藤波Jr.に正念場!? 1日2試合の奮闘も…自分のカラーを身につけ二世からの脱出を

高木裕美

緊急手術のため欠場した藤波が、代役として1日2試合を行った長男LEONAをねぎらった 【横田修平】

 1日のドラディション「2015 HALL OF FAME DRAGON 殿堂入り記念」東京・後楽園ホール大会では、893人を動員。今シリーズの主役である藤波辰爾は欠場となったものの、藤波の長男で、現在22歳の大学4年生であるLEONA(藤波怜於南)が立候補し、1日2試合のダブルヘッダーを務めた。

緊急手術の藤波は完全復活を約束

持病でもある椎間板ヘルニアに加え、脊柱管狭窄症も併発したことから、9月3日に都内の病院で緊急手術を受けた藤波。ファンに完全復活を誓った 【横田修平】

 藤波は今年3月に、プロレス界発展に功績を残した先達の栄誉を讃えるWWE殿堂入りを果たし、アメリカで行われた授賞式にも出席。5.11後楽園で、受賞を記念した東京、大阪、博多でのシリーズの開催を発表した。だが、持病でもある椎間板ヘルニアに加え、脊柱管狭窄症も併発したことから、9月3日に都内の病院で緊急手術を受けた。

 藤波は欠場のお詫びとして、来場したファンとの記念撮影会を実施。リング上から「記念シリーズに最高の状態で上がりたかったが、20数年痛めていいた腰が限界となり、これからも少しでも長くリングに上がるため、初めて腰にメスを入れることを決断した。近いうちに必ずリングに戻ってきます」と、完全復活を約束すると、大きな拍手と歓声が沸き起こった。

WWE経験者FUNAKIは伸びしろに期待

LEONAは第3試合でWWEでも活躍したFUNAKIと一騎打ち。エルボー、ブレーンバスターなどで見せ場を作った 【横田修平】

LEONAのWWEトライアウトも見ていたというFUNAKIは「実際に肌を合わせてみて、可能性を感じた」と今後の伸びしろに期待した 【横田修平】

 1日2試合となったLEONAはまずは第3試合で、WWEなどで活躍したFUNAKIと一騎打ち。生き残りの厳しいWWEマットで「スマックダウンNo.1アナウンサー」という地位を確立したFUNAKIは、そのパフォーマンス力を証明するかのように、徹底した左腕攻めを敢行。LEONAも逆片エビ固めから回転エビ固めを狙うも切り返され、ドロップキックもかわされて自爆。それでも、エルボー、ブレーンバスター、逆片エビ固めと見せ場を作るも、FUNAKIがラ・マヒストラルで丸め込んで3カウントを奪取した。

 今年7月のWWE日本公演の際、トライアウトを受験したLEONAを見ていたというFUNAKIは、「実際に肌を合わせてみて、可能性を感じた。お父さん(藤波)とはやったことがないけど、ドロップキックとか、お父さんに似ていると思った。これからも何回でも当たりたい」とLEONAを絶賛。これからの伸びしろに大きな期待を込めた。

高山に果敢に挑んだメインイベント

NOSAWAとの張り手合戦 【横田修平】

“帝王”高山にはドロップキック連発で必死に攻めた 【横田修平】

最後は高山のエベレストジャーマンの前に沈んだ 【横田修平】

 メインイベントでは、藤波の代わりに船木誠勝、鈴木秀樹と組んで、高山善廣、NOSAWA論外、バッファロー組と対戦。LEONAは自ら先発を買って出ると、NOSAWAをドロップキックで場外へ落としてプランチャを狙うが、手が滑って失敗。会場からは大きなため息が漏れる。だが、バッファローに対し、船木との合体ショルダーを決めると、さらにブレーンバスター、串刺しエルボー。しかし、今度は青コーナーにつかまり、3人がかりで顔面を踏み付けられると、NOSAWAとの張り手合戦でダウン。高山、バッファローからもヘッドバットを連発で浴びせられる。

 それでもLEONAは、船木に対し、自らタッチを要求。船木がハイブリッドブラスター、鈴木がダブルアームスープレックスという必殺技を繰り出し、猛烈アシストをすると、LEONAも鈴木とともにバッファローを合体ブレーンバスターで投げ、高山にドロップキックを連発。だが、それ以上の決め手に欠き、高山の抱え込み式バックドロップ、エベレストジャーマンスープレックスの猛攻に沈んだ。

辛辣な船木「もっと死に物狂いで」

タッグを組んだ船木は「もっと死に物狂いでやらないと、藤波さんに追いつかない」と厳しい檄 【横田修平】

 試合後、藤波がリングに登場し、LEONAに拍手を贈ると、「大丈夫か。見ていてヒヤヒヤしたけど、自分から言い出した2試合だからな。皆さん、末永く応援してください」と代役を務めた息子をねぎらったが、パートナーの船木はあくまでも辛らつ。「藤波さんは見てられなかったと思う。親不孝だけど、父親のために頑張ったんだから親孝行だな。親不孝で親孝行だ。だけど、もっと死に物狂いでやらないと、藤波さんに追いつかない。彼は何もないところから作ってきた。おまえは最初からレールを敷かれてるんだから。失敗したら、藤波さんが恥をかくんだからな」と、デビュー戦から大きな成長を見せられていないLEONAに、直球を放った。

 この船木からの言葉に、LEONAは何も言い返せず、悔しそうにドアを叩いて、ノーコメントで控室に直行。実にほろ苦いシリーズ開幕戦となった。

デビューから恵まれた環境

恵まれた環境でデビューしたLEONA。今年5月には鈴木みのると一騎打ちで対戦した(写真は5月の実る戦) 【横田修平】

 11月でデビュー2周年を迎えるLEONAは、3年前の12年4.20後楽園大会で、試合を終えた父親の辰爾にプロレス入りを直訴。この時は回答を保留されたが、その後、海外でのプロレス留学を経て、翌年5月にプレデビュー戦を行い、同年11.19後楽園大会において、かつて父親の付き人を務めていた船木誠勝を相手にデビュー。今年の1.12レジェンド後楽園大会では、タッグマッチながらNOSAWA論外から逆さ押さえ込みで3カウントを奪い、初勝利を収めた。

 LEONAがWRESTLE−1に参戦した際、ヒール軍団デスペラードから「ドラ息子」と揶揄されたことがあったが、実際、現在リング上で活動する“2世レスラー”の中でも、LEONAの環境は非常に恵まれていると言っていい。

 IGFの橋本大地は“破壊王”と呼ばれた父・橋本真也さんを幼くして亡くしているし、DDTプロレスでKO−D無差別級王者となった坂口征夫は、父である“世界の荒鷲”坂口征二さんの背中を見て育ちながらも、身長が低いため一度はプロレスの道を断念し、建設会社に勤務。総合格闘技を経てプロレスに転向した。“力道山三世”力に関しては、父・光雄が当時副社長を務めていたプロレスリング・ノアで入門テストを受けたものの不合格となり、30歳を過ぎてようやくプロレスラーになる夢を叶えている。

大きく飛躍するか、ドラ息子のままか

藤波の欠場を受けて1日2試合の代役を務めたLEONA。ほろ苦い結果にノーコメントで会場を後にした 【横田修平】

 LEONAの場合、父親にデビューまでのお膳立てを整えてもらい、デビュー後も、ノアの丸藤正道、鈴木みのるなどのビッグネームと一騎打ちを行うなど、何の実績もない新人としては破格の待遇を受けてきた。ただ、これまでは藤波Jr.という育ちの良さ、立教大学生という高学歴がむしろ足枷となり、同年代の新人レスラーのようなガムシャラさ、ハングリーさに欠けていた。

 ただ、もうじきデビューから2周年。もはや「新人」という枠から飛び出し、「藤波Jr.」以外のカラーを身につけなければならない時期に来ている。この日の2試合でも、ひたむきさは伝わったが、何かをやってくれそうな期待感、見る者の目を奪うような驚きは感じられなかった。偉大なる父親の代役をこなすこのシリーズ残り2戦で、大きな飛躍を遂げられるのか。それとも、“ドラ息子”のままなのか。まだ22歳のLEONAが、どこまで化けるのか、まだまだ追い続けたい。
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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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