五輪イヤーの大阪桐蔭には何かが起こる!? 土佐の鋭い立ち合いを押し戻す横綱相撲

楊順行

怠りなかった防御率1.00の尾崎対策

チーム打率トップの大阪桐蔭の強力打線は、3回に3番・吉沢のタイムリー二塁打で先制すると、この回に一挙3得点を挙げた 【写真は共同】

 横綱相撲――大阪桐蔭高の初戦突破を、開催中の大相撲大阪場所になぞらえれば、そんな感じか。土佐高の鋭い立ち合いを受けて立ち、押し戻し、突き放して、堂々と寄り切った。

 左腕エース・高山優希が2回無死二、三塁のピンチを招くが、後続を打ち取ると、3回には4安打を集めて先制。6回以降には2点ずつを追加し、投げては高山が球速はセーブしながら、2回以外は無安打に封じる。最後は徳山壮磨にマウンドを譲ったが、9対0の大勝発進だ。

 準備も、怠りなかった。土佐高の先発・尾崎玄唱は、昨秋の防御率が1.00と、出場32校の主戦中5位。
「尾崎君のストレートは、動いてボールになる。当てに行っては術中にはまります。幸いウチには、辰巳(太樹)という投げ方や球種が似たタイプのピッチャーがいるので、ヘロヘロになるまでバッティング投手をやってもらいました。ジュースでもおごれよ、と言いながら(笑)」
 とは西谷浩一監督だ。

打球の伸びが高知にはないレベル…

 それが功を奏し、3割8分と32校中チーム打率がトップの打線が12安打と活発だった。初回、中山遙斗のライナーを捕るには捕ったが、体勢を崩した土佐高の中堅手・吉川周佑は、「打球の伸びがすごかった。高知県内ではないレベルですね」と苦笑し、尾崎は素直に「力の差を感じました」。

 高知県勢のアベック出場はセンバツ史上6度目だが、明徳義塾高といずれも初戦負けするのは初めてのこと。土佐高・西内一人監督は、こう語る。
「尾崎は序盤は丁寧に放っていましたが、間違えば長打があるというむこうのプレッシャーに次第に消耗しましたね。警戒しすぎてカウントが悪くなると、甘いタマは確実にとらえられました」

 象徴的なシーンは、例えば大阪桐蔭高6回の攻撃だ。栗林佑磨が2ボールからバスターエンドランを、続く高山が初球にエンドランを決めて、貴重な2点の中押しをもぎ取っている。
「平田(良介・現中日)や中田(翔・現北海道日本ハム)がいる打線なら、細かいことは必要ありませんでした。ですが、今のチームは違う。ホワイトボート上でいろんなシミュレーションをして、“こんなことをされたらイヤやな”と考えています。そういえば昨年夏前は、東海大相模と練習試合をやらせてもらい、エンドランをよく使いましたね。門馬(敬治)監督からは、”それはないやろ”と言われましたけど(笑)」
 と語る西谷監督。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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