坂本勇人の守備を生かすクルーズ獲得 センターライン強化が今季の“補強”

鷲田康

「捕手・阿部」は強い巨人の象徴

ここ数年、守備で成長を続ける坂本。今季は新たに二遊間を組むクルーズとどんなプレーを見せるのだろうか? 【写真は共同】

 阿部の捕手復帰はもちろん、打者としての本人の再生が一番の目的だった。

 ただ、同時にチームにとっての波及効果も、高橋監督がこれを勝負手として決断した見逃せないポイントの一つでもある。

 阿部がマスクを被ることで一塁には新外国人のギャレットや、場合によっては村田修一、亀井善行などのオプションが選択できるようになる。
 ディフェンス面では、肩の強さなら3年目・小林誠司の魅力も捨てがたい。ただ、配球や投手を引っ張っていく牽引力、信頼感では、阿部にまさる捕手はまだまだ巨人にはいないのが現状なのだ。

「やっぱり彼が捕手として出ていたときというのは、強い巨人の象徴だったと思う。だから彼がキャチャーに復帰してくれることでチームの安心感というものもあると思います」
 これが指揮官が捕手・阿部に期待する大きな効果なのである。

 この阿部の捕手復帰が、チーム再生への監督の勝負手だとすれば、フロントの勝負手は昨年まで2年間、ロッテでプレーしていたクルーズの獲得だった。

「とにかく打点に重きを置いて探しました」

 獲得にあたった堤辰佳GMが語るように、昨年のクルーズは打率2割5分5厘ながら73打点をマーク。その勝負強さが獲得の決め手だった。

坂本を生かす二塁手としての期待

 加えてこの男にはもう一つ、役割がある。
 もはやリーグ一とも言える坂本の守備力を生かす、二遊間のコンビ相手としての働きだ。
 実はここ数年は打撃面では停滞が続いている坂本だが、長足の進歩を見せているのが遊撃手としての守備力なのである。

「二遊間の打球処理に関しては日本一といってもいいかもしれません」
 こう評価するのは、自らも現役時代に名手として名をはせ、今季から内野守備走塁コーチとなった井端弘和コーチだった。

「内野の守備というのは基本の積み重ね。坂本はキャッチボールからきちっとできるし、とにかく二遊間の打球への反応は文句はない。三遊間方向の打球処理は二遊間ほどではないですが、これは利き足の問題。利き腕、利き目があるように利き足があって、それによって右か左か守備の強さが出るのは仕方ないんです。でも、三遊間のボールについても決して下手ではないレベルにある」

 そしてこの坂本の守備力を生かす存在が新加入のクルーズというわけだ。
 クルーズは昨年のパ・リーグ二塁手部門でゴールデングラブを獲得した“守備の名手”と言われている。

 実際にその守備を見ると、守備範囲そのものはそれほど広くはないが、自分の取れる範囲のボールに対する反応やグラブさばきは日本人にはない動きをみせる。特に二遊間の打球処理では、身体能力を生かしたグラブトスやバックトスは、“魅せる守備”としても魅力は十分。ここに坂本の打球への強さがマッチすれば、リーグでも1、2を争う二遊間コンビになるはずなのである。

 野球はセンターラインと言われる。

 決して派手な補強はなかったが、阿部の捕手復帰とクルーズ獲得によってそのセンターラインの“補強”ができた事実は大きい。

 目新しさはない。
 戦力的に他を圧するような絶対的な強さもないかもしれない。
 ただ、このセンターラインの3人が機能すれば、決して弱くはない――それが今年の巨人なのである。 

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著者プロフィール

1957年埼玉県生まれ。慶應義塾大学卒業後、報知新聞社入社。91年オフから巨人キャップとして93年の長嶋監督復帰、松井秀喜の入団などを取材。2003年に独立。日米を問わず野球の面白さを現場から伝え続け、雑誌、新聞で活躍。著書に『ホームラン術』『松井秀喜の言葉』『10・8 巨人VS.中日 史上最高の決戦』『長嶋茂雄 最後の日。1974.10.14』などがある。

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