敦賀気比が過ごした“変革の時” 屈辱の逆転負けから冬を越え春連覇へ

沢井史

主将は「生活面も含めて見直し」

センバツ出場を決め、喜ぶ敦賀気比の選手たち。篠原、平沼といった柱はいないが、束になって選抜連覇を目指す 【写真は共同】

 昨秋の神宮大会決勝戦の屈辱の逆転負け以降、チームの中に微妙な変化は生まれている。冬場の恒例となったスイングでは、選手たちがどれだけ振り込んでも「このままではダメです」と口々に話す。

 その真ん中に立っているのが、旧チームから唯一のレギュラーで、キャプテンを務める林中勇輝だ。林中は昨春のセンバツでも不動の3番打者として全5試合にフル出場し、2回戦の仙台育英戦では決勝打、準々決勝の静岡戦ではサヨナラ打を放っている。昨夏の甲子園でも明徳義塾戦でホームランを放つなど今大会でも注目の打者の1人だ。林中は自身3度目の甲子園を前に、こう話す。

「期待はしていただいていますが、上を見すぎると足元をすくわれると思います。ピンチやチャンスに強いけれど、無駄なところでエラーが続いて悪い方向に行ってしまう。神宮大会の決勝戦がそうでした。でも、このチームはもっと強くなれると思います。だからこの冬の練習が勝負。今、追い込んで3月になってから練習試合に少しずついいイメージで入っていけるようにしたいです。そのためにはあいさつや授業態度などの生活面も含めて、見直していかないといけないと思います」

柱は不在、“束”になる必要が……

 去年の平沼や篠原涼(筑波大に進学予定)、山本皓大(青学大に進学予定)のような経験者はおらず、絶対的な柱がいるわけではないが、だからこそ現チームは“束”になっていく必要がある。全員で優勝旗を還すという目標は達成できるが、もっと貪欲になり、どれだけスキのないチームとなれるか――。1人1人にその自覚がない限り、チームの新たな歴史は刻まれない。

「どうしても連覇という言葉が出てきますが、今の状況で連覇したいなんて口が裂けても言えません。ただ、この冬を経て“変わったな”と感じる選手は出てくると思います。そういう選手が中心になって、春には期待に応えられるチームになってもらいたいですね」。
 指揮官の熱のこもった言葉には、現チームに対する期待と奮起にかける思いが交差している。本番まであと約2カ月。ディフェンディングチャンピオンは、2度目のセンバツに向け変革の時を迎えている。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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