高阪剛が語る「UFC in ソウル」見どころ「秋山は日本大会よりさらに進化している」

WOWOW

秋山が地元・韓国で無敗の強豪アルベルト・ミナと対戦

地元・韓国大会で1年2カ月ぶりの試合に臨む秋山成勲 【(C)Photo Courtesy of UFC】

 11月28日に韓国ソウル市オリンピック体操競技場で行われる「UFC in ソウル」では、秋山成勲が「UFC JAPAN 2014」以来、1年2カ月ぶりに試合を行い、総合格闘技無敗の強豪アルベルト・ミナと対戦する。
 その試合に向けて、秋山は「アライアンス」でトレーニングを積んできたが、仕上りはどうなのか。同ジムの代表であり、WOWOW『UFC−究極格闘技−』解説者である高阪剛氏に、秋山vs.ミナの展望と、同大会のメインイベント、ベンソン・ヘンダーソンvs.ホルヘ・マスヴィダルの見どころを語ってもらった。

秋山は年齢を重ねるごとに動きが良くなっている

――「UFC in ソウル」では、秋山成勲選手が1年2カ月ぶりに試合を行いますけど、試合に向けて高阪さんのジム、アライアンスで練習しているんですよね?

 そうですね。秋山の練習を見ていると、すごく充実している感じがしますよ。うちでの練習はスパーリングが中心ですけど、ちょっとしたところの際の部分だったりとか、一瞬一瞬の動きだったりとか。本人なりに試合を想定して、確認しながらやってる感じがすごく見えるので、状態としてすごくいいんじゃないかと思いますね。

――それは、これまでと比べても良さそうですか?

 そうですね。秋山は毎回、調整の仕方がうまいんですけど、今回はとくにうまく行ってる感じはありますよね。

――聞いたところによると、フィジカル的にもかなり充実していて、アライアンスの選手たちも、「秋山さん、減量しながら身体がでかくなってる」って言ってるみたいですね。

 そうなんです。だからジムにウェルター級以上の選手が集まるようになってきて。(菊野)克紀なんかも、普段は80kgあるから小さくないんですけど、秋山の身体の大きさが、周りを小さく見させてしまってるのかなと思うんですよ。

――40歳になっても、それだけ肉体的に充実している、と。

 あとは身体の使い方ですよね。これは自分自身も感じてることなんですけど、年齢を重ねるごとに、動きが良くなるというか、自分が理解できるようになってきてると思うんですよね。だから秋山は、ジムに月曜から金曜まで来てるんですけど、月曜日と金曜日の姿が変わらないんですよ。

――月曜日は元気でも、金曜日はボロボロで、クタクタって感じではないわけですか?

 じゃないですね。月曜も金曜も同じ練習ができている。秋山なりに、しっかりリカバリーしながら、ケアしながら練習ができてるんだと思いますよ。

――高阪さんとスパーリングすることもあるんですか?

 自分は一回だけやったんですけど、自分も(12月29日RIZINで)ジェームス・トンプソン戦が決まって、スーパーヘビー級対策をやらなきゃならなくなったんで(笑)。秋山は秋山の調整があるだろうから、基本的にスパーは別々にやってますね。

――では、同じ空間で切磋琢磨しているというか。

 お互い、声をかけながらやってますね。だから逆に第三者的な立場で客観的に見て、非常にいい状態だと思いますね。

ボクシング技術は秋山のほうが上

高阪氏は「ボクシングの技術で言えば、秋山のほうが上」と分析 【花田裕次郎】

――秋山選手の対戦相手は、ブラジルのアルベルト・ミナという、安西信昌選手のUFCデビュー戦でTKO勝ちした選手ですけど、いかがですか?

 ミナは、安西にTKO勝ちして、パフォーマンス・オブ・ザ・ナイトのボーナスを獲得してるんですよね。柔術家でありながら、打撃で勝てるという、いまのUFCらしい選手で。

――柔術黒帯で柔道の二段、また長いリーチをいかして、ロングフックやアッパーを振り回してくるタイプですよね。

 だから、当たれば倒せるタイプですけど、ボクシングの技術で言えば、秋山のほうが上だと思うんですよ。秋山は総合格闘技の中で、いかに的確に顔面に打撃を当てるか、そのうまさというのはかなりのものですからね。最近の練習を見ていても、もともと持っていたセンスと、これまで練習を重ねてきたことによって生まれた技術が噛み合ってるように見えるんですよ。

――秋山選手は総合格闘技デビューしたばかりの頃から、打撃のセンスはピカイチでしたもんね。HERO’S時代は、韓国大会で強豪デニス・カーンを、強烈なアッパー一発でKOしたり。

 だから、そもそも打撃が強くて、身体も強いんですよ。そこにプラスして、最近はその身体の強さを拳に伝える能力が増してきているように思いますからね。

――秋山選手はもともと柔道のトップ選手ですけど、MMAへのアジャスト能力が相当高いんですかね。

 だと思うんですよ。しかも、秋山はおじいさんが元ボクサーですから、そもそも備わっていた才能、センスがあった選手だと思うんですよね。その打撃センスを総合の中でどう使うかっていうのを、去年から今年にかけて、さらに練ってきているのが見ていてもわかりますから。今回も1年2カ月のブランクはありますけど、それはマイナスの意味でのブランクじゃなくて、その期間に進化している部分がいろいろあると思うんですけどね。

――確かに、去年の日本大会のときも、2年半近いブランクがあるからさすがに厳しいだろうと思ってたら、アミール・サドラーを圧倒したんでびっくりしましたよね。前より強くなってんじゃんって。

 取捨選択というか、場面場面での自分の動きの選び方が的確になってきてるんですよね。例えば、テイクダウンを奪うときは奪うし、相手の立ち際もしつこくテイクダウンを狙ってスタミナを消耗するんじゃなく、そこは離して得意の打撃でいったりとか。状況によっての頭の切り替えとか、自分がどんな攻撃を出せばいいのかということが、見えてきてるんだろうなと思いますね。

――状況判断能力に長けてきている、と。また今回はUFC初の韓国大会ですから、より力を発揮しそうですよね。

 もう地元も地元、ホームだから、そこは気合いも入るでしょう。試合っていうのは、自分がいままで何をやってきたのかを表現する場なんですけど、それを最も見せられる舞台なんじゃないですかね。

――なんか、ファイトボーナス獲得するような試合を期待できそうですよね。

 そうなってほしいなって思います。トレーニングも本当にひたむきに取り組んでいるし。道場っていうのは、選手ひとりひとりの気持ちによって回っていくものなんですけど、その士気を高めることを担ってくれる存在になってくれているので。道場としては非常に助かってるし、みんな秋山のことを応援して、「頑張ってほしい」って思ってますよ。

ベンヘンは動物的な感覚の持ち主

メインではウェルター級転向2戦目となるベンヘンがマスヴィダルと対戦 【(C)Photo Courtesy of UFC】

――そして、メインイベントはベンソン・ヘンダーソンvs.ホルヘ・マスヴィダルのウェルター級戦ですけど。ベンヘンの相手が、当初のチアゴ・アウベスから変更になりましたが、これはこれでいいカードですよね?

 いや、ホントそうですよ。変わって良かったと言ったらあれですけど、非常に興味深いカードですよね。

――マスヴィダルは、現在31歳。ちょうど脂が乗ってる時期ですよね。2009年に戦極で北岡悟選手にTKO勝ちして、その後、ストライクフォースではライト級タイトル戦も経験。そしていま、UFCで6勝2敗と勝ち越していて。

 じつは自分、マスヴィダルのこと、彼が10代の頃から知ってるんですよ。日本に来る何年も前ですよ。アメリカのどこかのローカル大会で会ってるんです。その時に会話をしていて、「日本に行って試合をしたいんだ」と言ってたんですね。とにかく、見ていても向上心の塊でした。二十歳前だから、遊びたい盛りなのに、話すことはトレーニングのことばかりで。どうやったら強くなるかとか、そういう話ばかりしてましたね。10代なのに、あまりにもしっかりしてたんで、覚えてたんですけど。

――では、それから10年ちょっと。総試合数も38試合と多いですから、ずっと休まず、高いレベルで闘い続けていたわけですね。

 そもそもの格闘技への取り組み方が、すごく真摯でまっすぐなヤツなんで、それが試合にも現われてますよね。しっかり前に出ていって、圧力をかけて相手を倒しにいくという、“プロ”の選手だと思います。

――ベンヘンもまた、プロを感じさせる選手ですけど、ちょっとタイプが違いますよね。

 自分はベンヘンに関しては、身体から湧き出る格闘センスというか、動物的な嗅覚の持ち主という印象なんですよ。相手がどう出てくるか察知する能力に長けていて、その攻撃をかわすだけじゃなくて、自分から攻撃していく。いい試合が多いのは、そういう積極性があるからじゃないですかね。

――前回の試合(2015年2月14日「UFC FIGHT NIGHT」、vs.ブランドン・ザッチ)も、ウェルター級転向第1戦で体格差がある中、最後はリアネイキッドチョークで一本勝ちですからね。

 場面場面で何が一番有効なのかを、頭で考えているんじゃなくて、とっさにできるんでしょうね。

――その部分では、先ほどの秋山選手タイプというわけですね。

 ベンヘンはライト級のベルトを失って、もう一度チャンピオンになるために、今度はウェルター級に上げてきたと思うんで、ここは負けられないでしょうね。

――マスヴィダルも同じくライト級から階級を上げてきて、今回がウェルター級2戦目でタイトル戦線に入ることを狙ってるでしょうから、この試合は盛り上がりそうですね。

 ぜひ、盛り上がってほしいですね。今回の韓国大会は、国は違えど同じアジアなので。アジアでUFCが盛り上がって、全体的なスキルが上がって、選手達の意識も高くなるというのは、すごくいいことだと思うので。

――この大会も高阪さんはWOWOWの解説をやられますけど、現役復帰が決まってから、解説するときの感覚も変わりましたか?

 いや、頭の回路的には解説やるときと、選手でトレーニングしてるときって、やっぱり違うので。ここ5〜6年で、そこの使い分けができるようになったんですよ。30代の頃は、それが正直、できなかったですね(笑)。

――解説をしながらも、選手の気持ちで熱くなってしまったり(笑)。

 30代の頃は、正直そういうこともありましたよ。でも、いまは棲み分けというか、ちゃんと整理できるようになった感覚がありますね。だから、いまは選手として闘う気持ちがあるからこそ、「いま選手がどんな考えでいるのか」とか「次にどんな動きをやろうとしているのか」が、わかる部分がある。解説者の自分が、隣にいる選手としての自分から、ちょっと感覚をもらってきてる感じですね(笑)。

(取材・文:堀江ガンツ/WOWOW UFC解説者)

■詳しくはUFC 番組オフィシャルサイト(wowow.co.jp/ufc)へアクセス!
http://www.wowow.co.jp/sports/ufc/


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★「UFC−究極格闘技− UFC in ソウル 元王者ベンヘン&秋山成勲 参戦!
韓国初のUFC大会、UFC in ソウルを放送。メインは2012年のUFC JAPANで王者となったベンソン・ヘンダーソン。秋山成勲も参戦!
【放送日】11月29日(日)午後5:30〜[WOWOWライブ]
     11月28日(土)夜10:00頃〜[WOWOWメンバーズオンデマンド]※先行ライブ配信

<主な対戦カード>
ウェルター級:ベンソン・ヘンダーソンvs.ホルヘ・マスヴィダル
ウェルター級:キム・ドンヒョンvs.ドミニク・ウォーターズ
ウェルター級:秋山成勲vs.アルベルト・ミナ

★「生中継!UFC−究極格闘技− UFC194 in ラスベガス Ald vs.McGregor」
7月にアルドの負傷欠場で行なわれなかったフェザー級絶対王者アルドとアイルランドの悪童マクレガーの対決がいよいよ実現!ワイドマンのミドル級防衛戦にも注目。
【放送日】12月13日(日)午後0:00〜[WOWOWライブ]※生中継

<主な対戦カード>
フェザー級王座統一戦:ジョゼ・アルドvs.コナー・マクレガー
ミドル級タイトルマッチ:クリス・ワイドマンvs.ルーク・ロックホールド
ミドル級:ホナウド・ジャカレイvs.ヨエル・ロメロ
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