福原、丹羽の敗退で募ったリオへの不安 五輪代表候補2人が準決勝前に姿を消す

スポーツナビ
 1月11日に開幕した卓球の全日本選手権・男女シングルスは、17日の最終日を残し、ベスト4が出そろった。3連覇を目指すリオデジャネイロ五輪代表候補の石川佳純(全農)と水谷隼(ビーコン・ラボ)は危なげなく準決勝に進出。伊藤美誠(スターツ)と平野美宇(エリートアカデミー)の15歳コンビも接戦をものにする粘り強い戦いぶりで、見事に4強まで駒を進めてきた。

 その一方で2人の五輪代表候補選手が、最終日を前に姿を消した。福原愛(ANA)が6回戦で、丹羽孝希(明治大)が準々決勝でそれぞれ伏兵に敗退。今夏のリオ五輪に不安を残した。

大逆転負けを喫した福原

8歳年下の伏兵に逆転負けを喫した福原。2年ぶり出場となった全日本選手権で弾みをつけたかっただけに、ダメージの大きい敗戦となった 【写真は共同】

 福原は精神面の課題を露呈した。6回戦の相手は、今季日本リーグ2部を主戦場としてきた19歳の加藤杏華(十六銀行)。序盤から快調に得点を重ね、3ゲームを連取するなど全く相手を寄せ付けない戦いぶりだった。だが、第4ゲームから試合の流れが突如として変わる。「気が緩んでしまった」と試合後に悔いたように、開始からいきなり7連続ポイントを許し、最終的に9−11でこのゲームを落とした。

 すると一度手放した流れは最後まで元には戻らなかった。第5、第6ゲームも奪われ、最終ゲームでは失点するたびに天を仰いだ。ミスを恐れるあまり、自身の卓球を見失ってしまった。

「相手が思い切ってくるなかで、自分がそれに対応できず気持ちの部分で守りに入ってしまいました。相手はすごくブロックのうまい選手。それで少し攻めすぎて相手があまり見えない状態になってしまい、自分のやりたいプレーばかりをしてしまったと思います」

 結局、3−0からまさかの大逆転負け。昨年10月の女子ワールドカップ準々決勝でもペトリサ・ソルヤ(ドイツ)相手に3ゲームを先取しながら、同様の展開で敗れているだけに、そのダメージは大きい。

 腰の負傷で昨年の全日本選手権を欠場した福原にとって、この大会での王座奪還は五輪へ向けて弾みをつけるためにも、必要不可欠なことだった。4年前のロンドン五輪では団体で銀メダルを獲得。そのときは年明けの全日本選手権で初優勝を飾り、自信を持って臨むことができたからこそ、悲願を達成できたと福原は考えている。今大会でもその再現を狙っていただけに、試合後は涙目でショックに打ちひしがれていた。それでも最後には気丈に前を見据えた。

「すぐにワールドツアーが始まりますし、2月には世界選手権(マレーシア)もあるので、全日本という大きな大会で負けてしまった反省点を生かして、同じ過ちを繰り返さないようにやっていきたいと思います」

ベテランの術中にはまった丹羽

リオ五輪代表候補の丹羽は、課題を露呈し準々決勝で姿を消した 【末永裕樹】

 福原がメンタル的な問題をさらけ出してしまった一方で、丹羽は戦術面での不安をのぞかせた。カウンターを得意とするそのプレースタイルは相手が攻撃的に来たときは、特徴を最大限に発揮できる。しかし、守備的な選手相手には威力が半減してしまうのだ。

 丹羽にとって初戦となった4回戦で対戦した張本智和(仙台ジュニアクラブ)は、積極的に前に出てくる攻撃型の選手。今大会旋風を巻き起こした小学校6年生の12歳は、その勢いを持って積極的に攻めに出たが、丹羽はロビングボール(山なりボール)を多用し、緩急をつけていなしにかかった。

「自分からどんどん攻めていきたかったんですけど、まったくそれをさせてもらえず、ずっと丹羽選手のペースで試合が進んでしまいました。全部ボールを拾われてしまうし、その結果、自分が焦ってミスをした。丹羽選手はミスも全然なく、本当に強いなと思いました」(張本)

 5回戦、6回戦も快勝した丹羽が準々決勝で対戦したのは張一博(東京アート)。かつてこの大会で準優勝した経験を持つ守備型の選手だ。真価が問われる一戦だったが、丹羽はこの30歳のベテランの術中に見事にはまってしまった。相手があまり攻めにこないぶん、丹羽は自ら打って出るが、それをことごとく拾われる。第2ゲーム、第4ゲームを奪ったものの、常に先手を取られる展開が続いた。そしてペースを最後まで握れないまま、丹羽は2−4で敗れた。

「張選手は打たせてくるので、それをフォア側で攻めるのか、バック(ハンド)対バックで攻めるのかすごく迷っていて、バック対バックで勝負しようと思ったんですけど、そうすると相手の展開になってしまうので難しかったです。僕はカットマンだったり、守備型の選手にすごく弱い。それは一発で点を取れるボールがないからでもあります。もう少しボールの威力をつけられるようにしたいと思います」
 代表候補の福原と丹羽の敗退は、リオ五輪に向けて不安を抱かせるものだった。2月末には世界選手権が行われる。今後2人に求められるのは、こうした大会を通して、今回露呈した課題を少しでもクリアしていくことだろう。その先に五輪での躍進がある。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)
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