羽生、フェルナンデスに続くのは誰か!? 幕を開けた「300点超え時代」
別次元の扉が一気に開かれた
羽生がNHK杯とGPファイナルで300点超えを果たし、別次元の扉が一気に開かれた 【坂本清】
まずこの超高得点時代は、いかにして幕を開けたのか? 男子シングルの歴代記録は、2013年11月のエリック・ボンパール杯でパトリック・チャン(カナダ)が295.27点をマークしたあと、まる2年更新されなかった。この時のチャンは、ショートプログラム(SP)、フリースケーティング(FS)ともに4回転トウループ1種類のみ(コンビネーションも含む)。当時のチャンは「この高得点の要因は、徹底的に基礎スケーティングを練習してきたことによる演技構成点(PCS)。そして1つひとつの要素すべてをクリーンに決めたことです」と語っていた。
実際にチャンの言う通りだった。2季前にはすでに4回転を複数跳ぶ選手は多かったが、4回転はハイリスク・ハイリターンなジャンプ。成功すれば10点以上の基礎点を得るものの、質が悪ければGOE(出来栄え点)でマイナスされる。4回転に気を取られて演技がおろそかになれば、演技構成点が伸びない。「4回転1種類」のチャンが史上最高記録を保持していることで、「クリーンなプログラムこそが高得点」という戦略が浸透していった。
「ハイパー4回転時代」の目覚め
同大会で優勝したフェルナンデスは、「金博洋はまるでギャング。いったい他に誰がこんなに4回転を軽々跳べるだろうか。僕はFSで4回転3本が限界なので、成功させること、質を良くすること、そして演技構成点を伸ばす努力をする」と話しながらも「FSで3本」を明確に意識し始めた。
既成概念を覆した金博洋。中国杯ではSPとFSで計6本の4回転ジャンプに挑んだ 【坂本清】
NHK杯の試合後会見では、優勝の羽生、2位の金博洋、3位の無良崇人(HIROTA)それぞれが、こう語った。
「金博洋選手の4回転ルッツは素晴らしいので研究させていただいてます。FSの後半にも4回転を入れていて、スケートの将来を見ているような気もしますし、でもそれだけが正解ではない。僕は今回、4回転に計5回挑みましたが、4回転を跳ぶだけでなく、難しい入り方、降り方をして、トリプルアクセルも高い質で跳べることが武器です」(羽生)
「4回転は、SPで2本、FSで4本あれば十分だと思います。あとは演技面やジャンプの質を磨いていきたいです」(金博洋)
「金博洋選手が4回転ルッツを跳んだことが起爆剤になり、周りの選手も新しいジャンプを跳ぶというパターンが生まれています。これから五輪までの3年で、4回転アクセルや4回転フリップを跳ぶ選手も出てくるかもしれない。自分もいつかは4回転アクセルを跳んでみたいです」(無良)
3選手がけん制し合うような記者会見。それまで2年間も「4回転1種類」の演技が歴代記録に君臨していたとは、到底思えないものだった。