DeNA山口俊、新発想での課題克服で覚醒へ ファンの夢膨らむ春季キャンプの仕上がり

菊地高弘

「好不調の波が激しい」という課題

ラミレス新監督は1月4日の仕事始めで、山口を開幕投手に指名した 【写真は共同】

 しかし、まだ2月の上旬。逆の見方をすると、「飛ばしすぎ」ととることもできる。だが、山口は意外なことを口にした。

「ずっと調子を維持したいと考えています。シーズン中に(意図して)波をつくるのは、僕には無理だと思うので。それであれば、キャンプ中からどんどん仕上げていって、その状態で波を少なくキープするほうが、効率がいいのかなと」

 これまでの山口には、いつも「好不調の波が激しい」という課題が立ちふさがっていた。好調時には手がつけられない投球をするが、不調時は別人のように崩れてしまう。昨季の3勝はすべて4月までに挙げたもの。5月以降は1勝も勝てず、シーズンを通して大きな好不調の波があった。そもそもリリーフから先発投手に回ったのも、その悪癖が影響している。

解決は「好調をずっと維持する」

 この調子のムラをなくすために、山口は「好調をずっと維持する」という新たな発想で今季に臨むというのだ。

「怖さはありません。(昨年の)秋季キャンプからいい状態が続いていて、そのままオフ、キャンプインと、4、5カ月続けているので。あとは自分の体調管理さえ間違えなければ大丈夫だと思います。今のうちに仕上げて、波がきたときに解決する方法を今からつかんでいれば、シーズン中もそのままいけると思います」

 果たしてこの試みが3月25日の開幕戦(広島戦・マツダツタジアム)で実を結ぶのか。ただ、ラミレス監督が構想を披露したとはいえ、開幕投手が山口になることは完全に確定したわけではない。これから紅白戦やオープン戦など、実戦で周囲を納得させる投球ができるかにかかっている。

投手コーチは開幕投手指名に驚きなし

 ところで、木塚コーチが初めて「開幕投手は山口」という案を聞いたとき、意外にも驚きはさほどなかったという。

「秋季キャンプの、いい状態の山口を見ていたので。秋はすごく良くなりましたから。能力的にも、選手会長という立場的にもチームを引っ張っていかなければいけない選手。開幕戦に勝つことはもちろん大事なことですが、それだけで終わってはしょうがない。名実ともにチームの柱になってほしいですね」

 今永昇太(駒澤大)、熊原健人とドラフトで即戦力投手の獲得に成功し、砂田毅樹、石田健大ら若手投手の成長も著しいDeNA投手陣。そこへ山口俊という太い柱がそびえ立つとしたら……。ベイスターズファンにとって、これから夢の膨らむ秋が待っているかもしれない。

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著者プロフィール

1982年生まれ、東京都育ち。野球専門誌『野球太郎』編集部員を経て、フリーの編集兼ライターに。元高校球児で、「野球部研究家」を自称。著書『野球部あるある』シリーズが好評発売中。アニメ『野球部あるある』(北陸朝日放送)もYouTubeで公開中。2018年春、『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)を上梓。

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