“カー娘”銀メダルの鍵は「新スイープ」 エース本橋休養が若手飛躍の起爆剤に

高野祐太

銀メダル獲得の快挙を成し遂げたLS北見。左から藤澤、吉田知、鈴木、吉田夕、本橋、リンド・コーチ 【写真は共同】

 カーリングの女子世界選手権(カナダ・スウィフトカレント、現地時間19日〜27日)で日本代表のロコ・ソラーレ北見(LS北見)が五輪と、世界選手権を通じて日本勢初のメダルとなる銀メダル獲得の快挙を達成した。

 今大会で2018年平昌五輪に出場するための五輪ポイントを12点獲得。14年ソチ五輪では韓国が9ポイントで出場を果たしており、日本女子は来季の世界選手権を待たずに、平昌への切符を大きく手繰り寄せた。

ハイレベルな戦いを展開

 あれよあれよという間の躍進だった。予選リーグから4人ともが高いショット成功率をはじき出した。リードの吉田夕梨花はウイックという繊細ショットを次々決め、セカンドの鈴木夕湖はブラシで氷をはくスイープを持ち前のフィジカルで力強くこなしてコントロールし、吉田姉妹の姉・知那美はサードの中で予選1位のショット率。スキップの藤澤五月は要所で頼れるショットを決めた。

 準決勝は、スキップのアンナ・シドロワのショットがキレキレだったロシアを7−5で堂々と撃破。スイスとの決勝は6−9で敗れはしたが、8エンドの藤澤のヒット&ロール(=相手のストーンをはじき出して自分のストーンを良い位置に移動させる)や9エンドの藤澤のフリーズ(=相手のストーンにぴたりと付ける)の連発など、繊細なコントロールが必要なハイレベルな戦いを繰り広げた。

エース本橋の休養をチャンスに

 チームの絶対的支柱であるはずの本橋麻里を昨秋の長男出産で欠いていて(リザーブで帯同)、この快挙という事実に驚かされる。本橋は06年トリノ、10年バンクーバーの両五輪を戦った、日本でも指折りの実力者なのだ。

 ところが、長野五輪代表で鋭いテレビ解説でもおなじみの敦賀信人さんは、むしろそれが、24歳の鈴木、吉田知、藤澤、22歳の吉田夕という若い4人を成長させたのだと指摘する。

「今まで本橋さんに頼っていたメンバーが、今季は彼女が出られないと分かってからは、彼女がいないから悪くなったとか、彼女がいたからここまで来られたと言われたくない、という強い気持ちが生まれたと思うんですよね。彼女が少し離れたことによって逆にチームが一つになったと思います」

 本橋からの脱依存という成果は頼もしい。だが、この成長ぶりも、バンクーバー五輪の後に本橋が地元の北海道北見市常呂町に戻って結成したLS北見に、5人が集ったからこそのことなのだ。

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著者プロフィール

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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