センバツ当落線上だった21世紀枠の小山台 エース伊藤優輔が出場決定を振り返る

高木遊

21世紀枠としてセンバツに出場した小山台のエース・伊藤優輔。現在は中央大の野球部に所属し、昨秋は大学1年ながら2勝、自己最速の147キロを記録するなど右の本格派投手として順調に成長を遂げている 【撮影:高木遊】

 29日に第88回選抜高等学校野球大会の出場32校が発表される。当日の朝から行われる選考委員会で候補に挙がった高校について審議され、出場校が決まる。果たして候補の当落線上にいる高校の選手たちはどのような思いで、発表日までを過ごしてきたのだろうか!? 今回は14年センバツに小山台のエースとして都立ながら21世紀枠で出場し、2016年度の飛躍が期待される中央大2年・伊藤優輔投手に話を聞いた。

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恵まれない環境での都大会8強を評価

聡明さと爽やかさを併せ持った受け答えが印象的な伊藤。取材に臆することはまったくない 【撮影:高木遊】

 中学時代、軟式野球のクラブチーム「荒川ウェーブ」のエースとして、東京都大会を制した伊藤のもとには、都内の強豪私学からの誘いもあったが、甲子園出場経験のない都立の進学校・小山台へ進んだ。

 入学当時はそこまで「甲子園に行きたい」という気持ちは強くなかったといい、「都立で勉強もできて、そこそこ野球も強い高校だったから」と正直に話す。だが、高校1年の夏にチームは東東京大会8強に進出する快進撃。これをベンチで見ていた伊藤は、「自分たちの野球も通用するんだな」と感じたという。

 そして約1年後の2年秋、主将兼エースとして東京都大会8強に進出。こうした好成績や、他部との共用グラウンドや短い練習時間(17時まで)の中での工夫を持った強化が評価され、小山台は21世紀枠の関東・東京地区候補校となった。

日ごろから厳しかった生活指導

小山台は他部との共用グラウンドや短い練習時間の中での工夫を持った強化で、秋季都大会で8強に進んだ実績が評価され、21世紀枠に選出された 【写真は共同】

 21世紀枠の候補9校に選ばれて迎えた冬は、「周囲の声もあって、全員がモチベーション高く練習できていました」と振り返る。また福島正信監督も「(たとえ選出されなくても)それが春や夏につながるはず」と、あくまで甲子園に向けた厳しい練習を行った。

 日常生活では、「学ランの第一ボタンを閉める」「電車通学時に、集団で固まらない」など細かな指導が学校内外であり、「1年生のうちは毎日誰かしら、生活の何かしらのことで怒られていました」と伊藤は笑う。

 そのため、21世紀枠に選ばれたからといって、生活の緊張感はさほど変わらなかったが、「21世紀枠にふさわしい行動をするように、福島先生から口酸っぱく言われていました。特に僕らの学校は駅前で住宅地のど真ん中にあるので、“見られている”という意識は常に持っていました」と伊藤が話すように、より責任感の伴う行動が必要とされた。

 センバツ出場校の発表日の前夜は「よく眠れました」というも、「やっぱり当日の5、6時間目とかは緊張でソワソワしていました」と懐かしそうに笑う。

 だが、そんな緊張をあざ笑うかのように、練習に向け部室で着替えている最中に、校内から歓声が挙がり、部員たちは甲子園出場を知る。特別な日ではあったが、彼らの生活サイクルに変わりはなく、いつもと違ったのは大挙して訪れた報道陣や周囲の盛り上がりだった。

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著者プロフィール

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

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