強打をアピールした常総学院、東邦・藤嶋=甲子園練習から探るセンバツ注目校&選手

松倉雄太

1年夏以来の甲子園に主将、エース、4番として戻ってきた東邦・藤嶋。甲子園練習ではレフトスタンドへ強烈な一発を放り込んだ 【写真は共同】

 第88回選抜高校野球大会が20日から阪神・甲子園球場で開幕する。出場校は本番を前に15日から3日間、各校30分ずつの日程で甲子園練習を行った。直前の動きや練習試合などの様子も加味して、今大会の注目校や注目選手を探っていきたい。

経験者多いV候補・大阪桐蔭

昨春のセンバツ4強の経験者も多く、優勝候補に名を連ねる大阪桐蔭。甲子園練習では150キロ左腕・高山がそのマウンドを確かめた 【写真は共同】

 抽選会前日の10日に行われたキャプテントークでのアンケートで、10校の主将が優勝候補に挙げたのが大阪桐蔭高(近畿/大阪)。昨秋の明治神宮大会で150キロを計測したエース・高山優希(3年)をはじめ、主将の吉澤一翔(3年)、中山遥斗(3年)、永廣知紀(3年)の打順上位3人が昨年の経験者だ。15日に行われた関西大学との練習試合では、4年生の主力選手も一部出場する中での3対3の引き分け。西谷浩一監督も、「勉強できました」と話すように、チームとして得られた経験ははかりしれない。17日の甲子園練習では、守備練習から打撃練習まで30分間できっちりと終わらせるスムーズな流れ。高校生らしく大きな声も出ていて、スタンドで観察していた高校生からも、軽快な動きに感嘆な声が上がった。

 キャプテントークの後に32校の主将が泊まる宿舎で、輪の中心にいたと噂されるのが東邦高(東海/愛知)のエース・藤嶋健人(3年)。甲子園練習でレフトスタンドに強烈な一発を放った。終了後は「何度来ても、と言っても2回目ですがいい所ですね」と話し報道陣を和ませた。主将の中でも抜群にトークがうまく、言葉の力を感じることができる選手だ。

 もう1人、言葉に魅力を感じる主将が敦賀気比高(北信越/福井)の林中勇輝(3年)。開会式では優勝旗を返還するが、「持ってみると思った以上に重くて腕が痺れた。開幕戦じゃなくて良かった」と胸をなでおろした。昨年の主将だった篠原涼(筑波大学進学予定)と同様に取材の時に会話が弾む選手で、指導者が言葉の力を鍛えることに力を注いでいることが窺える。

目を引いた秀岳館の練習風景

 甲子園練習で抜群のパフォーマンスを見せたのが常総学院高(関東/茨城)。2年生ながら4番を任される宮里豊汰が打撃練習でサク越えを4本放った。練習とはいえ気持ちよさそうに打つ姿に大打者の素質を感じる。昨秋の関東大会1回戦では、今秋ドラフト候補右腕・藤平尚真(横浜高)から勝負を決める一発を放った。今年はチーム打率2割9分6厘と低く、数字上はエース・鈴木昭汰(3年)中心にディフェンスが目立ってはいるが、チーム全体もバットが良く振れていて、一冬を越えてのパワーアップを十分に見せつけた練習だった。
 1回戦で対戦する鹿児島実高(九州/鹿児島)も、4番で主将の綿屋樹(3年)が打撃練習で本塁打を放った。秋の公式戦打率6割2分1厘は32校の主力打者でトップ。昨夏の甲子園でも2試合で4打点を挙げている。常総学院・鈴木との対決は1回戦屈指の好カードだ。

 鍛冶舎巧監督が率いる秀岳館高(九州/熊本)は、余計な大声がほとんどない社会人野球のような練習が目を引いた。主将で4番の九鬼隆平(3年)は秋の公式戦で4本塁打を放ち、数少ない捕手のドラフト候補として注目を集める。
 1回戦で対戦する花咲徳栄高(関東/埼玉)の高橋昂也(3年)は昨夏ベスト8の時のピッチングが思い出される。冬は常総学院高の鈴木、桐生第一高(関東/群馬)の内池翔(3年)らとともに北関東選抜チームに選ばれてオーストラリアに遠征。刺激をしあって、レベルアップを図った。夏からは一回りも二回りも成長したピッチングを披露するかもしれない。

終盤にゲームを動かせる試合を――

 秋の日本一・高松商高(四国/香川)は、主将の米麦圭造(3年)は、「秋はやりたいことがうまくいっただけ」と実力はまだ日本一ではない気持ちで冬を過ごしてきたことを話した。初戦はいなべ総合高(東海/三重)との公立対決。秋同様勢いに乗る戦いができるかに注目だ。

 最近はデータ収集と分析合戦が激しくなり、早いチームは秋の大会中から自校を除く31校分の情報を集め始める。しかし、「今の子供たちはデータに頼りすぎて使いこなせていない。データを使うのは本当に大事な場面だけで、後は使わなくてもいいんですよ」と、ある指導者が話すように、試合の中での臨機応変な対応力が落ちてきているように感じる。点差によるコールドゲームがない甲子園では必ず9回まではある。秋の明治神宮大会での高松商高のように、前半にリードを許したとしても、終盤にゲームを動かせるチームをたくさん見たいものだ。
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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