未来を模索するフィギュア元全米王者 アボットが語る休養の理由と迷い
アイスショーをプロデュースしたい
僕にとって最も大事なのは、フィギュアスケーティングそのものをつくり上げていくということ。小さい頃はルールに関係なく、ジャンプにかなりの比重を置きます。コーチもとにかくスケーターにジャンプやスピンをやらせますが、そのことで大事な土台がなくなってしまっているのではと思っています。4回転を跳ぶにも、3回転+3回転をやるにも、基礎はすべてに必要なことです。
今は“フィギュアスケーティングをつくるものは何か”という部分が置き去りにされている。フィギュアとは、ショーやジャンプといったこと以上に、氷の上に立ち、ブレードを正しく使って滑ることだと思います。もう見ることはできませんが、ジョン・カリー(1976年インスブルック五輪の金メダリスト)やジャネット・リン(72年札幌五輪の銅メダリスト)といった素晴らしいスケーターたちには基礎がありました。僕にとって大事なのはまさにその部分で、氷の上にブレードを正しく乗せるということが、何より重要なんです。
演技するときに最も意識を傾けるのは、氷の上にブレードを正しく乗せること。それが流麗なスケーティングを生み出す源となっている 【写真:ロイター/アフロ】
スケートは続けますし、ショーにもいくつか出演する予定です。ただ、厳しいトレーニングからはいったん離れて、リンクの外で自分とは何者かを探求したいと思っています。ダンスのクラスも取りたいし、演技や写真などいろいろなスキルも学びたい。それらもすべてスケートに生かしていくためにやること。単に楽しむだけでなく、自分のスケーティングや自分のクリエイティブな過程など、自分のすべてに有益なことだと信じています。
――将来的にやりたいことがあれば教えてください。
競技会でやり切ったあとは、アイスショーでの演技を続けていきたいと思っています。ダンサーなどいろいろなアーティストとのコラボレーションを通じて、クリエイティブな作業をするのが好きなんです。デザイナーやアーティストなどと、違った方法で観客にどうスケーティングを見せていくかを探求するには、競技会よりもショーの方がいい。ショーはルールがないですから。それから、振り付けも好きなので、振付師にもなりたいですね。すでに米国で子どもたちを何人か教えています。そして、もしできるならショーをプロデュースしたい。全体のコンセプトもアイデアも、自分で決めたショーをね。すごく難しいとは分かっているけどね。
将来的にはアイスショーのプロデュースもやっていきたいという 【写真:アフロスポーツ】
そうなるといいね(笑)。頑張るよ。
(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)