太田の交代時に起きたブーイングの理由 チーム事情が厳しい中、持ち味を出せず

中田徹

「最近、俺も長所を出せない」

今季いっぱいでフィテッセを去ると予想されているマース監督。チームの不振に伴い、太田も長所を出しにくい状況となっている 【Getty Images】

 太田に対しては、フェイエノールトの先制ゴールシーンで、左サイドでの守備が今ひとつだったこと。そして、これまでの試合でも守備が悪かったことが指摘されていた。

 問題のフェイエノールト戦での失点場面では、バサシゴクルがサイドチェンジのパスをトラップした際に、何の抵抗もなくやすやすとボールコントロールさせてしまったこと。続く、右サイドバックのリック・カルスドルプのオーバーラップからのクロスに、寄せが甘かったことが指摘されている。だが、太田からすれば、バサシゴクルとカルスドルプを1対2の数的不利で守らなければいけない難しいシーンだった。試合直後の太田の分析はこうだ。

「(相手の)サイドバックが上がった時点で、相手のボールホルダー(バサシゴクル)に対して一発で止めに行ったら、それが一番良くない。あれはサイドバックのセオリー通りというか、外に行かせた。あの局面でサイドチェンジされて、完全に1対2になること自体がよくない。あのシーンだけじゃなくて、2失点目もそうだけれど、全体として攻撃も守備も全くハマっていない」

 いずれにしても太田はマース監督と握手をし、ベンチに座って戦況を見守った。

「絶対に若い頃だったら、ペットボトルを蹴っ飛ばしていましたよ。(28歳になった今なら)そういう態度を見せたところで、プラスなことは全くないと分かる。監督がそういう判断をしたなら、それを受け入れるしかないから、今週また練習を頑張る。その繰り返しですね」

 オランダリーグにデビューした頃、太田の左足から蹴られるパスやクロスはファンを魅了した。しかし、チーム状況が悪化するにつれ、太田がサイドラインを駆け上がろうとすると、ベンチから「ステイ、ステイ」とストップがかかるようになっていった。

 フェイエノールト戦も、太田がオーバーラップをしたり、クロスを入れたりしたシーンは数えるほど。FKやCKもベイカーが蹴ることが増えている。「最近、俺も長所を出せない」と太田は葛藤する。

「いまくいっていないから、みんながフラストレーションを抱えている。『自分が、自分が』という選手が多いから、それがマイナスの方向にいっていると感じます。我慢ですね。こういうチーム状況が良くない中、シーズン途中でチームに入る経験をしていることをポジティブに捉えていきたい。悪いながらも勝てるチームというのは上にいると思う。良い勉強になっています」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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