投手はTJ手術からいつ復帰すべき? ダルの復帰にも影響及ぼす米国の議論

週刊ベースボールONLINE

TJ経験者初の殿堂入り

今年3月に手術を受けたダルビッシュ、復帰は来年5月末が予定されている 【写真:Getty Images】

 2015年は、2人のトミー・ジョン手術(以下TJ)経験者が金字塔を打ち立てた。ジョン・スモルツは21年間の長いキャリアの途中、手術で33歳のシーズン(00年)を丸々棒に振ったが、術後に59勝154セーブ。通算では213勝154セーブで史上初めてTJ経験者で野球殿堂入りを果たした。

 ジョーダン・ジマーマンはメジャー1年目の09年、23歳でヒジを痛め8月に手術し、2年目に復帰。3年目はイニング制限で8月末でシーズン終了となったが、4年目から7年目まで、毎年32試合以上に先発し、平均200イニング以上と安定した成績を残した。FAの権利を得て、このオフ、タイガースと5年1億1000万ドルの契約でサイン。史上初めてTJ経験者で1億ドルを超す大型契約を勝ち取った。

 今年3月に手術を受けたダルビッシュ有、13年10月に手術し今季見事な復活を遂げたメッツのマット・ハービーらにとっても、目指す頂きである。

 その一方で15年は、リハビリの時間のかけ方、復帰してからの登板イニング数などで、かんかんがくがくの議論が繰り広げられた年でもあった。

リハビリにもオフを設ける発想

 ヒジじん帯の再損傷で、2度目のTJを受けた投手が12年、14年に急増。特に14年はジャロッド・パーカーら11人が2度目の手術を余儀なくされたからだ。どうすればケガの再発を防ぎ、術後もいいキャリアを送れるのか。関係者が知恵を絞りあった。

 その一人がレンジャーズのジョン・ダニエルズGMである。GM会議中、ダルビッシュのリハビリは順調と報告するとともに、「これから5、6週間は日本に帰国し、戻るのは1月初旬。その期間はノースローにする」と明かした。

 ダルビッシュは8月にボールを投げ始め、徐々に距離を延ばしている。松坂大輔や和田毅のリハビリのときはオフも休まず投げ続け、手術後1年で戻ることを目標にした。同じスケジュールなら、来年の開幕戦に間に合う。だがあえて1カ月半もインターバルを取り、復帰は5月下旬を予定とした。

「投手が普通にオフシーズンを過ごすように、リハビリの過程でもオフを挟む。ヒジのケガが伝染病のように広がる中、うちのメディカルスタッフがどう対処すればいいかを熟慮した末、プログラムに組み込んだ。1年前、マルティン・ペレス(先発左腕)でも同じことをした。長い目で見てチームにとっても投手本人にとっても良いと判断した」とGM。
 ヒントになったのはメッツのハービーのケースだった。手術から復帰まで18カ月もかけたおかげで、15年は公式戦+プレーオフで33試合に先発、216回を投げ15勝8敗だった。

 同球団のアシスタントGM、ジョン・リコ氏によるとやはり途中で5、6週間ノースローにしたのだという。なるほどと思える。今までは、早く復帰したい一心で、7、8カ月間投げ続け、そのまま実戦に入れば、1年以上投げ続けることになる。身体によくないだろう。

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