二つの順位表から読み解くJ1終盤戦 熱を増すチャンピオンシップ出場権争い

川端暁彦

いつもと違う「クライマックス」

次節で勝利すれば、セカンドステージ優勝をほぼ手中に収めることができる広島。写真は浅野(左)と野津田 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 11月に入り、2015年のJ1リーグもいよいよクライマックスを迎えつつある。もっとも、2ステージ+ポストシーズン制が導入された今季は「クライマックス」の感覚が例年と違ってきていることも確かだろう。

 レギュラーリーグが残り2試合となった現時点で、セカンドステージの優勝争いは1位・サンフレッチェ広島、2位・鹿島アントラーズ、3位・横浜F・マリノス、4位・ガンバ大阪がそれぞれ可能性を残す情勢となっている。もっとも、横浜FMとG大阪は首位を走る広島との勝ち点差が「6」と離れており、広島が連敗したうえで連勝し、なおかつ鹿島が星を落とす必要があるという状況(横浜FMは鹿島戦を残すので、連勝ならば自然とそうなる)。さらに得失点差は横浜FMが「12」、G大阪が「17」の差が開いており、2試合でひっくり返すのは夢物語に近い。現実的に考えれば、セカンドステージは広島と鹿島の一騎打ちになっていると言える。ただ、広島と鹿島の勝ち点差は「3」と1勝の差、こちらも得失点差が「12」あり、次節(7日)のG大阪戦で広島が勝つようならば、セカンドステージの優勝争いはほぼ決着することになる。

 こうして決まるセカンドステージ王者とファーストステージ王者である浦和レッズが、日本一の座をかけてチャンピオンシップで対戦することになる――というわけではない。04年まで行われていたチャンピオンシップではステージ王者同士の決闘によって勝負がついていたのだが、今季から導入された新システムでは最大5チームによるトーナメント戦で、リーグ王者が決定する方式となっている。そのトーナメントにエントリーする資格を持つのは以下の5チームだ。

・ファーストステージ王者
・セカンドステージ王者
・年間順位1位チーム
・年間順位2位チーム
・年間順位3位チーム

 ここで言う「年間順位」とは、両ステージの成績を単純に合算した戦績で競われるもの。昨季までの1シーズン制と同じ順位のつけ方と言ってしまった方が分かりやすいかもしれない。つまり、今季のJリーグはレギュラーシーズンでステージ順位と年間順位という二つの順位を同時に争ってきたという言い方もできるだろう。ある意味で当然なのだが、この「二つの順位表」が少々ややこしい状況になっている。

 まず前提として考えるべきは、ステージ王者と年間順位1〜3位チームが重複するケースがあるということだ。例えばファーストステージを圧倒的な強さで制した浦和は、すでに年間順位で3位以内に入ることも確定している。この場合、年間順位4位チームが繰り上げ当選になるということはなく、チャンピオンシップに参加するチームが1つ減って4チームになる形となる。さらにセカンドステージで広島が優勝すると、広島も同じく年間順位3位以内が確定しているため、同様にチャンピオンシップ参加チームが1つ減る形となる。つまり、ルール上は最大5チームが参加するトーナメントになるのだが、今季に関しては3、あるいは4チームが参加するトーナメントが組まれることになる。

もう一つの注目点「年間順位3位争い」

年間順位3位のG大阪を勝ち点1差で追いかけ、チャンピオンシップ出場を狙うFC東京 【写真:アフロスポーツ】

 今季のJリーグには「二つの順位表」が存在していることになる。つまり、残り2節という段階で「広島と鹿島の一騎打ち」になっているのがセカンドステージの情勢として正しい理解なのだが、「チャンピオンシップ出場権争い」という意味で考えると、もう一つ「年間順位3位争い」も並存している状況なのだ。

 では、年間順位の状況はどうなっているのだろう。まず1位は広島で2位は浦和。共に勝ち点「68」で並んでおり、得失点差で広島が1位に立っているという情勢だ。3位とは勝ち点で「8」の差が開いているので、この2チームがワンツーフィニッシュとなること自体はすでに決定している。年間1位になると、チャンピオンシップのシード権を得られるというメリットがあるので、ここにも一つの争いがある。

 ただ、より注目は「年間順位3位」をめぐる攻防の方だろう。現時点での3位はG大阪(勝ち点60)。これに「1」の差でFC東京(勝ち点59)がつけており、さらに3位と「6」差で横浜FMがつける。セカンドステージでは実質的に優勝争いから外れてしまったと既述した横浜FMだが、こちらに関しては得失点差の開きが存在しないためにまだ射程内。G大阪が連敗して、FC東京が1分け1敗以下という厳しい条件付きとはいえ、2連勝すれば可能性は残る。そんな状況だ。なお、セカンドステージで優勝を争っている鹿島は年間順位3位以内をめぐる争いではすでに脱落しており(勝ち点53の7位)、ステージ優勝1本に絞って戦うしかない。逆にFC東京はセカンドステージに関してノーチャンスなので、完全に3位狙いである。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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