イチローの憧れと野茂の「女房役」が選出 グリフィーとピアザが米野球殿堂入り

菊田康彦

野茂の「女房役」で日本でも人気

ピアザは野茂とのバッテリーで日本で抜群の知名度を誇った 【写真:AFLO】

 グリフィーが「イチローの憧れ」なら、日米通算201勝を挙げた野茂英雄の「女房役」として日本のファンにお馴染みなのが、グリフィーと共に殿堂入りが決まったマイク・ピアザである。

 全米ナンバーワンでドラフト指名されたグリフィーとは対照的に、ピアザは1988年のドラフトでロサンゼルス・ドジャースから62巡目、全体では1390番目に指名されてプロ入り。65年のドラフト施行後、全米1位指名で初めて殿堂入りしたのがグリフィーなら、最も低い順位の指名で殿堂入りを果たしたのがピアザだ。

 そこからはい上がって93年にナショナル・リーグの新人王を獲得したピアザは、95年に野茂がドジャース入りした時は、既に押しも押されもせぬチームの看板選手になっていた。

 「イイデス、イイデス」

 そんなスター選手が、メジャー初登板でピンチを迎えた野茂のもとに駆け寄ると、いきなり日本語で話しかけてきたという。

有資格4年目にして到達

「本当に素晴らしい選手なんです。野球選手としても人間としても尊敬できる。ドジャースを支えているのは、間違いなく彼の人望と実力だと思います」

 メジャー1年目の野茂は、ピアザをそう評している。だが、彼が殿堂入りしたのは、メジャーリーグ史上に残る「強打の捕手」だったからだ。打率3割以上9回、30本塁打以上9回、100打点以上6回。打撃タイトルには縁がなかったものの、歴代の捕手の中で通算427本塁打(うち捕手としての出場時は396本塁打)は1位、通算打率3割8厘は3位、通算1335打点は4位にランクされている。

 それでも殿堂への道のりは平坦なものではなかった。2007年にオークランド・アスレチックスで現役を引退し、5年間の空白を経て殿堂入りの資格を得たのは13年のこと。この年は得票率57.8%、その後も62.2%、69.9%と、殿堂入りに必要な75%には届かなかったが、有資格4年目にして83.0%と、ついに“壁”を突破した。

 ちなみに野茂とピアザのバッテリーは、1998年のシーズン途中でピアザがフロリダ(現マイアミ)・マーリンズにトレードされたことで分解されてしまった。しかし、それからほどなくしてピアザが今度はメッツにトレードされると、野茂もドジャースからメッツに放出され、なんとニューヨークでバッテリーが復活。このシーズンは6勝12敗と不本意な成績に終わった野茂だが、うち5勝をピアザとのコンビで挙げている。

 野茂は一昨年、日本で一足先に殿堂入りしているが、かつての「恋女房」へのお祝いのメッセージはあるだろうか?

(文中敬称略)

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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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