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サッカーの奥深さを感じさせた決勝
天皇杯漫遊記2015 浦和vs.G大阪

元日に天皇杯決勝が戻ってきたが……

2年ぶりの「元日の決勝」となった天皇杯。今年は東京の味の素スタジアム
が会場に選ばれた
2年ぶりの「元日の決勝」となった天皇杯。今年は東京の味の素スタジアム が会場に選ばれた【宇都宮徹壱】

 元日に天皇杯決勝が戻ってきた。年が改まった2016年1月1日、浦和レッズとガンバ大阪による決勝戦が、東京・味の素スタジアムで開催された。味スタが天皇杯決勝の会場となるのは今回が初めてだが、元日の決勝は2年ぶりのことである。G大阪対モンテディオ山形による前回大会の決勝は、14年12月13日に日産スタジアムで行われ、3−1で勝利したG大阪が優勝している。例年より前倒しで決勝が開催されたのは、翌年1月にオーストラリアで開催されるAFCアジアカップに向けた準備期間を確保するためであった。


 これより以前、決勝が元日以外の日に行われた最後の大会はいつだろうか? 気になって調べてみたら、記録上「1967年大会」とされている第47回大会だ。68年1月11日に8チームが参加して開幕したこの大会は、同年(というか4日後の)1月14日に決勝が行われている。準々決勝から決勝まで、わずか4日間で行われたこの大会の一番のトピックスは、天皇杯の決勝が初めて国立競技場で行われたことである。続く第48回大会は、69年1月1日に決勝が国立で行われ、ここに「元日・国立」というおなじみのフォーマットが完成する。


 2年ぶりに元日の決勝が戻ってきたが、舞台が国立でないことにいまだ違和感を覚えるサッカーファンは少なくないはずだ。舞台は横浜から東京に戻ったものの、01年に完成したFC東京と東京ヴェルディのホームグラウンドに、国立のようなオーラや中立性など望むべくもない。昨年、新国立競技場の建設に関するすったもんだが国民的な話題になったが、4年後の2020年元日には「元日・国立」が復活するためにも、今年は順調に改修作業が進むことを心より祈念する次第である。


 余談ながら、次回大会の決勝はG大阪の新ホームスタジアムとして今年オープンする、市立吹田サッカースタジアムで行われるそうだ。新国立ができるまで中立性が担保できないのであれば、むしろ東京以外の会場で決勝が行われるのも「あり」だと思っていた。ゆえに、この柔軟性あふれる決定を私は強く支持したい。東京在住の人間にとっては、確かに不便に感じるかもしれないが、年末年始を関西で迎えるのも悪くない。むしろ、年末に京都の観光地を巡ってから吹田での決勝に臨もうかと、気の早いことをひそかに画策している。

浦和のタイトル獲得を阻み続けたG大阪

06年の天皇杯優勝以降、国内主要タイトルから遠ざかっている浦和。今大会に懸ける思いは強い
06年の天皇杯優勝以降、国内主要タイトルから遠ざかっている浦和。今大会に懸ける思いは強い【宇都宮徹壱】

 あらためて、今大会のファイナリストである浦和とG大阪について考えてみたい。


 準決勝で浦和が柏レイソルを延長戦の末に1−0で下したことで、来季のACL(AFCチャンピオンズリーグ)の出場権はすべて埋まった。この決勝は、純粋に天皇杯というタイトルを懸けた戦いとなる。そして昨シーズン3冠を達成しているG大阪も、ここ数年「あと一歩」でタイトルを逃し続けている浦和も、今季はまだ何も手にしていない(浦和は「J1リーグファーストステージ優勝チーム」だが、これをタイトルと考えている関係者はサポーターを含めて決して多くはないだろう)。


 天皇杯での両者の対戦は、それぞれの前身である三菱・松下時代を含めて過去6回あり、3勝3敗の五分。決勝で対戦したのは10年前の06年大会で、この時は1−0で浦和が勝利。試合後の会見で、G大阪の西野朗監督(当時)は悔しさのあまり、1分近く沈黙していたことをよく覚えている。その後、浦和は翌07年のACLで見事にアジアチャンピオンに輝くも、国内での主要タイトルはこの時の天皇杯優勝が最後。それだけに是が非でも獲りたいタイトルだが、ここで気になるのがG大阪との最近の相性である。


 今季のリーグ戦では1勝1敗の五分ながら、富士ゼロックススーパーカップとJ1チャンピオンシップ(CS)準決勝ではいずれも敗戦。さらに14年のシーズンでは、「勝てば優勝」という第32節での2位G大阪との直接対決に敗れ、浦和は一気に失速してしまう。結果、一時はJ2降格圏内の16位に沈んでいたライバルに、奇跡のような逆転優勝を許してしまうこととなった。タイトル目前の状態で、常に目の前に立ちはだかってきたG大阪。とはいえ浦和にとって、これ以上「倒しがいのある相手」は他にいないのも事実である。


 両チームのスターティングメンバーを確認しておこう。浦和は、柏との準決勝で負傷退場した柏木陽介がベンチにも入れず、代わって青木拓矢が出場。また、右サイドから何度もチャンスメークしていた関根貴大もベンチスタートとなり(同ポジションには梅崎司を起用)、天皇杯3試合連続でゴールを決めている李忠成がスタメンに戻ってきた。3人の選手を入れ替えた浦和に対し、G大阪は準決勝と同じメンバー。とはいえ、どちらもベストの布陣と見て差し支えないだろう。君が代斉唱ののち、14時15分にキックオフ。

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱
1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)。近著『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。自身のWEBサイト『徹壱の部屋』(http://tetsumaga.com/tete_room/)でもコラム&写真を掲載中。また、有料メールマガジン「徹マガ」(http://tetsumaga.com/)も配信中