苦戦の錦織圭に感じた一点の不安 時間がかかった気持ちの切り替え
途切れがちだった集中力
4回戦進出を決めた錦織だったが、集中力という面で不安な一面をのぞかせた 【写真:ロイター/アフロ】
第1セット、ガルシアロペスは要所に鋭いサーブを決めながら、強打で打ち合いに出てきた。ラリー戦で負ける相手ではないが、ガルシアロペスには片手打ちバックハンドに特有の、外に逃げていくダウンザライン(サイドラインに沿ってストレートボールを打つこと)があり、やはりここまでの相手とは格が違った。
自在な攻撃を阻まれた気持ちの切り替えに時間がかかったのだろう、錦織が先に集中力を切らした。第7ゲームのサービスゲーム、15−40から最初のブレークポイントは時速192キロのサーブでかわしたものの、2本目にミスが出てサービスブレークを許しゲームポイント3−4になった。しかし、ここまでの対戦成績は錦織の2勝。リードしたガルシアロペスのプレッシャーも半端ではなかっただろう。第10ゲーム、錦織はそのプレッシャーを読んだように15−0から攻め上がり、4ポイント連取でブレークバック。続く第12ゲームもサーブの衰えを突いて一気に連続ブレークに成功して逆転で先行した。
錦織はここでメディカルタイムアウトを取って右手首の治療を受けた。2年前にも同じ個所を痛め「試合前にちょっと腫れがあった」とのこと。気にはなるが、プロ選手のケガの実態はうかがい知れないもの。ケガが原因かどうかは分からないが、集中力が途切れがちだったのは事実だ。第2セットは第1、第5ゲームをブレークされて追いつかれた。
集中力の揺らぎ、今後は許されない
手首の手当ては気になったものの、そこからの試合展開は、錦織が実力を発揮し堅実に主導権を握った。第3セットは第6ゲームを、第4セットは第3ゲームを先にブレーク、この2セットでのウイナーは相手の倍近い20本を決め、ショットメーカーらしく奇麗に試合をまとめた。
メディカルタイムアウトは「予防ではなく治療」だったという。ただ、そこからの3セットを戦い切っていることを思えば大きな問題とは考えにくく、むしろ問題は緊張感の持続だろう。
集中力の強さは錦織の武器の一つ。4回戦で対戦するジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)、さらにその先の準々決勝で待ち受けるであろう王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)を乗り越えるためには、こうした集中力の揺らぎは許されない。その一点の不安はあるが、一方で、この辺りで緊張感を含んだプレーをしておきたかったはず。どう転がるか、注目したい。
その他、男子では第3シードのロジャー・フェデラー(スイス)がグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)を倒し、女子ではマリア・シャラポワ(ロシア)らが勝ち進んでいる。
(文:武田薫)
全豪オープンテニス
2016シーズン最初のグランドスラムとなる全豪オープンテニス。頂点を目指す錦織圭の戦いなど、現地の感動と興奮を連日生中継でお伝えする。
2016年1月18日(月)〜1月31日(日)
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ