20年目の今も「全員がライバル」 球界野手最年長・井口資仁の現在地

中島大輔

不惑を超えても衰えぬ闘志

 プロ野球の2016年シーズンが始まり、ドラフト1位ルーキーが球界を盛り上げている。阪神の高山俊、オリックスの吉田正尚がリードオフマンとして打線をけん引し、東京ヤクルトの原樹理、巨人の桜井俊貴、横浜DeNAの今永昇太は開幕ローテーションに入った。

 新たな息吹が芽生える一方、球界の変化を示すのが「22→8」という数字だ。昨季は22人存在した40代選手が、今年開幕時点で8人に減少したのである。そんな中、20年前に福岡ダイエー(現ソフトバンク)からドラフト1位で指名された井口資仁は、42歳を迎える今年、球界最年長野手としてプレーしている。

(映像制作:ZON)
「40歳を超えてどこまでできるかが毎年の課題で、トライしているところです。やっぱり45歳くらいまではプレーしたいな、と」

 走攻守そろった内野手として盗塁王を2度獲得し、メジャーリーグに移籍した05年にはホワイトソックスの正二塁手としてワールドシリーズを制した。09年に千葉ロッテに移籍し、翌年のチームの日本一に貢献、13年には日米通算2000安打を達成している。「レジェンド」と言われるような実績を積み上げたが、その闘志が衰えることはみじんもない。

「今年入った平沢(大河)くんは自分の子どもと2歳しか変わらないですから(笑)。それでも子どもっていう感じではないですね。僕は常に全員がライバルだと思っているんで、彼にも絶対負けたくない」

パ・リーグが大好き

練習でも声を出し、一回り以上離れた後輩たちを鼓舞していた井口 【赤坂直人/スポーツナビ】

 渡米後にウエイトトレーニングで身体を大きくし、30歳以降は体幹を鍛えてケガをしにくくなった。高い技術とプロ意識で第一線に立ち続けている。

「日本球界と米国で『何が違うんですか?』と聞かれるんですけども、野球として変わらない。ただ、僕がプロに入ったときよりもパ・リーグが盛り上がっていることは間違いないです(笑)。球場が大きいので、パワー系のバッターとパワーピッチャーが本当に多い。僕の大好きな野球がパ・リーグです」

 00年代前半には松坂大輔(当時西武、現ソフトバンク)の剛球を打ち返し、メジャーから復帰後はダルビッシュ有(当時北海道日本ハム、現レンジャーズ)や田中将大(当時東北楽天、現ヤンキース)と対峙した。今は大谷翔平(日本ハム)や則本昂大(楽天)、菊池雄星(西武)と好勝負を繰り広げている。

 若手の頃からベテランになるまで活躍を続け、気づけばレジェンドと評されるまでになった。誰よりも長くプレーし続けることで、見えてきた世界がある。そうした財産をチームに還元できるから、球界最年長野手になってもその力を求められるのだ。

 迎える20年目のシーズン、井口はどんな活躍を見せるのか。ルーキーが羽ばたく中、ベテランだから披露できるプレーもじっくり味わいたい。
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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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