里村明衣子が語る団体対抗戦の意義 「若手の勢いを見てもらいたい」

スポーツナビ

スターダムとの対抗戦に向けて、仙台女子の里村明衣子にインタビュー 【スポーツナビ】

 女子プロレス団体、センダイガールズとスターダムの全面対抗戦が“聖地”後楽園ホールでの2連戦で行われる。センダイガールズ主催の12日(木)には、6対6の団体対抗シングルマッチ勝ち抜き戦、スターダム主催の15日(日)には、3大シングルマッチが行われることになる。

 スターダムの赤いベルト「ワールド・オブ・スターダム」保持者であり、仙台女子がこの10月に創設した「ワールドシングルチャンピオンシップ」の初代王者でもある里村明衣子。両団体のトップの証を保持する“女子プロレス界の横綱”に、この2連戦における意義などを聞いてみた。

「仙女が一番」という意識を芽生えさせる

――仙台女子としては3度目の後楽園大会が12日に行われます。今回はスターダムとの対抗戦となりますが、改めて対抗戦に到った経緯は?

 団体対抗戦を持ちかけられたきっかけは、十文字姉妹(DASH・チサコ&仙台幸子)がサンダーロック(紫雷イオ&岩谷麻優)を倒した(仙台女子7.30新宿FACE大会で勝利)ところなので、その悔しさが言葉となり、団体対抗意識が芽生えてきたと思います。それはすごく私の狙い目でもありました。

――その前には里村さん自身がスターダムの7.26後楽園大会で行われたワールド・オブ・スターダム選手権で宝城カイリ選手に勝利し第6代王者になりました。実際、団体対抗戦へと発展した狙いというのは、2団体が絡むことで相乗効果を求めたかった?

 そうですね。特に新しい選手が若いうちからライバルを見つけ、対抗意識を芽生えさせたかった。やはり団体に所属している限りは、団体のプライドや団体を懸けるという部分が必要かと思います。自分が育った環境が一番だという意識がないと、業界の先頭をいけないので。特にうちは地方発信で、ほかから隔離された環境なのですが、そこは「センダイガールズの環境が一番だ」ということをほかに負けないぐらいの意識を持ってもらいたいと思っています。そこで新人たちが意識したのがスターダムだったようです。

――10月下旬には福島での合同合宿がありました。先日、インタビューした新人2選手(岩田美香、橋本千紘)は、スターダムとは全然練習が違うということで刺激になったという話もしていました。2団体が絡むことの良さはそういう部分にもあったかと思いますが、里村さん自身は今回の合宿をどのように見られましたか?

 やっぱり人それぞれ、動きも違うのですが、(スターダムの練習は)イオが先頭に立っているということで、いろいろなロープワークの練習やトレーニングメニューがあり、幅広いなと感じました。
 団体の中でやっている中身というのは、まだまだ小さいもので、そのプライドを持ってほしいという反面、小さい中で育つだけでなく、やはり時には外の刺激を感じてほしいと思っています。例えば、負けて悔しい思いもしてほしいし、そこで対抗意識を目覚めさせてほしいと。

――なるほど。今回の合宿が終わった後、里村さんから「若手に積極性が見られない」と喝を入れられたようですが、そこでのアピールは足りなかった?

 チェンジひとつにしても、自分が目立ってやろうという気持ちが薄かったです。今回の合宿を終え、一緒にスパーリングをしたことで、スターダムも仙女も、新人がもっと欲を出して出ていかないと上に消されてしまう怖さがあることが気づいたと思います。
 合宿をしなかったら、新人たちはこのまま後楽園ホールに立ってしまい、アピールする間もなく、私なりイオなりカイリなりが目立って終わってしまうと。それだと次の時代がないんですよね。

期待値の高い“仙女三銃士”

――仙女としては里村さん、十文字姉妹というより、カサンドラ宮城選手、岩田選手、橋本選手がもっと目立ってほしいと?

 はい。特にうちの新人3人は“仙女三銃士”と呼んでいますが、この三銃士はこれからの女子プロレス界を盛り上げるためのキーマンになると思います。デビュー間もないですが、この3人が欲を出して、トップを狙った時に、一番面白くなると思います。ですから、(後楽園では)カイリ、イオに勝つ姿が私には想像できます。本当にワクワクしています。

――その3人のここまでの評価は? まず宮城選手は?

 宮城に関しては、新世代のスターですよね。今までにない時代の感覚を持っています。宮城の感性は“オタク”ですけど、感覚がすごくグローバル。捉え方が広く“グローバルなオタク”で、おそらく30代以上の選手にはないセンスを持っています。

――具体的に、どんなセンスですか?

 自己表現をするセンスですね。テレビ番組で彼女の言動がとにかく天才的に面白いと評判で、過去に番組自体がカサンドラ特集になった事もあります。デザインをするセンスもそうです。センダイガールズのグッズのデザインは彼女が手掛けていますし、そういった部分のアイデアはひっきりなしに出てきます。今までの既成概念にまったくとらわれていないので、こっちがいろいろな縛りを持っていると、それが全部崩されます。

――今後宮城選手はどんな風に伸びていくと思いますか?

 彼女は勝手に伸びていくと思います。今一番面白いです。女子プロレスの中で一番面白い! 男性レスラーの方の中でも、カサンドラ宮城の評価は高いですし、いろいろなところで話題になっていますよね。先日福岡のラジオにも出演したのですが、そこでも一際、話題になっていたようです(笑)。

――次に、岩田選手については?

 最初入ってきた時は、ルックスだけに引かれていました。「この子かわいいな、うちに来たら人気出るな」と。それで入団してからは、日が経つうちに彼女の気の強さが本物になってきました。練習中も、厳しい課題を与えてもやりこなしますし、本当に気持ちに揺らぎがないです。リーダー格の部分もあるし、すごく柔軟な頭も持っています。まっすぐで、鋭い視線もあります。目力って大事だと思うんですよ。

――なるほど。先日岩田選手に話を聞いた時は、いまだ自身で白星を挙げていないことに「悔しさしかない」という話をしていました。そんな岩田選手が次のステップに行くにはどんなことが必要だと思いますか?

 まだ体の線が細いので、この冬はみっちりウエイトトレーニングをさせ、少し体重を増やして、筋力をアップさせます。そうしたら春先には結果が出せると思っています。
 彼女はAKBで言うと、高橋みなみさんのような、男気があり、人を引っ張っていく気の強さがあります。冷静さもありますし。だから、彼女には感情移入して応援したくなるし、これからさらに人気が出ると思います。だからこそ、彼女が倒す相手は、宝城とか、イオだとか、そういった上の選手を狙ってほしいです。

――岩田選手は15日の試合で宝城選手とのシングルマッチが決まっています。

 岩田は以前からカイリさんが気になると言っていました。私とカイリが対戦した試合を直接見ていたこともあるので、その試合がすごく衝撃的だったようで「カイリさんを倒したい」と常々言っていました。

――それでも、いきなりスターダムのトップ3との対戦でまだ実力差もあるのでは?

 いやいや、全然いけますよ! デビュー戦ではアジャ(・コング)さんと試合をしていますし、ダイナマイト関西さんともシングルマッチをしていますので。

――最後に、10月にデビューしたばかりの橋本選手についてですが、橋本選手はデビュー戦から自らの手で白星を挙げています。

 私はずっとレスリングの基礎がある選手を獲得したかったのですが、その念願がやっとかないました。橋本が入門することで、練習ひとつにしても変わった部分があります。彼女は世界学生選手権で3位を取っているので、そういう部分で練習の取り組み方から違います。

――どんな部分で練習が違うのでしょうか?

 内容が違います。言ってみれば、うちの新人はバレーボールなど全然関係ないジャンルから来ていたのですが、ある意味、県大会レベルだったのが、世界大会レベルに変わったといいますか。今後はさらにレスリング界との交流を持って深めていくことで、もっとレスリングの選手を獲得したいですね。

――12日の対抗戦では橋本選手が先鋒となります。相手は渡辺桃選手。プロレスラーとしてのキャリアは橋本選手の方が短いですが、年下でもありますし、そこは負けられないのではと思いますが?

 橋本だったら5人、6人と勝ち抜いちゃうんじゃないかなと。ただ6人抜いちゃうと、私たちの試合ができなくなってしまうので(笑)。

1/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント