韓国ロッテがドラえもんとコラボ イベントから見える韓国の社会事情

室井昌也

ドラえもんは人気マスコット

球場前広場で24日まで行われた「ドラえもんひみつ道具100展」には子供や女性を中心に多くのプサン市民が訪れた 【ストライク・ゾーン】

 人気回復と社会貢献を目的にしたロッテとドラえもんのコラボレーション。しかし単なるコラボではなく、ユニホームにチームキャラクター以外のデザインを施すということに周囲の反発はなかったのか。キム・チーム長は「日本であればユニホームは神聖なものと思う選手やファンも多いと思います。韓国にもそういう面はありますが、韓国ではドラえもんに対する思い入れが日本ほど強くないことが、むしろスムーズに理解されました」と説明する。

「ドラえもんについて韓国では、いちキャラクターとしては広く認知されているものの、アニメのストーリーや登場人物についてはあまり知られていません。ドラえもんマニアで知られる俳優のシム・ヒョンタクさんが、“ドラえもんは昔、黄色くて耳もあった”というようなエピソードをテレビで話したことで最近、少しずつ知られるようになったくらいです」

 韓国人にとってのドラえもんは漫画の主人公というよりも人気マスコット。「日本人にとってのスヌーピーみたいな存在だと思います」と別の球団関係者は説明する。ドラえもんユニホームを着てプレーする選手たちは、そのデザインを特に気にする様子もなく、チームのムードメーカー、ソン・ヨンソク内野手も「特に違和感はないです」と話した。

ドラえもんが100体並ぶ光景も

チアリーダーも袖を通すドラえもんユニホームは発売開始1時間で一次販売分が完売。増産を繰り返している 【ストライク・ゾーン】

 今月の釜山サジク球場前にはずらりと100体並んだドラえもん目当てに、平日は下校途中の女子高生、週末は家族連れやカップルでにぎわった。またロッテナインがドラえもんユニホームを着た23日のKIAタイガース戦は2万1288人が来場。ロッテ球団の思惑通り、場内は以前のような熱気に包まれた。

 球場に訪れた地元市民と球団・イベント関係者に「ドラえもんの道具の中で欲しいもの」について聞いてみた。するとやはり漫画の内容には詳しくない様子で「あまり知らない」という回答が最も多く、次に挙がったのは、「どこでもドア」や「タケコプター」ではなく、「アンキパン(文字を転写して食べると暗記できるパン)」だった。「覚えることが多くて大変だから」とこぼす女子高生や会社員の言葉に、韓国が学歴偏重社会であることを実感させられた。

 今年ロッテは土曜日のホームゲームごと、今後10試合で「ドラえもんといっしょファミリーデー」を開催。選手はドラえもんユニホームを着用する。次回は4月30日(土)のNCダイノス戦で行われる予定だ。

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著者プロフィール

1972年東京生まれ。「韓国プロ野球の伝え手」として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。また編著書『沖縄の路線バス おでかけガイドブック』は2023年4月に「第9回沖縄書店大賞・沖縄部門大賞」を受賞した。ストライク・ゾーン代表。

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