選抜でベールを脱ぐ兵庫屈指の頭脳派右腕=21世紀枠の長田高・園田涼輔に注目

松倉雄太

兵庫屈指の進学校である長田高を甲子園に導いた本格派右腕・園田 【松倉雄太】

 高校野球対外試合解禁日の今月8日。センバツ注目選手の1人がスポーツ新聞の紙面をにぎわせた。5回を無安打、12奪三振――。

「練習であまり球が走っていなかったので、ゼロに抑えられて良かった」と冷静に投球を分析した男の名前は園田涼輔(3年)。今春のセンバツで21世紀枠に選ばれ、甲子園初出場を果たす兵庫屈指の進学校・長田高のエースである。

 同校は近年では大阪大や神戸大への進学者数が全国1位になり、東京大や京都大へ合格する生徒も多い。園田自身も理工学部での国公立大学進学を希望している。

14年夏の県大会準V校に13奪三振

 そんな彼の投球を初めて目にしたのは昨年のセンバツ決勝の翌日(4月2日)に行われた春季兵庫県大会神戸地区予選。当時のドラフト候補を擁するチームが登場することもあり、プロのスカウトも数球団視察に訪れていた。その中で強豪の神戸国際大付高を相手にリリーフ登板した園田の力強い投球に、「これからが楽しみだね」との声が自然と聞かれた。神戸国際大付高の青木尚龍監督も「いい投手」と敵ながら絶賛し、今後警戒しなければいけない存在だと認識した。

 それから約半年後、秋季兵庫県大会で園田の名が瞬く間に広がった。

・神戸地区予選2回戦:御影高(2対1/延長10回)
10回・5安打・8奪三振・1四死球・1失点

・神戸地区予選準決勝:伊川谷高(11対3/7回コールド)
7回・4安打・11奪三振・2四死球・3失点

・兵庫県大会1回戦:県尼崎高(3対1)
9回・4安打・16奪三振・1四死球・1失点

・兵庫県大会2回戦:三田松聖高(2対0)
9回・3安打・13奪三振・無四死球・無失点

・兵庫県大会3回戦:県伊丹高(2対0)
9回・1安打・9奪三振・3四死球・無失点

・兵庫県大会準々決勝:神港学園高(2対3)
8回・8安打・9奪三振・2四死球・3失点

 昨秋の公式戦で残した記録は、6試合・6完投・2完封、52回を投げて、25安打、66奪三振、9四死球、8失点、防御率1.21。中でもハイライトとなったのが県大会2回戦と3回戦だ。2014年夏に県大会準優勝した三田松聖高・大西祐監督は、「(園田の)対策はしたが、完敗でした」と話し、県伊丹高に対しては9回途中まで無安打と相手に何もさせない見事なピッチングを見せた。

打者の狙いを見極める観察眼が武器

伸びのある140キロ近いストレートとキレのいいスライダーを低めに集めて三振を奪う。打者の狙いを見極める観察眼にも優れている 【松倉雄太】

 園田の魅力とは何か!? 140キロ近い直球を持つものの、飛び抜けて速いわけではない。だが、「毎日5キロ以上走って鍛えました」という夏休みの下半身強化で手に入れた低めへの制球力と球の伸び、それにスライダーなどの鋭い変化球が、対策を講じられても簡単に打たれない秘訣である。さらに分析班の選手が足で稼いで得た情報を頭に入れ、打者が何を狙っているのかを見極める観察眼も大きな武器になっている。三振に倒れた打者がしきりに首をひねる姿が多く見られるのがその証だ。

 昨年以上に走ったこの冬で体重は約5キロ増えた。球威も上がり、国公立大学希望を承知でスカウトも度々視察に訪れるようになった。さらに永井伸哉監督は、「東京大や京都大などの野球部関係者も来られました」と反響の大きさを語る。ただ、当の本人は「ちょっと勉強の方がヤバいです」と笑うなどマイペースで、それほど意識している様子はない。

初戦の相手は攻撃力が自慢の海星

 今月11日に行われた抽選会で初戦は5日目第3試合に決まった。相手はチーム打率3割7分1厘と攻撃力が自慢の海星高(長崎)に決まった。同日午後の練習試合で今季2回目の先発をし、6回を5安打、8奪三振、1失点。試合後には「今日のままではダメ。勝つには接戦しかないので、どんな相手にも接戦に持ち込めるようにしたい」と、海星打線をこれからイメージする構想を話した。

 大会直前まで数試合に登板し、一度は完投をする予定で、本番から逆算したスケジュールも頭に入っている。並行して分析班の選手たちが海星高の情報収集を始めた。彼らがどう分析して伝えるかが、「(データを)活用している」という園田のピッチングを引き出す源だ。

 兵庫屈指の右腕から全国屈指の右腕へ――日程通り進めば3月24日にベールを脱ぐ時がやってくる。

園田涼輔(そのだ・りょうすけ)

 1998年8月19日生まれ。兵庫県神戸市出身。179センチ74キロ 右投げ右打ち。8歳(小学校2年)の時、家族の仕事の関係で滞在していた香港で硬式野球を始める。10歳で帰国し、友が丘中学校へ進学後は軟式野球部に所属、長田高では1年夏から背番号18をつけ、2年秋から背番号1。
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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