手術から1年、ダルビッシュが語ること 野球を離れて「良かった」

丹羽政善

手術から1年、リハビリも順調に行き、レンジャーズのキャンプに参加しているダルビッシュ 【Getty Images】

 今、米国は大統領選挙の真最中だ。テレビをつければ候補者たちが議論を交わしている。中傷合戦に発展するときはうんざりするが、それでも各候補は将来のビジョンを語り、既成政治の改革を訴える。気づくと、そのスピーチ、ディベートのうまさについつい引き込まれてしまうが、同時に日本の国会議員との差を否が応でも感じる。

 米国の政治家は、考えを自分の言葉で語っている印象がある。そして言葉を持っている。日本の政治家と比べたとき、その差は個人差では片付けられないほど歴然だ。

 背景にあるのは、教育の違いとの見方がある。米国では子供の頃から「なぜ、どうして?」と問い掛けられる。そこで子供たちは、自分の考えを自分の言葉で説明するよう迫られる。また、先生の話を静かに聞くより、グループで議論する時間も多い。自ずと、自分の言葉は磨かれる、というわけだ。

 確かにそれは一因だろう。ただ最近、日本人大リーガーと接していると、言葉を持っている選手が増えているように映る。イチローはある意味別格だが、岩隈久志、青木宣親、川崎宗則らにも個性がある。なかでも、最近取材をする機会が多いダルビッシュ有の言葉は、生き生きとしている。自分に起きている状況、それに対する考えを、ダルビッシュは自分の言葉で表現ができる。

「時間が欲しいと思っていた」

 いくつかを紹介したいが、3月5日にはこんなやり取りがあった。昨年のこの日、ダルビッシュはオープン戦に登板した後、右肘靭帯の損傷が発覚。トミー・ジョン手術(靭帯再建手術)を余儀なくされた。「あれから1年経つが……」と聞かれると、「良かった」と答えている。

「1年間野球と離れていろいろ勉強したり、そういう機会が増えるわけじゃないですか。それで自分の知識がすごい増えてるし、あのまま普通に1年間野球をやっていたら、ここまで進めたと思えない」

 その1年という時間を有効に使えるかどうかは、選手次第。少々長いが、そのときの言葉をそのまま再現する。

「僕も去年言ったけど、周りがずっとネガティブなことしか言わない。それでもやっぱり自分はそういうタイプじゃない。この1年で何ができるんだろうってことで、みんな痛い痛いって言ってるけど、それは手術して、(肘を)開けて、(靭帯を)変えてんだから、痛いに決まってる。そこはもう割り切ってやっていこうと。その代わり自分でやりたいこと、栄養の勉強だとか、体を変えるとか、そういうことができる時間。選手をやってたらオフの間、2、3カ月しかなくて、まともに力を付ける時間もない。これは自分にとって大きなことなので、逆にチャンスだなぁと」

 そもそもこんな考えを持っていたそう。
 
「もともと、この契約(レンジャーズと17年までの契約が残る)が終って、僕にまだ力があるなら、1年休んでトレーニングをして、日本なりなんなり、そこからもう1回野球しようかなと思ってたぐらい」
 
 まさかの仰天プランだが、裏には時間が足りないという意識が働いている。
 
「そんなん言っても、実際、やれたらいいなぐらいですよ。ほんとにそんなんやったらバカだって言われるけど、でもそれぐらい時間が欲しいと思ってた。まあ、(手術をした)タイミングとしては球団にとっては良くないけど、僕にとっては良かった。そう捉えるしかない」

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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