしまったチームには、レスターのごとく奇跡をつかみきる底力はなかった。
川島の奮闘は一定の評価を得る
たとえば2月13日のハミルトン戦(0−0)では、ラスト4分でPKの危機を迎えるも、相手のキックを読み切って見事にチームを救い、『デイリー・レコード』紙が「Kawashima the hero」と見出しを打った。ともに敗れはしたが、4月のインバーネス戦(0−2)や、前述の降格決定試合(5月2日ダンディーFC戦、1−2)でも「トップクラス」と評されるセービングをいくつか披露。リーグ戦ではなかったが、PK戦でハイバーニアンに敗れた4月の国内カップ戦準決勝でも高い集中力を示し、延長後半のビッグセーブもあって120分間をゼロに抑えた川島を「求められた仕事をすべて遂行した」「プロフェッショナルの仕事」と評価したのは『BBCスポーツ』だった。
その奮闘ぶりは確実に一定の評価を得ており、1月には「14」もあった11位キルマーノックとの勝ち点差を「5」まで詰めていた4月上旬には、『イブニング・テレグラフ』紙が「残留すればダンディー・Uは川島と契約を延長するだろう」と記事をつづり、その理由を「守備の貢献と仕事に取り組む姿勢をコーチ陣が評価した」からだと記していた。
補強の効果を疑問視する声も
一定の評価を得た川島だが、同じくらい辛口の評価もあった 【写真:ロイター/アフロ】
『BBCスポーツ』では、クラブOBの元GKハミシュ・マクアルパインが、DFのギャビン・ガニングとギー・デメル、FWのフローラン・シナマ・ポンゴル、そして川島という「経験豊富なフリートランスファー・カルテット」が「誰も私を感動させなかった」と酷評。地元紙『クーリエ』も川島に対し、「なぜ彼があれほどの代表キャップを獲得したか分かる瞬間もあったが、そうでないこともあった」と微妙な評価。降格後は「予算縮小に合ったより良い代役を見つけるべき」と記事を結んでいる。
一方、『デイリー・レコード』紙は大半の新戦力に「Failure(=失敗)」の烙印(らくいん)を押す中、川島にだけは「パーテライネンのマシだった契約選手」として「Decent(=妥当)」のジャッジ。ただ、寸評の最後にはこうも添えられていた。「しかし、彼の前にいる悲惨な守備陣の助けはなかった」と。