南米ベネズエラが野球大国であるわけ 大人と子どもが描くゴールはMLB
15歳の少年に注がれる熱視線
投球練習を行うカルロ・セイハス(右)。数年後にはMLBで投げる姿が見られるかもしれない 【撮影:龍フェルケル】
「僕が生まれながらに投手としての才能を持っているって? みんながそう言うなら、そうなんだと思うよ」
185センチ、85キロと大柄な体に反し、その少年はあどけない口調で話した。カルロ・セイハス。投手歴3年の15歳にして最速球速91マイル(約146キロ)を誇るこの右腕は、世界の有望株がメジャーにアピールするための舞台(インターナショナル・プロスペクト・リーグ)でも好投し、契約解禁となる来年に向けてスカウトの注目を集めている。
「彼はピッチングというものをわかっていて、頭の良さを感じさせる。打者に向かっていく姿勢が素晴らしく、いい投手になる」
投球練習を見守っていたブレーブスのスカウト、オスカル・アルバラドはほれぼれした顔で話した。
「カルロ(セイハス)はマイナーで4、5年経験を積んだ後、メジャーリーグに昇格できるだろう」
将来をそう見据えるのは、投手コーチとして1年半、セイハスに基礎から教えてきたホルヘ・ロペスだ。ロペス自身はシンシナティ・レッズ傘下の投手としてプレーし、引退後は同球団がドミニカ共和国、ベネズエラに所有するアカデミーでコーチとして教えてきた。
「28」→「4」に減少したMLBアカデミー
首都カラカスではスラム街が広がっているエリアもある 【撮影:龍フェルケル】
「この国には素晴らしい才能を持った子どもたちがたくさんいるので、より良い機会を提供してあげたいと考えてアカデミーをつくった」
2010年、人口100万人以上のマラカイにAQスポーツ・エージェンシーを設立したアレックス・キロス監督がそう語る。ホワイトソックスのマイナーで3年間プレーし、ケガで引退した同監督は内野手だったセイハスが入団テストに来た際、キャッチボールで軽やかに投げる姿を見て「投手のほうが、未来が開ける」と転向させた。
このアカデミーではロペスのように腕のあるコーチを集め、地元マラカイを中心に国内全土からスカウトした14〜16歳の少年約30人を鍛え上げている。今夏、福島県で行われる15歳以下のW杯にベネズエラ代表として来日予定のレオ・カジェス(遊撃手)、ディエゴ・カルタバ(捕手)も所属選手だ。
彼らがメジャー球団と入団合意に至った際、契約金の10%がアカデミーに入り、所属選手の道具やフィールドの維持費、寮費や食事代に充てられる。契約金は1万ドル(約110万円)前後の場合もあれば、セイハスは3万ドル(約330万円)以上になるとAQスポーツ・エージェンシーは見ている。契約金から受け取る割合はアカデミーによって異なり、30%のケースもある。