ホンダF1総責任者・長谷川祐介に聞く 「すべてを向上させないと勝てない」
マクラーレンのチーム代表エリック・ブーリエと話す長谷川祐介(左) 【Honda】
ホンダがパワーユニットを供給するマクラーレンは、第2戦バーレーンで新人ストフェル・バンドーンが10位に入った以外、まだ入賞がない。このインタビューは開幕戦メルボルンで行ったものだが、ホンダの苦悩と目指す道が分かるだろう。
昨年はあちこち壊れていた
久し振りに帰ってきて、ものすごく大変です。重要なのは技術的な問題ではなく、ホンダとしていかなる目標設定をし、どうやって実現する計画を立てるかということです。達成しなければならないレベルを設定し、そのために必要なリソースをそろえる。それが私の役割だと考えています。方法論は現場の技術者たちが実際に考えてくれればいいのですが、必要とあらば私も参加するつもりです。
――昨年はF1復帰1年目。何が足りなかったか聞き及んでいますか?
昨年は本当に多くの問題を抱えていました。何もかも問題だったような気がします。基本的なエンジンの骨格とか耐久性もありました。パワーユニットの取り付け方法だとか、そのオペレーションだとか、すべての領域です。去年はあちこち壊れています。エンジン本体が壊れたこともあります。それは、最大限の性能を引き出すレベルを探れていなかったということです。今年はよりレベルアップしなければいけない。それが開幕戦に来て受けた印象です。
熱回生を冬の間に改良してきた
これまでは外野から見ていたので、ハイブリッドやターボチャージャーがこれほど重要だとは思っていませんでした。ホンダは市販のハイブリッド車を作っていますので、減速回生でエネルギーを蓄え、それをアドオンするという基本的なことは分かっていましたが、排気(熱)回生に関しては十分理解していませんでした。エンジンの排気エネルギーを電気に変えて使うというところにどのくらいのメリットがあるのか分かっていなかった。その取り分がすごく大きいということを昨年理解し、冬の間にそこを改良してきました。
――最近はパワーユニットが複雑になって来ました。
電気を生むということでいえば、排気エネルギー側は制限がないのでいくらでも取れるということですが、簡単ではなかったです。難しかったのはターボチャージャーのマネージメントですね。排気エネルギーをいかに効率良く電気に交換するかという点がポイントでした。ターボチャージャーは大きい方が良いと説明されていますけど、本当に径が大きい方が良いのか、もしかしたら別の方法があるのかも知れないとも考えています。その他には、MGU(エネルギー回生システム)の置き場所とかはまだ最適ポイントを見いだせていないかもしれません。
――勝つには道は遠そうですか?
エネルギー出力も、回生も、耐久性も、燃費も、すべて向上させないと勝てないと分析しています。優先順位を付けて対処しています。難しいのはターボチャージャーが付いていることです。MGU−K(運動エネルギー回生システム)の出力は120キロワットとレギュレーションで決まっています。それ以外の部分はエンジン出力に頼る部分が非常に大きいということも理解できました。
ホンダには優秀な技術者がそろっている
最初はKERSも60キロワットだったので、ドライバーはその効果をほとんど感じなかったようですね。KERSを使っていないチームの方が成績も良かった。ですから、技術としては重要ですが、戦闘力の差にはならないのかなあって思っていました。それが全然違ったので新鮮でした。差がつかなければハイブリッドを採用する意味がないですけどね。第三者的立場に立っているときには理解していませんでした。
――使い方も重要ですね。
使用するタイミングがすごく複雑になっているので、レース前のシミュレーションが非常に重要になっています。今年のレギュレーションではレースがスタートするとドライバーに任せるしかないので、エネルギー量をステアリングに表示して、あとは自分で考えて運転しろということです。マクラーレン・ホンダのドライバーは経験豊かなので、その点は有利だと思います。
――残された課題は何でしょう?
先ほども言いましたが、すべての性能を向上させることです。出力も信頼性も耐久性も燃費も。それができて初めて勝利が見えてくると思います。まだまだ道は遠いですが、優秀な技術者がそろっているので不可能ではないと思っています。
(motorsport.com/赤井邦彦)
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