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太田の交代時に起きたブーイングの理由
チーム事情が厳しい中、持ち味を出せず

端境期を迎えているオランダの指導者

太田(中央)はフェイエノールト戦で先発出場したが、ベンチへ下がる際には観客席から大きなブーイングが起こった
太田(中央)はフェイエノールト戦で先発出場したが、ベンチへ下がる際には観客席から大きなブーイングが起こった【Getty Images】

 昨季はPSVをオランダリーグ優勝に導き、今季はチャンピオンズリーグでベスト16達成と、フィリップ・コクー監督の評価は今でこそうなぎ登りだが、2年前の新人監督時代は成績が振るわず、解雇もうわさされていた。しかし、名将フース・ヒディンクをアドバイザーに迎えたことによって苦難を乗り切り、勝負強い監督に育っていった。


 今季からフェイエノールトの指揮を執るジオバンニ・ファン・ブロンクホルストも7連敗という暗黒期があったが、ディック・アドフォカートのアドバイスに耳を傾けることによって苦境を脱した。


「新人監督にとってつまずくことは、よくあること」という記事が、オランダのサッカー専門誌の読者投稿欄にあった。「今年からフィテッセの監督に昇格したロブ・マースもまた、成績不振に苦しんでいる。しかし、コクーやファン・ブロンクホルストと異なるのは、マースにはアドバイザーがいないこと」とその“読者”は分析していた。


 今、トップフットボールの世界でオランダの指導者は端境期を迎えているが、ベテラン指導者のカリスマ性はこの国のサッカーの宝である。PSVやフェイエノールトは、カリスマ指導者をアドバイザーとして最大限に利用することによって、若手指導者がつぶれることを防いだ。


 コクーもファン・ファン・ブロンクホルストも「指導者のタレント」と目されていたから、クラブは彼らに「失敗者」の烙印(らくいん)が押されぬよう、手厚くバックアップしたのである。


 しかしフィテッセにとって、マースは代えの効く指導者だ。うまくいったら来季以降の契約をし、失敗したら今季で契約を満了するまでの話である。マースがコーチから監督に昇格してからわずか2カ月半でフィテッセの成績も下降線をたどり、内容も貧しくなったことから、オランダではマースは今季いっぱいでフィテッセを去ると予想されている。

太田が下がる際、観客席から大きなブーイング

 こうした監督事情があった中、フィテッセは3月13日にフェイエノールトと戦い、0−2で敗れた。これでフェイエノールトは3位の座を死守。一方のフィテッセは順位を1つ下げて7位へ後退し、3位争いから退いた。


 チーム事情が厳しい中、左サイドバックとして太田宏介も持ち味を出し切れず、後半36分でベンチへ退いた。マース監督は太田を下げた理由を、「センターバックの1人、(アーノルト・)クライスバイクを中盤に上げて、3バックにシステムを変えようとした。すると、フィテッセの最終ラインはフェイエノールトの3トップと1対1になる。フェイエノールトの右ウイングの(ビラル・)バサシゴクルをマークするには、太田より(代わって入った)ケビン・レールダムの方が良いと思った」と説明した。


 太田がベンチへ下がる際、観客席から大きなブーイングが起こった。それには太田も「俺が交代する時、むっちゃブーイングがあったじゃないですか」と気付いていた。考えられる理由は3つあった。 


(1)太田のパフォーマンスにファンが納得できなかったこと

(2)チームが0−1で負けているのに、マース監督の交代策がDF(太田)からDF(レールダム)という消極的なものだったもの

(3)レールダムがレギュラーの座を太田に奪われた直後、チーム内での態度が悪かったこと


 太田自身は、「あれ、俺はネガティブに全く感じていなくて、5番(レールダム)に対してなのか、監督に対してなのかと思っていましたけれど」と(2)か(3)がブーイングの理由だと考えていた。


 果たして本当の理由は何なのか、フィテッセの公式ホームページにファンのフォーラムがあったので、チェックしてみた。すると、マース監督への厳しい批判とともに、太田の守備に対する不満が並んでいた。どうやら、ブーイングの理由は(1)と(2)に行き着きそうなのである。

中田徹
中田徹
1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている